第三種電気主任技術者(電験三種)とは、大型建物の電気設備(電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物)の保安監督業務を行うための資格です。
このような電気設備は多くのオフィスビルや大型商業施設、ホテルなどに設置されており、多くの人の生活や安全を保っています。
そのため、電験三種の資格が必要な電気設備の保安監督業務には相応の専門知識が求められます。
電験三種試験の合格率は10%以下でとても難易度が高く、合格には、電気に関する基礎知識と現場での応用力、計算力が必要とされます。
そこで今回は、電験三種試験の難易度や合格率、科目の出題傾向、勉強のポイントを解説します。
目次
電験三種試験の難易度や合格率について
電験三種の試験は、資格試験の難易度では「普通」といわれています。
しかし、令和3年の合格率は11.5%、科目合格率も32.5%と低めです。
電験三種の試験は4科目の筆記試験ですが、記述問題と計算問題が混在しており、電気や法律に関する知識はもちろんのこと計算力も問われます。
また、出題範囲が広いので計画的に勉強しても一発合格はなかなか難しいでしょう。
「普通」に惑わされてはいけません。特に、電気の知識がない方が受験する場合は「電気数学」から勉強を始めないと理解できない部分も多いです。通信教材などもフル活用しましょう。
過去5年間合格率の推移
平成30年度〜令和3年度
平成30年度~令和3年度までの合格率は、令和2年度までは9%台、令和3年度に11.5%に上がっています。
11.5%でも十分低いように思われますが、むしろ近年では高い方でした。この中には、科目合格を積み重ねて合格した方も含まれます。
年度 | 受験申込者(人) | 受験者(人) | 合格者(人) | 合格率 |
---|---|---|---|---|
令和3年度 | 53,685 | 37,765 | 4,357 | 11.5% |
令和2年度 | 55,406 | 39,010 | 3,836 | 9.8% |
令和元年度 | 59,234 | 41,543 | 3,879 | 9.3% |
平成30年度 | 61,941 | 42,976 | 3,918 | 9.1% |
引用元:電気技術者試験センター
令和4年度
令和4年度から試験日が年2回に増えましたが、上半期の試験の合格率は8.3%で一気に下がりました。令和3年度の受験者数に比べると受験者数も減っていますが、合格者は一気に半分近くになっています。問題が難しかったと推測されます。
年度 | 受験申込者(人) | 受験者(人) | 合格者(人) | 合格率 |
---|---|---|---|---|
令和4年度 (上期) | 45,695 | 33,786 | 2,793 | 8.3% |
引用元:電気技術者試験センター
電験三種・科目ごとの合格率
平成30年度〜令和3年度
電験三種では科目ごとの合格率も毎年発表されています。
平成30年~令和3年までは、どの科目も13~25%前後が平均です。令和3年度は、「電力」が32.6%と高めの合格率となりました。令和3年度の試験は、理論のみ10.4%と低めですが、機械や法規も20%を超えています。
年度 | 科目 | 申込者(人) | 受験者(人) | 合格者(人) | 合格率 |
---|---|---|---|---|---|
令和4年度 (上期) | 理 論 | 41,236 | 28,427 | 6,554 | 23.1% |
電 力 | 37,673 | 23,215 | 5,610 | 24.2% | |
機 械 | 48,814 | 41,570 | 2,727 | 11.3% | |
法 規 | 40,112 | 23,752 | 3,499 | 14.7% | |
令和3年度 | 理 論 | 45,710 | 29,263 | 3,030 | 10.4% |
電 力 | 47,943 | 29,295 | 9,561 | 32.6% | |
機 械 | 48,814 | 27,923 | 6,365 | 22.8% | |
法 規 | 48,241 | 28,045 | 6,761 | 24.1% | |
令和2年度 | 理 論 | 49,113 | 31,936 | 7,867 | 24.6% |
電 力 | 47,982 | 29,424 | 5,200 | 17.7% | |
機 械 | 47,462 | 26,636 | 3,039 | 11.4% | |
法 規 | 51,277 | 30,828 | 6,573 | 21.3% | |
令和元年 | 理 論 | 52,765 | 33,939 | 6,239 | 18.4% |
電 力 | 51,501 | 30,920 | 5,646 | 18.3% | |
機 械 | 53,217 | 29,975 | 7,989 | 26.7% | |
法 規 | 55,495 | 33,079 | 5,858 | 17.7% | |
平成30年度 | 理 論 | 53,735 | 33,749 | 4,998 | 14.8% |
電 力 | 57,338 | 35,351 | 8,876 | 25.1% | |
機 械 | 54,992 | 30,656 | 5,991 | 19.5% | |
法 規 | 56,901 | 33,594 | 4,495 | 13.4% |
引用元:電気技術者試験センター
令和4年度
令和4年度前期試験の科目合格率は、理論と電力が20%台前半、機械と法規が10%台前半の合格率です。
令和4年度前期の合格率は8%台でしたが、科目合格率はそれほど悪くありません。科目合格できた方はいても、総合合格には手が届かなかった方が多かったと推測されます。
年度 | 科目 | 申込者(人) | 受験者(人) | 合格者(人) | 合格率 |
---|---|---|---|---|---|
令和4年度 (上期) | 理 論 | 41,236 | 28,427 | 6,554 | 23.1% |
電 力 | 37,673 | 23,215 | 5,610 | 24.2% | |
機 械 | 48,814 | 41,570 | 2,727 | 11.3% | |
法 規 | 40,112 | 23,752 | 3,499 | 14.7% |
引用元:電気技術者試験センター
他の国家試験との合格率の比較
エネルギー管理士の合格率は2021年度で31.2%、危険物(甲種)は30~40%です。
二級建築士の令和3年度の合格率は23.6%、宅建の令和3年度12月試験の合格率は15.6%となっています。
基本情報技術者試験は、長年25%前後の合格率でしたが、令和3年1月の試験は57%と一気に高くなりました。
このように、他の国家試験の合格率と比べても、電験三種の合格率は低く、難易度の高い試験だと分かります。
資格名 | 合格率 |
---|---|
エネルギー管理士 | 31.2% |
危険物(甲種) | 30~40% |
二級建築士 | 23.6% |
宅建 | 15.6% |
宅建 | 15.6% |
基本情報技術者 | 57% |
電験三種の合格率が低い背景
電験三種の合格率が低い理由の背景には、試験が難しいということの他にも、誰でも受験できることがあげられます。
電験三種は受験制限がなく、需要が高いため受験者数が多い
電験三種は受験制限が無く、前提となる学歴や実務経験を必要としません。
そのため、合格の実力に満たない受験者も腕試しなどで受験するために合格率が低くなっていることが考えられます。
受験に制限がある例として、社会保険労務士試験は一部例外を除いて大学卒などの学歴や、3年以上の実務経験が必要です。
また多くの企業が電験三種保持者を求めているので、電験三種保持者の需要は高く、就職・転職に有利であるとして受験生にも人気のため、受験者数が多い理由といえます。
電気関係の実務的知識が問われる
電験三種の試験は実務に即した知識が問われる試験です。そのため参考書や問題集で独学しても合格はなかなか難しいのが実状です。
電験三種試験の難易度の高さを考えると、実務経験の有無にかかわらず、合格にはしっかりとした教材を使うことをおすすめします。
応用力がつく勉強法が必須
電験三種に合格しなかった人にはある共通点があります。それは、基礎知識を中心に学習し、応用力がつくような勉強をしなかったことです。
電験三種の試験は、過去とまったく同じ問題や、似た問題が出題されることはきわめて少ないので、応用力が求められます。
そのため、基礎知識は当然のこと、その知識を活かした応用問題が解けるような勉強をしましょう。意味もわからず過去問題をただ丸暗記する学習法は効果的ではありません。
なぜなら、公式を覚えても解き方がわからないなど、独学ではどうしても限界があります。
特にテキストの解説だけでは十分に理解できない方は通信講座を利用し、弱点を教えてもらい、苦手な問題を克服するのがよいでしょう。
さらに詳しく!
電験三種の「科目合格制度」とは?上手に活用して合格!
電験三種試験の合格に必要なこと
電験三種試験の合格に必要なことを科目ごとに見ていきましょう。
試験4科目ごとの応用力
試験は理論、電力、機械、法規の4科目で、内容は下のとおりです。
科目名 | 科目の内容 |
---|---|
理 論 | 電気理論、電子理論、電気計測および電子計測 |
電 力 | 発電所および変電所の設計および運転、送電線路および配電線路(屋内配線を含む。)の設計および運用ならびに電気材料 |
機 械 | 電気機器、パワーエレクトロニクス、電動機応用、照明、電熱、電気化学、電気加工、自動制御、メカトロニクスならびに電力システムに関する情報伝送および処理 |
法 規 | 電気法規(保安に関するものに限る。)および電気施設管理 |
引用元:電気技術者試験センター
この電験三種試験の特徴として、「理論」で問われる電気に関する基礎知識を土台にして、他の科目でケースごとに応用していく力が必要です。
「電力」では電気回路、「機械」は変圧器・直流機などに関する内容ですが、いずれも「理論」の知識を応用したものです。
「法規」は法令文の暗記と計算力が問われますが、電気の知識を理解し、使えるレベルにすることが求められます。
数学の理解と計算力
電験三種試験に出題される問題は、公式を理解しておけば比較的解きやすい傾向にあります。
ただし、発電所の電力の問題など、電験三種特有の数学や公式が頻出するため、対策を立てておくことは必要です。
試験の出題文と問題比率は固定されているため、過去問題や演習問題で計算問題などをしっかり解けるようにしておけば安心です。
計画的で効率のよい対策
電験三種は科目合格制で、3年間で4科目に合格すればよく、合格のためには勉強時間などの配分に留意して対策を立てておきたいところです。
電験三種の数学は、中学までの数学で解答できるといわれることもありますが、覚える公式が多いうえに、どのように計算すればよいかわからないということがあります。
また、計算に時間がかかり、時間切れになってしまう方も多いため、勉強法も工夫が必要です。例えば、公式を覚える際は、公式のアルファベットや数字の意味を考えると効率よく覚えられます。
例えばオームの法則であれば、Vが電圧で、Iが電流で、Rが抵抗、という感じで覚えましょう。
科目合格制度を利用する
科目合格制度とは、60点以上を取得した学科の試験が以後試験回分免除される仕組みです。
年2回試験を受けるとすれば、2年半科目合格を維持できます。
1回の試験で1科目ずつ合格していけば、4回目の試験で総合合格が可能です。
全く知識がない状態から試験に挑戦する場合、科目合格を狙ったほうがうまくいきやすいでしょう。
まとめ
電験三種の難易度は?
電験三種の難易度は「普通」といわれていますが、これは「専用の予備校に通い、特殊なテクニックを学ばなくても合格できる」程度の意味です。 合格率が10%前後ですから、難易度の高い試験と思っていいでしょう。計画的に勉強しましょう。
電験三種の合格率は?
前述したように、電験三種の合格率は8~10%台前半を推移しています。令和3年度の合格率11%台が、ここ5年間では最も高いです。 受験者数も多いですが、電気工事士と比べるとずっと低いので、腰を据えて勉強しましょう。一夜漬けではまず合格できません。
電験三種の合格のコツは?
一発合格を無理に狙わず、科目合格を狙って勉強していくのもおすすめです。 ただし、年によって科目の難易度にもばらつきがあるため、科目合格をねらっていても一通りの勉強は必要です。また、週末にまとめて勉強するより1日15分でもいいので毎日勉強していったほうが、知識が身につきやすいでしょう。
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