建設業界は人手不足が深刻な状況であり、建築士の人材確保も急務となっています。その問題を解消するため、建築士法が改正され、令和2年度から受験資格などの条件が緩和されました。
こちらでは、建築士法改正にともない、2級建築士試験で変更された内容を解説します。
目次
2級建築士の受験資格改正における変更点
2級建築士における、受験資格と免許登録要件の変更点について見ていきましょう。
受験時の実務経験が不要に
これまで指定学科を修めて高校または中学を卒業した場合、3年以上の実務経験が必要と受験資格に定められていました。
しかし、令和2年度以降より、受験資格における実務経験が問われなくなり、学校を卒業と同時の受験が可能になったのです。
つまり、試験を先に受験しておき、あとから実務経験を積むという方法も可能になりました。
ただし、大学や短大、専門学校などの、建築系の指定学科を卒業した場合、実務経験なしで受験できるという内容に変わりはありません。
実務経験は免許登録要件に
受験資格で実務経験を問わなくなった代わりに、実務経験が免許の登録要件に変更となりました。
2級建築士での大きな変更点は、高校・中学卒の実務経験が「3年以上から2年以上に短縮」と、受験資格と同様に条件が緩和されたことです。
大学や専門学校卒、学歴なしで実務経験のみで受験した場合、免許登録要件に変更はありません。
しかし、「受験前の実務経験も免許登録要件に含める」という内容に変更されたため、より早く免許を取得できるようになりました。
建築士法が改正された理由
現在、第一線で活躍する建築士は高齢化が進んでおり、引退とともに建築士不足に拍車がかかることが懸念されています。
建築士法改正で規制緩和した経緯は、新たな建築士の人材を増やしたいという理由によるものです。
また、かつて大きな社会問題となった「耐震偽装事件」を受け、2008年の建築士法改正では、建築士の受験資格がより厳しい現行の内容に変わりました。
建築士試験を受験するハードルが高くなったことで、受験者数が大きく減少したことが建築士の要因といわれています。
今回の建築士法改正で高校・中学卒の条件を重点的に緩和したのは、建築士を含めた建設業界に若い人材を確保したいという狙いがうかがえます。
実務経験と学科試験免除における変更点
実務経験の対象業務と学科試験免除における、建築士法改正後の変更点は以下のとおりです。
実務経験の対象業務の拡大
実務経験と認められる対象業務の幅が広がり、免許を取得する要件が緩和されました。追加された対象業務は、以下のものがあげられます。
設計に関する業務 | ・建築士事務所で行う標準的な設計業務(トレース作業は除く) ・建築士事務所で行う設計図書作成業務(設計与条件整理、事業計画検討など) |
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建築工事の指導監督業務 | ・法令に基づく建築工事の指導監督実務(保険検査、適合証明、性能評価、省エネ適判など) |
建築物の調査・評価業務 | ・建築士事務所で行う建築物の調査と評価 |
行政に関する業務 | ・建築行政(建築基準法にかかわる建築物の審査、検査、指導、解釈など) ・住宅行政(空き家の調査、補助金の審査業務など) ・都市計画行政(土地区画整理事業、市街地開発事業など) |
教育・研究・開発に関する業務 | ・建築士試験の全科目の指導、かつ設計製図の教員業務 ・建築物の研究(学会誌の掲載などの第三者の審査が必要) ・建築士事務所で行う既存建築物の活用、維持保全計画策定など |
対象業務が拡大した反面、実務経験の申告に対する審査方法が厳しくなっています。建築士事務所か否かで、実務経験を証明できる第三者の条件が異なるので、免許申請の際は注意が必要です。
学科試験免除期間の延長
建築士試験の学科試験に合格すると3年間の有効期限が与えられ、その間で2回の学科試験が免除になる制度が定められていました。
今回の改正で「3年間から5年間に期間延長」され、「4回の試験のうちで2回の学科試験が免除」になったのです。
製図試験対策にじっくり取り組めるため、2級建築士に合格できる確率がより高くなるといえます。また、受験の機会が柔軟になったことで、有効期限内で実務経験を積んでおき、すぐに免許を取得するというやり方も可能になりました。
さらに詳しく!
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受験資格改正で2級建築士は受験しやすい試験に
今回の建築士法改正は、高齢化による建築士不足解消のため、受験資格などを緩和して新しい人材を増やすことが目的です。
学科試験の受験資格では全学歴の実務経験が撤廃され、学校を卒業後に試験を受験することが可能です。実務経験は免許の登録要件に変更となり、2級建築士の免許を早く取得できるようになりました。
また、実務経験の対象業務の拡大や学科試験免除の期間延長など、全体的に内容を緩和したことで、より受験しやすい試験に変わったのです。
特に、高校・中学卒の条件が緩和されたため、いち早く建築士として建設業界で活躍できます。
建設業界は今後も高い需要が見込まれるため、将来の選択肢として2級建築士を選んでみてはいかがでしょうか?