施工管理に必須とされる施工管理技士資格は、2021年度から試験制度が大幅に変更されました。その変更点の一つが、「施工管理技士補」という資格の新設です。第一次検定の合格者に与えられる資格ですが、この資格で何ができるのでしょうか?
今回は、施工管理技士補が誕生した背景を踏まえ、施工管理技士補にできることや、資格取得に必要な第一次検定について解説します。
目次
施工管理技士の基本情報
施工管理技士とは、施工管理の知識を証明できる国家資格です。下請契約した建設現場に配置する、監理技術者・主任技術者の要件となる重要な資格でもあります。建設業の許可を受けたうえで工事を施工する場合は「主任技術者」、4,500万円(建築一式は7,000万円)以上の下請契約を締結した工事には「監理技術者」の配置が必要です。
施工管理技士の資格には1級と2級があり、1級は監理技術者と主任技術者、2級は主任技術者を務めることができます。
また、建設業の許可を受ける際、営業所に常駐する必要がある「専任の技術者」にも施工管理技士の資格が必要です。さらに、施工管理技士の有資格者は、経営事項審査で加点されます。経営事項審査は公共工事の入札に必要な事前審査で、施工管理技士の人数が多いほど評価が高くなる仕組みです。
施工管理技士の新たな資格「技士補」とは?
施工管理技士補が誕生した理由、技士補にできることについて見ていきましょう。
施工管理技士補が誕生した背景
施工管理技士補は、建設業法見直しにより、2021年4月に誕生した新たな資格です。1級および2級の第一次検定の合格者に対し、施工管理技士補の称号が与えられます。また、試験制度の見直しにともない、学科試験が第一次検定、実地試験は第二次検定と名称も変更されました。
施工管理技士補が新設されたのは、人手不足の解消が背景にあります。建設現場は若年層が極端に少なく、高齢化が進んでいる状況です。今後の大量離職は避けられないため、施工管理技士補の新設は、施工管理という業界の担い手の確保につながります。
施工管理技士補にできること
1級の施工管理技士補を取得すると、監理技術者の補佐を務めることが可能です。
従来は1つの建設現場に監理技術者を専任する決まりでしたが、近年は監理技術者不足が深刻な状況にあります。そこで、施工管理技士補を補佐として配置した場合に、監理技術者は2つの現場を兼任できるようになりました。監理技術者不足を補える点が、施工管理技士補を新設した大きな意義といえるでしょう。
なお、2級の施工管理技士補は、主任技術者の補佐といった実務的な役割はありません。ただし、経営事項審査の加点対象になるため、企業側にとって2級の施工管理技士補でも採用するメリットはあります。
また、施工管理技士補の資格に有効期限はなく、いつでも第二次検定を受検できます。
【施工管理技士補】第一次検定の概要
施工管理技士補を取得できる、第一次検定の受検資格や試験内容などについて解説します。
施工管理技士試験の受検資格
2級施工管理技士の第二次検定は、満17歳以上であれば誰でも受検できます。施工管理に興味があるが実務経験がない、という方はまず2級の合格を目指しましょう。
一方、1級施工管理技士の場合、以下の受検資格に該当する必要があります。建築施工管理技士試験を例に、第一次検定の受検資格をみていきましょう。
区分 | 学歴・資格 | 建築施工管理の実務経験年数 | ||
指定学科 | 指定学科以外 | |||
イ | 大学 専門学校の「高度専門士」 | 卒業後3年以上 | 卒業後4年6ヶ月以上 | |
短期大学 高等専門学校(5年制) 専門学校(専門士) | 卒業後5年以上 | 卒業後7年6ヶ月以上 | ||
高等学校 中等教育学校(中高一貫校) 専門学校の専門課程 | 卒業後10年以上 | 卒業後11年6ヶ月以上 | ||
その他(学歴は問わず) | 15年以上 | |||
二級建築士試験合格者 | 合格後5年以上 | |||
ロ | 2級建築施工管理技術検定 第二次検定※合格者 (※令和2年度までは実地試験) | 合格後5年以上 | ||
ハ | 2級建築施工管理技術検定第二次検定※合格後、実務経験が5年未満の者 (※令和2年度までは実地試験) | 短期大学 高等専門学校(5年制) 専門学校の「専門士」 | 上記イの区分参照 | 卒業後9年以上 |
高等学校 中等教育学校(中高一貫校) 専門学校の専門課程 | 卒業後9年以上 | 卒業後10年6ヶ月以上 | ||
その他(学歴は問わず) | 14年以上 | |||
ニ | 2級建築施工管理技術検定第二次検定※合格者 (※令和2年度までは実地試験) | 実務経験年数は問わず |
区分ニを除き、1年以上の指導監督的実務経験を含むことが必要です。
区分二の受検資格は、試験制度の見直しによる変更点の一つです。従来は5年の実務経験年数を要しましたが、制度の見直しで1級が受検しやすくなりました。
なお、学歴にある「指定学科」とは、国土交通省令で定める学科、それに準ずると認められる学科のことです。具体的にいうと、建築系・土木系・工学系・電気系・電気通信系・機械系などの学科に該当します。
また、実務経験の年数は、実務経験と認められる工事に従事している必要があります。建築施工管理技士を例にすると、建築一式工事や大工工事など、建築工事として実施された工事に該当します。詳細は受検の要項に記されているため、事前に確認しましょう。
施工管理技士・第一次検定の試験内容
建築施工管理技士を例にした、施工管理技士の第一次検定の試験内容は次のとおりです。
の別 | |||
建築学等 | 1 建築一式工事の施工の管理を適確に行うために必要な建築学、土木工学、電気工学、電気通信工学及び機械工学に関する一般的な知識を有すること。 | 知識 | 四肢一択 |
2 建築一式工事の施工の管理を適確に行うために必要な設計図書に関する一般的な知識を有すること。 | |||
施工管理法 | 1 建築一式工事の施工の管理を適確に行うために必要な建築学、土木工学、電気工学、電気通信工学及び機械工学に関する一般的な知識を有すること。 | 知識 | 四肢一択 |
2 建築一式工事の施工の管理を適確に行うために必要な設計図書に関する一般的な知識を有すること。 | 能力 | 五肢二択 | |
法規 | 建設工事の施工の管理を適確に行うために必要な法令に関する一般的な知識を有すること。 | 知識 | 四肢一択 |
建築学等 | 1 建築一式工事の施工の管理を適確に行うために必要な建築学、土木工学、電気工学、電気通信工学及び機械工学に関する概略の知識を有すること。 | 知識 | 四肢一択 |
2 建築一式工事の施工の管理を適確に行うために必要な設計図書を正確に読みとるための知識を有すること。 | |||
施工管理法 | 1 建築一式工事の施工の管理を適確に行うために必要な施工計画の作成方法及び工程管理、品質管理、安全管理等工事の施工の管理方法に関する基礎的な知識を有すること。 | 知識 | 四肢一択 |
2 建築一式工事の施工の管理を適確に行うために必要な基礎的な能力を有すること。 | 能力 | 四肢二択 | |
法規 | 建設工事の施工の管理を適確に行うために必要な法令に関する概略の知識を有すること。 | 知識 | 四肢一択 |
なお、建築以外の区分であっても、第一次検定で施工管理法、法規が出題されます。
第一次検定の合格基準は、1級と2級で異なります。1級は全体の得点が60%以上、かつ施工管理法(適応能力)で60%以上の得点が必要です。一方、2級は全体の得点が60%以上となっています。
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施工管理技士補を取得するなら、通信講座がおすすめ
第一次検定は学科試験のため、過去問やテキストを用いた受検対策が必要です。より効率的に勉強したい場合は、SATの通信講座をおすすめします。
SATの通信講座はテキストに加え、プロが解説する要点を押さえた動画でも勉強可能で、効率的に知識を吸収できるでしょう。
加えて、独自のEラーニングシステムにより学習状況の管理がしやすいうえ、確認問題による実力チェックも可能です。目標達成のコツも伝授しているため、最短で合格できる可能性が高く、仕事と勉強の両立もしやすいといえます。
なお、施工管理技士講座は、建築・土木・管工事・電気工事・電気通信工事と、人気の分野をカバーしています。施工管理技士試験に挑戦する方は、SATの通信講座を上手に活用してみてください。
施工管理技士補は、第一次検定合格で取得できる
施工管理技士補は、2021年度の試験制度の見直しで誕生した資格です。施工管理技士補は今後の業界の担い手の確保を目的とする資格で、1級の施工管理技士補を取得すると、監理技術者の補佐を務められます。2級の施工管理技士補の有資格者は、経営事項審査の加点対象となるため、資格を持っていると就職や転職で有利になるでしょう。
施工管理技士補を取得するには、施工管理技士試験の第一次検定に合格する必要があります。合格率は試験区分によりまちまちですが、しっかり勉強すれば合格は可能です。
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