建築士は、建物の設計や工事監理などを行う技術者のことで、業務独占資格として有名な国家資格です。そのため、資格保有者の付加価値は高くなります。
きっかけは人それぞれですが、高校や大学を卒業し、社会人になってから建築士になりたい、建築関係の仕事に就きたいと考える方もいるのではないでしょうか?
しかし、「今からでも建築士になれるのか」「40代から目指しはじめても遅くはないのか」などと悩んで動き出せない方も少なくありません。
結論からお話しすると、何歳からでも建築士になることは可能です。
ただし、すぐに建築士にれるわけではないため、必要な条件や建築士の概要を把握して自分にあった方法で建築士をめざしましょう。
そこで今回の記事では、建築士になるためのあらゆるルートを詳しく解説します。これが、建築士資格取得に向けて動き出すきっかけとなれば幸いです。
目次
社会人になってから目指す建築士
建築士とは、建物の設計、工事監理などを行う技術者のことで、建築士法によって定められている国家資格です。種類としては、木造建築士・2級建築士・1級建築士があります。
経済や生活の基盤となり、使用者の命や財産を保護する建築物に対して非常に重要な役割を担うため、建築士は、一般の人が行うことを禁止している「業務独占資格」です。
さて、現在建築士として働く方は、学生時代から建築士を目指し、社会人になってから資格を取得された方がほとんどでしょう。
2022年令和4年度の1級建築士合格者の年齢を見てみても、
年齢層 | 割合 |
---|---|
23歳以下 | 9.3% |
24~26歳 | 31.2% |
27~29歳 | 20.7% |
30~34歳 | 17.3% |
35~39歳 | 10.1% |
40歳以上 | 11.4% |
最も多いのは学校を卒業してからまだ間もない24~26歳の年齢層です。
しかし、24歳から34歳までの割合は、合格者全体の約70%を占めており「卒業後すぐに勉強して試験に挑まないと合格できない!」というような資格ではないといえるでしょう。
むしろ、40歳以上の合格者の方も全体の約10%いますので、年齢を重ねたからといった理由で諦めるような資格ではありませんね。
建築士を目指す場合は、以下の受験資格要件を満たしていれば資格試験を受験できます。
1級建築士 | |
---|---|
No | 受験資格要件 |
1 | 大学、短期大学、高等専門学校、専修学校において指定学科を修めて卒業した者 |
2 | 2級建築士 |
3 | 建築設備士 |
4 | その他国土交通大臣が特に認める者 |
2級建築士 | |
No | 受験資格要件 |
1 | 大学、短期大学、高等専門学校、高等学校、専修学校、職業訓練校などにおいて指定学科を修めて卒業した者 |
2 | 建築設備士 |
3 | その他都道府県知事が特に認める者(実務経験が所定の年数以上必要) |
4 | 建築に関する学歴なし(実務経験が7年以上必要) |
また2020年令和二年度に、1級建築士における実務経験については見直しが行われ、受験資格の要件から実務経験が外されました。
さまざまな受験資格が設けられているため、自分に適した方法で目指すことができます。
「とにかく最短最速で建築士になれる方法が知りたい!」という方がほとんどだと思います。というわけで、ここからは受験資格の要件と共に、社会人から建築士になる最短のルートについて詳しく解説していきましょう。
社会人から建築士になる最短ルート
現在、社会人の方で建築士を目指す場合は、学歴などによってルートが異なります。
ここでは、建築系の学歴がある場合とない場合で建築士になるための最短ルートについて解説します。
建築系学科の学歴がない場合
建築系学科の学歴が無い場合、まず2級建築士の受験資格を得るまでに7年以上の実務経験が必要です。
その後、2級建築士試験と1級建築士試験に合格し、且つ2級建築士として4年以上の実務経験があれば、晴れて1級建築士になることができます。
※2級建築士としての実務経験は、1級建築士試験に合格する前に積んでいても、合格後に積んでいても、もちろん問題ありません。
つまり、学歴がない状態で2級建築士を目指すと最低でも7年、1級建築士を目指すとなると最低でも11年はかかります。
そのため最短ルートを目指すなら、学校に通って受験資格を取得した上で、1級建築士合格を狙いましょう。
必要な費用は、2級建築士の受験料20,350円(税込)と1級建築士受験料の18,700円(税込)に加えて、学校の費用です。
学費は学校によって異なりますが、数十万円~100万円程度は必要となるでしょう。
建築系学科の学歴がある場合
続いて、建築系学科の学校を卒業している場合で、2級建築士、1級建築士になる最短ルートを見ていきましょう。
学校の種類別に解説していきます。
No | 学歴 |
---|---|
1 | 大学卒 |
2 | 短大 |
3 | 高専卒 |
4 | 高校卒 |
5 | 職業訓練校卒 |
6 | その他:建築設備士有資格者 |
大学卒
建築系学科の大学を卒業した方は、卒業した時点で1級建築士資格試験の受験資格を満たしています。1級建築士資格試験合格後は、2年以上の実務経験年数を積むことで、1級建築士として免許登録ができます。
受験に必要な費用としては、1級建築士受験手数料の18,700円(税込)です。また、2級建築士についても受験資格を満たしていますので、2級を受験する場合は、受験手数料20,350円(税込)が必要です。
2級建築士であれば、実務経験なしで免許登録できるため、大学卒業後に2級建築士資格試験に合格すれば、入学から数えて最短4年で2級建築士に、実務経験を2年積み、6年で1級建築士になることができます。
短大卒
建築系学科の短大を卒業した方も、1級建築士資格試験の受験資格を満たしています。
1級建築士の免許登録に必要な実務経験年数は、2年制と3年制の短大で異なり、2年制の場合は4年以上、3年制の場合は3年以上で、学校の在籍年数と実務経験年数が合わせて、6年以上になるようになっています。
2級建築士であれば、実務経験なしで免許登録できるため、卒業後に2級建築士資格試験に合格すれば、入学から数えて最短2~3年で2級建築士に、6年で1級建築士になることができます。
高専卒
建築系学科の高専を卒業した方も、1級建築士試験の受験資格を満たしています。
1級建築士の免許登録に必要な実務経験年数は、4年以上です。
2級建築士であれば、実務経験なしで免許登録できるため、卒業後に2級建築士資格試験に合格すれば、入学から最短5年で2級建築士、9年で1級建築士になることができます。
高校卒
建築系学科の高校を卒業した方は、1級建築士資格試験の受験資格を満たしていません。ですが2級建築士資格試験の受験資格は満たしているので、まずは2級建築士の取得から始めましょう。
2級建築士資格試験に合格し、且つ2年以上の実務経験があれば、2級建築士の免許登録が可能です。
その後は、1級建築士資格試験に合格し、且つ4年以上の実務経験があれば、1級建築士の免許登録が可能です。
入学から最短5年で2級建築士、9年で1級建築士になることができます。
職業訓練校卒
建築系学科の職業訓練校を卒業した方も、1級建築士の受験資格を満たしていません。ですがこちらも2級建築士資格試験の受験資格は満たしているので、まずは2級建築士の取得から始めましょう。
2級建築士資格試験に合格した場合、所定の実務経験を積むことで2級建築士の免許登録が、可能ですが、必要な実務経験年数は職業訓練校に入る前の学歴で変わってきます。
職業訓練校入校前 | 中学校または義務教育学校を卒業 |
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2級建築士免許登録必要実務経験年数 | 2年以上 |
高等学校を卒業 | 高等学校を卒業 |
---|---|
2級建築士免許登録必要実務経験年数 | 1年以上 |
2級建築士の免許登録後は、1級建築士資格試験に合格し、且つ4年以上の実務経験があれば、1級建築士の免許登録が可能です。
その他:建築設備士有資格者
建築設備士の有資格者は、1級建築士資格試験の受験資格を満たしています。
そのため、1級建築士資格試験に合格し、且つ4年以上の実務経験があれば、1級建築士の免許登録が可能です。
建築系学科のある学校
建築士試験の受験資格に該当する建築系学科のある学校はたくさんあるため、働きながら通う場合には、自身の環境や生活スタイルにあわせた学校の選択が大切です。
No | 建築系学科のある学校を選ぶ際のポイント |
---|---|
1 | 学費 |
2 | 時間帯 |
選択する際には上記のポイントを確認しましょう。特に、時間帯については要チェックです。それぞれについて詳しく解説します。
学校を選ぶ際のポイント①:学費
学校に通う場合、必ず確認したいポイントが学費です。
学費は、通う学校やコースによって様々です。
資格試験の大手学校を例に挙げて、1級建築士講座の学費を見てみましょう。
【学科試験のみのコースの場合】
・大手A社:¥850,000-(約15ヶ月間)
・大手B社:¥790,000-(約10ヶ月間)
【製図試験のみのコースの場合】
・大手A社:¥560,000-(約2ヶ月間)
・大手B社:¥450,000-(約2ヶ月間)
決して安い金額ではありませんね。
しかし、受講者の習熟度や学習期間、オンラインか通学か、など様々な受験によりコースは更に細分化され、価格も一つひとつ異なっています。
ですので、ただ単に「高いコースの方が良い!」というわけではありません。
また、ここでは大手二社を例に挙げましたが、その他にも建築士試験合格のための講座を行っている団体はたくさんあります。
学費も千差万別です。先ほども述べたように、学費の安い高いだけで一概に判断するのは危険です。
学校に通ったり、教材を購入したりする際は、自分に適したものを見つけることに注力して、慎重に進めましょう。
また学費に関しては、予算的に厳しい場合、奨学金制度などを活用するといった方法もあります。
入学金免除、学費免除のほか、各種の支援制度を用意している学校も存在しており、日本学生支援機構の奨学金についても利用可能です。
貯金が足りずに入りたい学校の入学を断念する必要はありません。ただし、奨学金を利用する際、返済が今後に必要となるため、金額面に注意しておきましょう。
奨学金制度を活用する際には、あらかじめ返済する計画を立てておくことが大切です。卒業後に働きながら返すこともできるため、無理のない範囲で利用してください。
学校を選ぶ際のポイント②:時間帯
建築系の学科を取扱っている学校では、昼間講義か夜間講義のどちらかを受けて勉強することになります。
社会人の方で、勉強と仕事を両立して行うのであれば、夜間講義を受けて対策するほうがおすすめです。昼間講義は、夜勤している方であれば検討して問題ありません。
大学や専門学校の夜間コースに通うと、日中に働いていても建築士への準備が整えられます。通う学校によっては通信講座も設けているため、通学しなくても単位取得が可能です。
入学から卒業まで最短で2年間必要ですが、2級建築士・木造建築士の受験資格を得られます。カリキュラムとしても1年目に建築の基礎知識、2年目に応用・実践問題と一般的なスタイルです。
先ほど、ご紹介した学費や時間帯などをチェックして、就職・転職までのサポートが充実している学校を選択しましょう。
建築士資格試験の難しさ
建築系学科の学校を卒業した後は、すぐに建築士資格試験を受験される方もいるでしょう。
しかし、学校を卒業したからといって、簡単に試験に合格できるわけではありません。実務経験を長く積んでいる方にも同じことが言えます。
建築士試験は、学科と製図試験を合わせると合格率が毎年だいたい10%前後で、知識の詰め込みだけでは合格できない難易度です。
特に、製図試験には決まった正解がないため、知識のみでは決して合格できません。知識とあわせて発想力や出題者の意図を読み取る力が必要です。
また、建築士試験は実質的に相対評価となっているので、受験する年における受験者のレベルが高ければ、合格難易度はあわせて高くなります。
卒業後、すぐに受験して合格する方もいますが、「しっかり学習したから合格できる」と自信をもって挑み不合格となった場合は、モチベーションとともに、建築士になりたい意欲までも下がることがあるでしょう。
現在建築士試験は、さまざまな団体がオフラインやオンラインで建築士講座を開催しています。
そのため、効率よく対策したい方や再受験のためにモチベーションを維持したい方は、受講してから試験に臨むといった選択肢も検討しましょう。
建築士資格試験講座を受講する
独学は自由度が高い反面、自分一人でわからない問題などの疑問点をすべて解決する必要があります。
社会人の方が独学となる場合、限られた時間の中でモチベーションを維持して効率よく勉強を継続しなければいけません。
そのため、「日々の隙間時間を有効に活用して独学よりも効率よく試験対策を行いたい」といった方には、建築士資格試験講座の受講がおすすめです。
オンラインで受講できるもので動画講義などが用いられた資格試験講座であれば、通勤途中の交通機関内や職場の隙間時間など場所や時間を選ばず効率よく対策ができます。
また、テキストと動画の両方で専門の講師のサポートを受けられるのも特徴です。学習意欲を高めて、合格の確率をアップさせましょう。
インプットした知識をアウトプットする機会や、わからない分野を質問して効率よく進めたいといった社会人の方は、ぜひ受講を検討してください。
まとめ
今回の記事では、最短で建築士になるためのルートを中心に解説しました。
建築士は簡単になれるものではありません。
試験の難易度は高いですし、実務経験も必要です。しかし、あなたが何歳で、どんな学歴であろうと、建築士になるための方法は用意されています。
建築系の学科を取扱っている学校においても昼間・夜間といったコースが設けられていますし、日中、仕事が忙しい方にはオンラインでの資格取得講座の受講もおすすめします。
近年の学校では、通信講座も取り扱っているため、自分の環境にあった学習方法で指定学科の受験資格を満たすことが可能です。
建築士は、非常に専門性が高い業務独占資格です。だからこそ、何度でも挑戦する価値があるので、諦めずに建築士の資格取得を目指してください。
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