これから1級建築士を目指す方の中には、少子高齢化や不況によって業界の将来性に不安を抱いている方がいるのではないでしょうか。建築士および建築業界も少子化高齢化による影響を受けていますが、同時に新たな人材を求めています。
さらに建築士は建物だけでなく道路やダムなど、インフラ設備の建設や修繕といった役割も担っているので、今後も一定の需要を見込める仕事です。つまり建築士の将来性はあるといえるでしょう。
下記の動画で建築士に関する基本的な情報を解説しているので、よかったら見てくださいね。
この記事では、1級建築士の年代別登録人数をはじめ、少子高齢化の影響や人材不足による求人数の増加について紹介していきます。
目次
1級建築士の年代別登録者人数
まずは、1級建築士年代別登録者人数と、合格者数や合格率について紹介していきます。
1級建築士の年代別登録者人数
建築士の登録者人数は、試験実施団体の公益財団法人建築技術教育普及センターによると以下のとおりです。
資格名 | 登録者人数 |
---|---|
1級建築士 | 373,490人 |
2級建築士 | 771,246人 |
木造建築士 | 18,133人 |
(平成31年4月1日時点の登録者人数)
1級建築士の登録者人数(所属建築士)を年代別で見てみると、50~60代が半数以上を占めています。一方で30~40代は、全体の30%程度で20代にいたっては1%程度と非常に少ない状況です。
このような20~40代の人材不足は、これから1級建築士を目指す方や若手建築士にとってメリットでもあります。建設会社の多くは50代のベテラン1級建築士で仕事を回している傾向のため、10年~15年程度で一気に人材不足が進みます。
そのため今後若手の人材を積極的に確保していく流れにならざるを得なくなり、求人数の増加や積極的な雇用につながるでしょう。
1級建築士の合格者数
1級建築士の合格者数は、試験実施団体の公益財団法人建築技術教育普及センターのデータによると以下のとおりです。
年度 | 平成29年 | 平成30年 | 令和元年 | 令和2年 | 令和3年 | 令和4年 |
---|---|---|---|---|---|---|
学科 | 4,946人 | 4,742人 | 5,729人 | 6,295人 | 4,832人 | 6,289人 |
製図 | 3,365人 | 3,827人 | 3,571人 | 3,796人 | 3,765人 | 3,473人 |
そして合格率は以下のとおりです。
年度 | 平成29年 | 平成30年 | 令和元年 | 令和2年 | 令和3年 | 令和4年 |
---|---|---|---|---|---|---|
学科 | 18.4% | 18.3% | 22.8% | 20.7% | 15.2% | 21.0% |
製図 | 37.7% | 41.4% | 35.2% | 34.4% | 35.9% | 33.0% |
総合 | 10.8% | 12.5% | 12.0% | 10.6% | 9.9% | 9.9% |
合格者のみを見ると比較的多いように感じますが、合格率10%前後ですので難関資格といえます。そして、合格者の少ない資格ということは、少子高齢化による人材不足と相まって建築関係の仕事へ就きやすくなるといえます。
1級建築士の少子高齢化による影響
続いては、少子高齢化による1級建築士や建設会社への影響について解説していきます。
1級建築士の平均年齢は46.1歳と高い
1級建築士の平均年齢は、厚生労働省の職場情報サイトによると「46.1歳」で推移しています。平均年齢46.1歳ですと今後10年~15年程度で多くの建築士が定年退職となり、急激な人材不足リスクにつながります。さらに少子高齢化によって10代、20代の人口減少が続くため、建設会社は簡単に人材を確保できなくなるリスクも存在します。
1級建築士の需要は今後も高い状況が続く
平均年齢の高い建築士を多く抱える建設会社は、定年退職を近い将来控える建築士が多いため、人材不足になる可能性があります。一方で、ビルや住宅、事務所などの新規建設や修繕といった依頼は、時代を問わず一定数見込める仕事です。
特に高度経済成長期に建設されたインフラ設備や各種建築物は、今後20年間で建設後、50年以上経過する施設の割合が加速度的に高くなるため、老朽化による耐久性低下や破損といった危険性が増しすと同時に、維持管理の需要が高まっていくと考えられます。
そうした背景からも、1級建築士が関わることになる解体や修繕、建て直しといった作業が早急に求められ、多くの建設会社は、若手や実務経験のある1級建築士(主に20~30代)を早急に確保するため積極的に求人を出している傾向です。
これから建築士へ転職したい未経験の方も、1級建築士の資格を取得すれば建設会社へ転職できる可能性があるでしょう。
次の項目では建築士の求人数や求人倍率について紹介します。
建設業の求人状況
厚生労働省の「一般職業紹介状況」によると、令和3年(2021年)10月の建設業の新規求人数は82,615人です。前年と10月と比べると+2.5%、求人数は増加しています。
下記は令和元年から令和3年までの10月度の新規求人数です。
2019年の年末からコロナが流行し始めたことにより、令和2年の求人数に影響を与えたと考えられますが、令和3年からは求人数が増加傾向に転じています。
令和2年(2020年)10月求人数 | |
---|---|
常用 | 73,847人 |
臨時・季節 | 2,041人 |
パートタイム | 4,691人 |
全数 | 80,579人 |
令和3年(2021年)10月求人数 | |
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常用 | 75,605人 |
臨時・季節 | 2,141人 |
パートタイム | 4,869人 |
全数 | 82,615人 |
令和4年(2022年)10月求人数 | |
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常用 | 74,400人 |
臨時・季節 | 2,351人 |
パートタイム | 5,248人 |
全数 | 81,999人 |
建設の職業に関する有効求人倍率は4.04倍ですので、建築士の高い需要に対して人材不足ということがわかります。少子高齢化の影響などから今後も同様の傾向が続く可能性があり、求人数のさらなる増加も期待できます。
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一級建築士は稼げる?平均年収とおすすめの職業は?
まとめ
1級建築士の登録者人数は、50~60代で半数以上を占めています。さらに、少子高齢化や試験の難易度の高さによる若手の人材不足から、多くの建設会社は求人を積極的に出しています。
高度経済成長期に建設された道路や橋、ビルや住宅などは、建設から50年以上経過しているため、仕事量の増加による1級建築士の需要増加が期待できます。また、有効求人倍率は、3.9~4.7倍(2020年1月~9月)と高い水準で推移しているので、就職しやすい環境といえます。
1級建築士の合格率は、例年10%台と低く難関資格です。しかし、建築士の未来は明るいので、合格へ向けてコツコツ勉強を進めてみてはいかがでしょうか。