労災が最も多い業界は建設業界であることは、皆さんもご存知だと思います。
特に仮設工事での足場の組立て、解体、変更作業は事故に繋がるリスクがとても高い作業です。人の命に関わる作業ですのでひとりひとりが足場に関する知識をしっかりと身に付け安全に作業ができるように心掛けましょう。
万が一、労災が発生した場合、法律と一緒で知らなかったで済まされる問題ではありません。他人事と捉えずに、足場特別教育を受講するようにしましょう。
以下にて、「足場特別教育がどういったものなのか」「受講となる対象者」などを詳しく説明していきます。その他不明な点も多々あると思いますので、「よくある質問・回答」も併せて記載してあります。作業に従事する可能性がある人は、ぜひご覧ください。
目次
- 足場特別教育の概要とその必要性
- 足場特別教育のカリキュラムとは
- 足場特別教育の受講が必要な仕事
- 【足場特別教育】カリキュラムの省略や免除の対象者
- 足場特別教育に関するよくある質問
- 実技はありますか?
- どのような作業内容で資格を必要とするのですか?
- 経験年数は必要ですか?
- 作業主任者でも特別教育の受講は必要ですか?
- 移動式足場(ローリングタワー )も資格が必要ですか?
- 経験者は猶予期間があるのですか?
- 脚立、脚立足場にも資格が必要ですか?
- 短縮講習を受けるのに、何か経験を証明するものは必要ですか?
- 18歳未満は特別教育を受けられませんか?
- 足場の上を歩く場合でも資格が必要ですか?
- もし特別教育を受講しないで作業を行った場合はどうなりますか?
- 対象業務の範囲ですが、建設、建築以外の業種でも対象となるのでしょうか?
- 受講年齢に上限の制限がありますか?
- 筋交いや手すりを外したりすることがありますが、特別教育を受けなければなりませんか?
- 足場特別教育 .足場特別教育は助成金(建設労働者確保育成助成金)の対象となりますか?
- SATの通信講座でも足場特別教育が受けられます
- 【足場特別教育】カリキュラム・免除条件は事前に確認を
足場特別教育の概要とその必要性
まずは、足場特別教育の概要と、足場特別教育が必要とされる理由について紹介します。足場に関連する作業に従事している方は、足場特別教育の内容を把握しておきましょう。
足場特別教育の概要
足場特別教育とは、足場の「組立て」「解体」「変更」に従事する人が受講しなければいけない特別教育です。
平成27年の7月1日より、安全衛生法関連規則の足場に関する法改正が適用され、「足場特別教育」が施行されることとなりました。
法が改正される前にも、足場の資格に技能講習はありました。しかし、それは作業主任者のみが必要である資格だったため、他の作業員は資格を持つ必要がなかったのです。
受講するために必要な料金は、どこで受講するか、団体・個人で受講するかによっても変わります。相場としては、10,000円前後です。
受験資格は18歳以上となっており、上限はありません。
そして、平成27年の7月1日から、足場特別教育の講習を受けていない人は業務に就くことができなくなっています。この点には、必ず留意しておきましょう。
なぜ足場特別教育が必要なのか?
足場特別教育が必要とされる理由は、建設業において足場に関連する事故が多発しているからです。
建設業労働災害防止協会の『平成28~30年の建設業における「墜落・転落」による起因別死亡災害発生状況』によると、平成29年の足場による事故は23%(31件)にのぼりました。これは、その年の墜落・転落の死亡災害の中では最多となっています。
このように、足場は建設現場の高所作業に欠かせない設備でありながら、足場からの墜落や組立ての不備による倒壊事故など、事故のリスクが高い作業です。建物で最も高い位置にある屋根での作業よりも事故件数が多いことからも、足場での作業の危険性が理解できるでしょう。
これらのことを十分に理解し、足場による高所作業の墜落・転落事故防止対策を徹底するため、足場に関連する作業を行う労働者に対し、足場特別教育の受講が義務付けられているのです。
足場特別教育のカリキュラムとは
足場特別教育の講習がどういったカリキュラムで進んでいくのでしょうか。講習の時間と一緒にまとめましたので、下記をご覧ください。
カリキュラム | 内容 | 時間 | 時間※短縮教育の場合 |
---|---|---|---|
足場および作業の方法に関する知識について | 足場の種類から始まり、材料、構造、足場の組立て、解体および変更の作業についてなどを改めて学習します。講習の中で最も講習時間が長いメインのカリキュラムになります。 | 3時間 | 1時間30分 |
工事用設備、機械、器具、作業環境等に関する知識 | 工事用設備や機械についての取り扱い方法の再認識。器具や工具を悪天候時にどう扱うかということについても講習内で触れていきます。 | 30分 | 15分 |
労働災害の防止に関する知識 | 労働災害を防止するための対策や知識を学習していきます。例えば、墜落防止のための設備、落下物による危険防止のための措置、感電防止のための措置などについてです。 | 1時間30分 | 45分 |
関係法令 | 法令、安衛則中の関係条項を確認していきます。 | 1時間 | 30分 |
以上が、足場特別教育のカリキュラムとなります。
また、足場特別教育を受講する必要のない年少者は、「解体」「変更」の仕事に従事させることが法令で禁止されています。(年少者労働基準規則第8条第25号より)
足場特別教育の受講が必要な仕事
続いて、足場特別教育が必要となる仕事について見ていきましょう。足場特別教育は、以下のような仕事に携わる際に受講が必要です。
1 | 足場の高さに関わらず、足場を組立て・変更・解体する業務に携わる仕事 |
---|---|
2 | 足場の元で材料の運搬、整備等といった業務に携わる仕事 |
脚立やはしごなどを、単体で使用する場合は「足場」であるとみなされないため、足場特別教育を受講する必要はありません。
また、「足場を歩くだけ」という人も受講の対象にならず、「組立て」「変更」「解体」に関わる人のみが受講の対象になります。例えば、「通路として足場を利用するだけ」「上で作業するだけ」などは受講の対象にはなりません。
しかし、「搬入のため、一時的に一本の手すりを外す」といった行為も「変更」の業務に該当します。注意しておきましょう。
さらに詳しく!
足場特別教育が必要な業務とは?よくある質問の答えも解説
【足場特別教育】カリキュラムの省略や免除の対象者
前述の「足場特別教育のカリキュラム」でも明記した通り、足場特別教育には、「6時間の講習が3時間になるケース(短縮教育)」や「そもそも足場特別教育の講習が免除されるケース」があります。
以下にて、詳しくみていきましょう。
3時間の受講になるケース
平成27年7月1日(適用日)までに足場の組立等の業務を始めていた人は、講習の時間が短縮され、3時間の受講になります。
受講が免除になるケース
足場特別教育の受講が免除になる人のケースは下記のとおりです。
1 | とび科の職業訓練指導員免許を受けた人 |
---|---|
2 | 足場の組立て等、作業主任者技能講習を修了している人 |
3 | とびに係る1級、または2級の技能検定に合格している人 |
4 | 建築施工系とび科の訓練(普通職業訓練)を修了している人 |
5 | 居住システム系建築科、居住システム系環境科の訓練(高度職業訓練)を修了している人 |
上記の人は、足場の特別教育の講習を受けなくても足場の組立て等の業務に従事することができます。
足場特別教育に関するよくある質問
足場特別教育についてよくある質問と回答をまとめてみました。実際にどの作業が該当するのか不明な点も多いと思います。ここでは、代表的な質問をいくつかまとめてみましたので、参考にしてください。
実技はありますか?
実技はありません。あらかじめ決められたカリキュラムがあり、学科のみとなります。
どのような作業内容で資格を必要とするのですか?
2015年7月1日より規則の改正があり、足場の高さに関係なく足場の組立て・解体に関わる作業をする方は特別教育を受けなければなりません。つまり、この特別教育を受講していないと足場に関する作業はできないということです。 ここで注意したいのが、足場材の緊結・取外しの作業・足場上における補助作業は含まれないということです。あくまでも対象となるのは、「足場の組立て、変更、解体」による作業のことを指します。足場上で別の作業をする場合や歩行すること自体に資格の有無は関係ありません。
経験年数は必要ですか?
経験年数の定めはありません。ただし、2015年7月1日の時点で作業の経験がある方は講義時間を3時間に短縮することができます。対象となる方は、前述した「受講が免除になるケース」でまとめてありますのでそちらをご覧ください。
作業主任者でも特別教育の受講は必要ですか?
作業主任者という資格は特別教育の上位資格として位置付けられているので受講は不要です。通達でも、「足場の組立て等作業主任者技能講習を修了した者は科目の全部について省略することができる」とされています。
移動式足場(ローリングタワー )も資格が必要ですか?
ローリングタワーでは足場の高さを調整したりする作業もあるので、資格は必要です。必ず特別教育を受講された方が作業するようにしましょう。
経験者は猶予期間があるのですか?
2015年7月1日の時点で足場の組立て、解体、変更の業務に従事する方は2017年6月30日までに資格を取得しなければならないという猶予期間がありました。ですが、今は何年も経過しているので猶予期間はありません。
脚立、脚立足場にも資格が必要ですか?
脚立や移動はしご等を単体で利用される場合資格は必要ありません。ですが、脚立を足場板へ掛け渡して支持物として利用する場合には高さの制限なく資格が必要となります。
短縮講習を受けるのに、何か経験を証明するものは必要ですか?
事業主の証明書が必要となります。ただし、一人親方の場合は証明することが困難と考えられますので元請け、または同業者から証明してもらいましょう。元請けや同業者による照明も困難な場合は本人で証明することも可能となっています。詳しくは特別教育を受講する講習機関に問い合わせてみましょう。
18歳未満は特別教育を受けられませんか?
労働基準規則によると、18歳未満の者は足場の組立て等の作業に従事させてはならないと規定されており、業務そのものに就くことができません。従って18歳未満の方は特別教育の対象外となります。
足場の上を歩く場合でも資格が必要ですか?
例えば工事写真の撮影などで足場の上を歩く場合などを例に挙げると、足場に係る組立て、解体、変更の業務に該当しないので資格は不要です。
もし特別教育を受講しないで作業を行った場合はどうなりますか?
特別教育を受講していないのに足場の組立て等の作業をしていることが発覚した場合は、違反になります。罰則対象ですので、安衛法第119条の「懲役6か月以下若しくは50万円以下の罰金」に科されます。必ず特別教育を受講した作業員が作業するようにしましょう。
対象業務の範囲ですが、建設、建築以外の業種でも対象となるのでしょうか?
建設、建築業界で足場を扱う機会は多いですが、どの業種での作業という縛りはありませんので、どの業種でも適用されます。
受講年齢に上限の制限がありますか?
年齢制限による法規制はありませんので、受講することは可能です。ただし、一部企業では高齢による高所作業は危険だという判断から受講年齢に制限を設けている企業もあります。
筋交いや手すりを外したりすることがありますが、特別教育を受けなければなりませんか?
「筋交いや手すりを外す」という行為は「足場の変更」作業に該当します。従って、特別教育の受講が必要となります。
足場特別教育 .足場特別教育は助成金(建設労働者確保育成助成金)の対象となりますか?
3時間の短時間講習および6時間の講習でも対象となります。講習開始日の1か月前までに事前届け出が必要です。
SATの通信講座でも足場特別教育が受けられます
足場特別教育の講習は通信講座でも受講することが可能です。通信講座でも受講証明書を発行してもらえます。ここではSATの通信講座カリキュラムについて紹介します。
カリキュラムは合計約7時間の講習となっており全4章で構成されています。
講座プログラム(7時間8分)
実施内容 | 講習時間 |
---|---|
はじめに | 12分 |
第1章 足場及び作業の方法に関する知識 | 3時間36分 |
第2章 工事用設備、機械、器具、作業環境等に関する知識 | 41分 |
第3章 労働災害の防止に関する知識 | 1時間37分 |
第4章 関係法令 | 1時間2分 |
以上が、SATの足場特別教育カリキュラムとなります。
通学での講習とは違い、パソコンやスマホ、タブレット等で視聴できるので急用ができた際は、動画を一時停止して空いた時間に受講を再開することができます。そのため、まとまった時間が確保できないという方におすすめの受講スタイルです。
費用は8,800円(税込)で受講をすることができます。
講座受講後、eラーニング上で最終試験に合格すると、足場特別教育の全課程を修了したことを証明する「受講証明書」がもらえます。
SATの足場特別教育は下記のページからお申込みください。
お申し込みはこちら!
足場の組立等特別教育|SAT株式会社
【足場特別教育】カリキュラム・免除条件は事前に確認を
足場特別教育は、足場の「組立て・変更・解体」の作業を行う労働者が受講対象者です。足場の高所作業は事故のリスクが高いこともあり、足場からの転落や組立ての不備による倒壊事故が多発しています。足場を用いた高所作業の安全性を高め、かつ事故を減らすことを目的として、安全衛生法で足場特別教育の受講が義務化されました。
ただし、足場を歩いて作業するだけ、という場合は足場特別教育の受講義務はありません。
足場特別教育のカリキュラムは今までの業務経験や取得資格によって、「6時間の講習」「3時間の講習」「講習免除」になる場合があります。不明な点がある場合は、足場教育に関する「よくある質問」で回答も掲載しておきましたので、自分が該当するかどうかよく確認した上で受講を申し込むようにしましょう。
また、講習を受けたからといって、現場での安全が担保されるわけではありません。ひとりひとりの安全意識が欠けるところから災害は発生します。足場での労災が多いことを再認識し、事故のない現場をつくっていきましょう。