特定建築物における空気環境の管理基準とは? 詳しく解説します。

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大規模な商業施設やオフィスビル・学校など一定以上の床面積を有する建物には、建築物環境衛生管理基準が適用されます。建築物環境衛生管理基準とは、使用者が安全で衛生的に建物を使うことができるように定められた基準です。そして、建築物環境衛生管理基準を順守するための管理者になるには、建築物環境衛生管理技術者の資格が必要になります。

今回は、建築物環境衛生管理基準に定められている空気環境の管理基準についてご紹介しましょう。

  1. 建築物環境衛生管理基準とは?
  2. 建築物環境衛生管理技術者の職務について
  3. 空気環境の管理基準について
  4. 建築物環境衛生管理技術者の資格について
  5. 空気環境の管理基準などに関するよくある質問

この記事を読めば、建築物環境衛生管理技術者の仕事内容も分かります。建築物環境衛生管理技術者の資格取得を目指している方は、ぜひこの記事を読んでみてくださいね。


1.建築物環境衛生管理基準とは?

建築物環境衛生管理基準とは、建築物における衛生的環境の確保に関する法律第4条によって定められた、建物の環境衛生を保つために必要な基準です。床面積が8千平方m以上の学校、3千平方m以上のビルや商業施設・劇場・ホテルなどは、建築物環境衛生管理基準に沿って空気環境測定を行ったり、排水や給水の管理を行わなければなりません。このような建物を特定建築物といいます。

特定建物の環境衛生を管理するために必要な措置には、

  • 空気調和設備や機械換気設備の測定
  • 水質検査や排水装置の清掃など給排水の管理
  • 清掃・ねずみや昆虫の防除
  • その他衛生上の維持管理

です。建築物環境衛生管理基準にはそれぞれ基準値があります。この基準値は、一般の建物の基準値よりも厳しい数値に設定されているのです。ただし、基準を超えても罰則などはありません。自治体から改善命令や使用制限が出されるだけです。しかし、一度空気や水が不衛生な建物、害虫やネズミが出やすい建物とみなされてしまうと、落ちた評判を回復させるのは容易ではありません。

2.建築物環境衛生管理技術者の職務について

建築物環境衛生管理基準に沿って特定建築物を管理する責任者には、建築物環境衛生管理技術者(ビル管理技術者)が就きます。空気調和設備の測定などは、有資格者が行わなければなりません。といっても、有資格者が直接測定ををしなければならないというわけではなく、有資格者の管理下で専門の業者などが行うのが一般的です。給排水の管理や清掃なども同様で、建築物環境衛生管理技術者の監督下で専門の業者が行います。
なお、検査結果は専用の帳簿に5年間保管し、自治体が提出を求めた場合はすぐに応じられるようにしておかねばなりません。

3.空気環境の管理基準について

この項では、空気環境の管理基準についてもう少し詳しくご紹介します。なぜ、定期的な空気環境の測定が必要なのでしょうか?

3-1.測定が必要な建物とは?

空気環境の定期的な測定は、冷暖房や換気などを中央管理室など1か所で集中して管理している建物で必要です。例えば学校などのように建物に窓が多数あり、1日に何度も換気を行っているような場所では定期的な測定をする必要はありません。一方、窓のない商業施設やオフィスビル・地下街などは、ほとんどが一か所で換気や冷暖房を管理している中央換気方式なので、定期的な測定が必要です。

3-2.測定の頻度と測定内容

空気環境の測定は、2か月ごとに1回の頻度で行われます。ホルムアルデヒドの調査は、建物の建設時や大規模改修後、建物を使い初めて最初の測定期間(6月1日~9月30日)までに行うように定められているのです。
高層ビルなど複数の階があるビルは、1階ごとに1か所以上で測定する必要があります。測定は、床から75cm~150cmのところで測定をするように定められているので、順守しましょう。

測定内容は

  • 浮遊粉塵の量
  • 一酸化炭素・二酸化炭素の含有率
  • 温度
  • 相対湿度
  • 気流

などを測定します。なお、自動的に温度と湿度を設定して運転する機械調和設備の建物では、相対湿度の測定は必要ありません。基準値など詳しいことは、厚生労働省のホームページで確認してください。

3-3.測定者について

前述したように、空気環境の定期的な検査は建築物環境衛生管理技術者が行います。とはいえ、有資格者が直接行う必要はありません。建築物環境衛生管理技術者の監督下でなら、無資格者が測定することもできます。ただし、評価は有資格者が行ってください。また、建築物空気環境測定業者や建築物環境衛生総合管理業者に外部委託しているところも多いでしょう。この場合は、測定まで行ってくれますので、建築物環境衛生管理技術者が最終チェックを行います。

委託する業者の選定を、建物の所有者から建築物環境衛生管理技術者が任されている場合は、業者選びや契約も有資格者の仕事です。

3-4.測定結果について

測定の結果は、前述したように帳簿に記入して5年間保存します。なお、特定建築物は建築した際に自治体へ届け出が必要です。建築物環境衛生管理技術者を選任した場合も、同じように届け出が必要になります。提出方法や必要な書類は自治体ごとに異なるので、詳しくは各自治体のホームページなどを確認してください。測定結果の提示を自治体が求めた場合は、すぐに帳簿を開示しなければなりません。その結果、建築物環境衛生管理基準を満たしていないと判断されれば行政指導が入ったり、建物の使用が制限されることもあります。

4.建築物環境衛生管理技術者の資格について

この項では、建築物環境衛生管理技術者の資格を取得する方法などをご紹介します。ぜひ参考にしてください。

4-1.建築物環境衛生管理技術者とは

建築物環境衛生管理技術者は、前述したように特定建築物の衛生管理に関する指導・監督を担うことができる資格です。特定建築物には、建築物環境衛生管理技術者の選任が義務づけられています。ビル管理業に関する資格の中ではもっともレベルが高く、取得をしていれば、転職にも大変有利です。指導・監督業務が主ですので高いコミュニケーション能力と折衝能力が求められるため、ある程度社会的な経験を積んだ人の方が適しています。そのため、50代以降の求人が多いのも特徴です。

4-2.資格を取得するメリット

建築物環境衛生管理技術者は、特定建築物の衛生管理のために必ず選任しなければなりません。一部の例外を除いて複数の建物の管理を兼任することはできませんので、基本的に建物の数だけ有資格者が必要です。そのため、取得すればさまざまな場所で活躍できます。また、同じ職場でビル管理業務を続ける場合も、資格を取得すれば資格手当がついたり昇進しやすくなったりするでしょう。

4-3.受験資格や取得方法について

建築物環境衛生管理技術者は、厚生労働省で定められた用途を持つ建築物(学校・ホテル・オフィスビルなど)で、2年以上ビル管理の実務経験がある方に、受験資格が与えられます。また、医師・歯科医師・薬剤師・第一種電気主任技師・特級ボイラー技士など、定められた資格を取得したうえでビル管理の実務経験を一定期間積めば、講習を受けることで資格が取得可能です。ビル管理の仕事をしながら資格を取得して講習を受ける方もいれば、ビル管理の仕事をしながら勉強をして試験にチャレンジする方もいます。

なお、講習は103時間あり、実施地も限られているので受講を希望する方は勤務先の理解を得ることも大切です。

4-4.試験科目や難易度について

建築物環境衛生管理技術者の試験は、

  1. 建築物衛生行政概論
  2. 建築物の環境衛生
  3. 空気環境の調整
  4. 建築物の構造概論
  5. 給水及び排水の管理
  6. 清掃
  7. ねずみ・昆虫等の防除

7科目あります。これを1日かけて受験し、各科目40%以上の得点率、全体で65%の得点率で合格です。合格率は18.9%と決して高くはありません。科目ごとの合格や合格の持ち越しといった措置もないので、1科目でも40%以下の得点率ならばその時点で不合格となり、翌年もう一度チャレンジすることになります。

4-5.申し込み方法など

建築物環境衛生管理技術者の試験は、毎年10月の第2日曜日に実施されます。日本建築物衛生管理教育センターが主催し、毎年6月ごろから受験の受け付けが開始されるので、試験にチャレンジしたい方はホームページを一読しておきましょう。願書もホームページからダウンロードできます。電子申請による試験の申し込みはできないので注意してください。なお、試験地も全国で10か所程度なので、遠方の人は宿泊場所も確保しておきましょう。

4-6.勉強方法

建築物環境衛生管理技術者の試験勉強は、独学か通信教材を使って行います。ネットショップでも参考書と試験問題集が販売されているので、独学で勉強したい方は利用してみましょう。
通信教材を利用するならば、SATの教材がおすすめです。ブック式の参考書だけでなく、専門講師の講義を収めたDVDやeラーニングが付いてくるので、予備校に通うような感覚で勉強ができます。また、メールでの質問も受け付けているので、分からないことをそのまま放置してしまうこともありません。

5.空気環境の管理基準などに関するよくある質問

Q.空気環境の測定をした結果、異常が見つかった場合はどうしたらよいですか?
A.すぐに空調設備の整備点検をしてください。また、すぐにビルの持ち主やビルの使用者に連絡を行い、対策を立てましょう。必要ならば建物の閉鎖なども視野に入れます。

Q.なぜ、ホルムアルデヒドの検査は1回でよいのでしょうか?
A.ホルムアルデヒドは建築材料の一部に含まれていることが多く、時間の経過と共に減少していくため、建築時や改修時の検査で基準値に達しなければ増加することはほぼない、と考えられてるからです。

Q.建築物環境衛生管理技術者が直接測定してもよいでしょうか?
A.問題はありません。しかし、建築物環境衛生管理技術者の仕事は多く、2か月ごとに空気環境の測定を自分で行っていれば、仕事に支障が出ることもあります。また、空気環境を測定する機械には高価なものも多いので、業者に依頼したほうが合理的です。

Q.水質検査なども専門の業者に依頼するのが一般的でしょうか?
A.はい。基本的に建築物環境衛生管理技術者が直接検査や清掃・害虫の駆除などを行うことはありません。

Q.空気環境を測定し、異常値が出ましたが故意に隠蔽した場合は何らかの罪に問われますか?
A はい。建築物における衛生的環境の確保に関する法律に違反することになり、懲役刑もしくは罰金刑が課せられるでしょう。

6.おわりに

いかがでしたか。今回は特定建築物の管理に関し、特に空気環境の管理基準についてご説明しました。空気環境が悪化していると、感染症をはじめとした病気がまん延する原因になります。不特定多数が利用する建物で空気が汚染されていれば、その被害は計り知れないでしょう。水質と共に、空気の管理はとても大切です。