2級建築士は、戸建て住宅などの比較的小規模な建築物における、設計や工事監理に携われる国家資格です。
建築士は2級建築士、1級建築士、木造建築士という3つの区分があります。
それぞれの試験の難易度はどれくらいなのか、区分によって違いはあるのか、気になる方も多いでしょう。
2級建築士の合格率と難易度を踏まえ、1級建築士と木造建築士の難易度の違いについて解説します。
目次
2級建築士の合格率と難易度の関係
2級建築士試験の合格率から見る、試験の難易度を紹介します。
2級建築士試験の合格率はどれくらい?
過去5年間の2級建築士試験において、学科・製図・総合の合格率は次の通りです。
年度 | 学科 | 製図 | 総合 |
---|---|---|---|
令和4年 | 42.8% | 52.5% | 25.0% |
令和3年 | 41.9% | 48.6% | 23.6% |
令和2年 | 41.4% | 53.1% | 26.4% |
令和元年 | 42.0% | 46.3% | 22.2% |
平成30年 | 37.7% | 54.9% | 25.5% |
ご覧のとおり、学科試験は30~40%前後、設計製図試験は50%以上を推移しています。
合格率から見る2級建築士の難易度
総合の合格率が例年20%台ということもあり、2級建築士の試験はやや難易度が高い部類に入るといえます。
学科試験の合格率が設計製図試験よりも低いのは、試験問題そのものの難しさに加え、年度ごとに受験者数に差があることが要因です。
一方、設計製図試験の合格率が高い要因は、試験の3か月前に試験課題が公表されるため、学科試験よりも試験対策しやすいといえます。しかし、学科試験に合格しないと設計製図試験に進むことはできません。
難易度が高い学科試験ですが、令和元年の合格率は、37%前後で推移していた例年と比べて比較的高くなっています。
これまでにない傾向の問題がいくつか出題されたものの、過去出題された問題を理解していれば解ける内容だったことが考えられます。
ちなみに、初出題を含めた難易度が高い科目は、学科Ⅲの建築構造と学科Ⅳの建築施工に集中しています。初出題の問題傾向は、選択肢に新しい用語が含まれる、選択肢の言い回しが難解、初出題でも選択肢は過去問題と似た内容など、基礎が身に付いていれば解ける内容です。
過去問題で見たことがない問題でも慌てることなく、落ち着いて解ける対応力が試されるといっていいでしょう。
2級建築士は合格基準が厳しい
2級建築士の難易度が高いもう一つの理由として、合格基準が厳しいことがあげられます。
学科試験の合格基準は「4科目を13点以上、かつ総得点60点以上」です。1科目でも基準に満たないと不合格になるため、全ての科目をまんべんなく対策しなければなりません。
設計製図試験では、以下の4つのランクが定められています。
ランクⅠ | 「知識及び技能」を有するもの |
---|---|
ランクⅡ | 「知識及び技能」が不足しているもの |
ランクⅢ | 「知識及び技能」が著しく不足しているもの |
ランクⅣ | 設計条件・要求図書に対する重大な不適合に該当するもの |
上記のうち「ランクⅠのみが合格」であることから、いかに合格基準が厳しいかがわかるでしょう。
また、学科試験は全100問を6時間で解答、製図試験は5時間と、1日がかりの試験です。集中力を長時間キープできるかが、合格に影響するといっていいでしょう。
さらに詳しく!
2級建築士の製図試験の難易度は?合格につながる勉強のコツ
1級建築士・木造建築士と2級建築士の難易度の違い
2級建築士の難易度をふまえ、1級建築士と木造建築士の難易度の違いについて見ていきましょう。
1級建築士の難易度は高い
1級建築士の資格は、設計・工事監理できる建築物の規模に制限がありません。
戸建て住宅から高層マンション、大型商業施設、道路や橋など、さまざまな規模の工事に携わることができます。
仕事の幅が広くなる分、1級建築士は難易度が高く、例年の合格率は10%前後を推移しています。試験の出題範囲が広くなって知識量が試されるうえに、合格基準点もさらに厳しくなることが難易度の高さに影響するといえるでしょう。
過去5年間の1級建築士試験において、学科・製図・総合の合格率は次のとおりです。
年度 | 学科 | 製図 | 総合 |
---|---|---|---|
令和4年 | 21.0% | 33.0% | 9.9% |
令和3年 | 15.2% | 35.9% | 9.9% |
令和2年 | 20.7% | 34.4% | 10.6% |
令和元年 | 22.8% | 35.2% | 12.0% |
平成30年 | 18.3% | 41.4% | 12.5% |
木造建築士は難易度が低め
木造建築士とは、小規模な木造建築物の設計・工事監理ができる資格で、住宅や歴史的建造物の工事に携わることができます。
木造建築士も同様に学科試験と設計製図試験がありますが、合格率は2級建築士よりもやや高めです。
学科試験 | 50~60%前後 |
---|---|
設計製図試験 | 50~70%前後 |
総合 | 30~40%前後 |
このように、総合の合格率は2級建築士の倍に近いため、建築士の中でも難易度が低いといえます。
しかし、木造建築士の試験は2級建築士と共通する内容が多い反面、大工の専門的知識が求められます。2級建築士よりも異なった難しさがあるので、取得を目指す方はきちんと対策することが大切です。
2級建築士の難易度はやや高い
2級建築士の合格率は例年20%前後と、国家資格の中でもやや難しい試験といえます。
学科試験は年度で難易度が異なるうえに、近年では初出題の問題が出題されています。とはいえ、基本が身に付いていれば解ける問題なので、応用力を意識した対策を行いましょう。
2級建築士の上位資格である1級建築士は、その名のとおり難易度がはるかに高い試験です。一方、木造建築士の合格率は高いものの、大工の専門的知識が問われる難しさがあります。建築士試験は区分によって難易度が異なるため、それぞれに合った対策をしっかり行いましょう。