職長は、作業現場において作業員を指導監督する重要な役割を担います。職長を務めるにあたっては、職長教育の受講が必要です。
職長教育のカリキュラムでは、「職長教育グループ討議」という活動を行います。職長教育グループ討議はどのような目的があり、具体的に何をするのか、職長を志す方は気になるところでしょう。
そこで今回は、職長と職長教育の概要、職長教育グループ討議の内容のほか、職長教育の受講方法などについて解説します。
目次
職長および職長教育の基礎知識
まずは、職長の役割と職務、職長教育の目的を見ていきましょう。
職長とは?
職長とは、作業現場で作業員を指導監督する役職のことです。職長は現場全体の責任者とは異なり、作業中の作業員に対する指導監督者を指します。
人や機械、資材などが常に動く作業現場では、危険かつ有害な事故要因が潜んでいます。そのような現場で作業員を監視し、安全に工事を進め、労働災害を防ぐことが職長の重要な役割です。
また、職長は作業員の安全を確保するため、以下12の職務を遂行する必要があります。
職長の12の職務 | ||
---|---|---|
No. | 項目 | 内容 |
1 | 作業手順を正しく定める | 安全、効率良く作業が出来るように作業の手順と急所を定め、定期に見直しを行うこと。 |
2 | 作業方法を改善する | 常に問題意識を持ち、問題を見つけたら改善をすること。 |
3 | 作業員を適正に配置する | 作業の条件、内容に対し、部下の労働能力、知識、経験、体力、資格等を生かし、仕事が最も順調に進むように作業割り当てをすること。 |
4 | 作業者に対して教育指導を行う | 安全で、正しい作業を行えるように、必要な知識、技能を身につけさせ、やる気を起こさせるように教育指導を行うこと。 |
5 | 作業者に対して監督・指示をする | 作業開始を指示し、作業中は指示どおりに作業が行われているかを監視するとともに、不安全行動を発見したときは是正指導をすること。 |
6 | 危険性及び有害性を調査し、対策を実施する | 事前に、使用する機械設備や作業方法等の危険性又は有害性を調査し、その結果にもとづき改善措置を決定し作業計画、作業手順を定める。 |
7 | 環境の改善・保持に努める | 常に4Sを心がけ、快適な環境で作業が行えるように作業環境改善を行い、作業者の健康管理と職業性疾病対策を行うこと。 |
8 | 安全衛生点検を繰り返し実施する | 機械設備、環境等については、始業前、定期に点検を実施し基準からはずれた「異常な状態」を早期に発見して是正すること。 |
9 | 異常時の措置は適切に行う | 現場の異常事態を早期に発見し適切な措置をとるとともに、同種・類似の異常が発生しないように再発防止対策を講じること。 |
10 | 災害発生時の措置は適切に行う | 災害発生時は、まず被災者を救出し、二次災害防止の措置を講じた後、同種災害防止のため、災害調査及び原因分析を行い安全対策を講じること。 |
11 | 作業者の安全意識の高揚に努める | 労働災害の防止を図るためには、作業者全員が労働災害防止についての安全意識を高めるための安全活動を計画・継続的に行うこと。 |
12 | 創意工夫を引き出す | 例えば、ヒヤリハット報告、改善提案制度といった諸活動をとおして、作業者から作業方法、作業環境改善等の提案や工夫を出させること。 |
上記のとおり、職長はさまざまな職務をとおして、作業員の安全を確保する必要があります。職長がこれらの職務を果たさない場合、実行責任者として労働安全衛生法違反の責任が問われるので注意が必要です。
職長教育とは?
職長教育とは、新たに職長に就く際に受講する安全教育です。職長教育の受講は、労働安全衛生法で義務付けられています。職長教育が必要な業種は、建設業、製造業、ガス業、電気業、自動車整備業、機械修理業です。
現場の安全衛生の水準は、職長の指導力や対応力に左右されるため、職長教育では先回りの安全衛生管理・情報管理・部下の育成などを学びます。
職長教育グループ討議の内容
ここからは、職長教育グループ討議の目的、討議で実践する課題の内容を解説します。
職長教育グループ討議とは?
職長教育グループ討議とは、職長教育で行うグループワーク、グループディスカッションのことです。
職長教育の参加者で4人~7人のグループを作り、議長・書記・発表・コメント役など、メンバーごとの役割分担を決めます。それぞれの役割が決まったら、与えられた課題に対し、グループ内で考え、結論を出すという流れです。
職長として的確な指示が出せるよう、行動の目的や意味を理解することが職長教育グループ討議の目的です。コメントにおいても、良い部分、悪い部分、改善点などの具体的な意見を出すことが要求されます。
このようなグループワークを通して、部下を指導する職長に必要な、良い部分を褒める、細かい部分に気付く、的確に助言するといった指導方法を体で覚えていきます。
なお、職長教育グループ討議中は、声の大きさ、話し方のリズム、姿勢、立ち振る舞いなどもチェックされます。職長は作業現場の安全を担うため、厳しい要求が与えられるケースもあるようです。
次に、職長教育グループ討議の3つの課題について詳しく見ていきましょう。
課題(1)健康KY演技
健康KYとは、職長が作業員に睡眠・食欲・体調に関する3つの声かけを行い、日々の体調変化を把握する活動のことです。ストレスは労働災害を招く大きな要因であるため、ストレスの有無をチェックするメンタルヘルス対策として、健康KYは有効な手段となります。
職長教育グループ討議では、健康KYの実践に必要なコミュニケーションの取り方、健康確認の方法を学んだうえで適正な配置を理解します。
課題(2)危険予知訓練
危険予知訓練とは、職場や作業に潜む危険要因を話し合い、危険に対する感受性や問題解決能力を高める訓練のことです。危険要因を潜在意識に落とし込み、危険箇所と行動目標を指差し呼称で習慣化することで、ヒューマンエラーによる事故防止につなげます。
グループ討議では危険回避だけでなく、正しい作業手順をもとに、行動目標を立てる重要性を理解します。危険予知訓練は、労働災害のプロセスを倫理的に考え、指差し呼称の意味と効果を把握できるトレーニングです。
課題(3)リスクアセスメント
リスクアセスメントとは、現場に潜む危険性、有害性のあるものを除去、低減する手法のことです。自主的に危険箇所や有害な要因を見つけ出すことで、事前に的確な対策を講じることが可能になります。
職長教育グループ討議では、人の行動による労働災害防止活動の限界を機械設備で解決する、という考え方を理解します。「安全=経営の安定」につながることを、職長の立場で理解するのがリスクアセスメントを学ぶ目的です。
職長教育の受講方法とは?
職長教育は、労基連や各協会が指定した会場、またはWebで受講することができます。
労基連や各協会の講習会では、2日間拘束されるうえに、平日のみの開催である場合もあります。したがって、仕事が休めない、時間が取れないという方には、Web講座がおすすめです。
講習会の職長教育グループ討議は対面で行いますが、Web講座ではビデオ通話を活用します。ビデオ通話でも対面と同様に、講師が討議の内容に対して随時コメントや指導を行います。
ビデオ通話はスマートフォンからでも利用できるため、自宅や外出先でも職長教育グループ討議に参加が可能です。
また、職長教育グループ討議を除き、職長教育の講義は動画やテキストで勉強できます。職長として実務に役立つ知識をいつでも復習できるのは、Web講座の強みといえるでしょう。
職長教育グループ討議は、職長としての職務に役立つ
職長は作業員に対する指導監督者で、作業員の安全を守り、労働災害を防止する職務を担います。
職長になるために受講する職長教育では、職長に必要な指導力や対応力を身につける職長教育グループ討議を行います。
職長教育グループ討議の課題としては、健康KY演技、危険予知訓練、リスクアセスメントが代表的です。いずれも作業員の安全を守る重要な課題であるため、目的や効果をしっかりと把握しておきましょう。
なお、職長教育の講習会は2日間を要するため、仕事が忙しく時間が取れない方はWeb講座の受講がおすすめです。Web講座では、スマートフォンから参加できるうえに、職長教育の内容は動画やテキストでいつでも勉強できます。
忙しい方はもちろん、職長教育の理解を深めたい方はWeb講座を活用しましょう。