第二種電気主任技術者

電験二種の全体像と将来性

電験二種の全体像 発電所や工場などの保安監督で必須の 国家資格のため、高い将来性が期待できます。

電験二種の全体像

正式名称 第二種電気主任技術者
仕事内容 発電所や工場、ビルなどに設置された電気工作物の保安の監督
※対象は電圧17万ボルト未満の事業用電気工作物に限る
年収 330~1000万円
将来性 高い/国家資格のため電気設備ごとに主任技術者を選任する義務がある
資格メリット 就職・転職で有利になる
業務の幅が広がる

どのような資格か? 電験二種は発電所や工場などの保安監督に必要な国家資格

電験二種(第二種電気主任技術者)は、事業用電気工作物の工事や保守、運用についての保安監督業務を行うのに必要な国家資格です。

電気工作物とは、たとえば以下のような電気設備のことを指します。

  • 発電所、変電所
  • 送配電線路
  • 工場、ビル、住宅などの受電設備
  • 屋内配線
  • 電気使用設備

電気工作物の種類と必要な資格の概要(電気技術者試験センター)

電験二種で扱える事業用電気工作物とは、一般住宅や小型店舗の受電設備など(一般電気工作物)を除いた電気工作物のことです。上記の例でいえば発電所や工場、ビルなどが該当します。

これらの所有者は電気事業法にもとづき、設備の保安監督役として主任技術者を選任しなければなりません。電気主任技術者資格は、扱える設備の電圧に応じて第一種から第三種まで段階があり、第二種(電験二種)を持っている人は17万ボルト未満のものを取り扱えます。

資格取得のメリット 電験二種を取得するメリット・将来性

転職や就職で有利になる

電験二種は社会や企業からの需要・評価が高い国家資格ですので、取得すれば特定業界の就職や転職に有利になります。

発電所や工場など人々の生活に欠かせない電気設備では、それぞれについて保安監督をつとめる主任技術者を選ぶ必要があります。これらは日本全国のいたるところに存在するため、その数だけ電験二種所持者が求められているのです。

ある求人サイトで電験二種が必須条件の求人を検索すると8,000件以上ヒットするなど、実際に求人数も豊富です。とくに前任者が突然退職したり管理する電気設備数が多かったりする企業では強い需要があると予想されるため、好条件で採用してもらいやすいでしょう。

業務の幅を広げられる

電験二種を取得すると、電験三種しか持っていない場合と比べて業務の幅を広げられます。電験二種を持っている場合と、電験三種では扱えなかった電圧5万ボルト以上の事業用電気工作物を対象に保安監督業務を行うことが可能だからです。

17万ボルト以上の事業用電気工作物については電験二種では対応できず、電験一種所持者しか取り扱いができません。しかし、この条件に該当する施設は一部の大型の発電所や超高圧変電所が中心です。

主要な事業用電気工作物の多くは電験二種で扱えるので、広い範囲の業務に対応できます。

第一種電気工事士および認定電気工事従事者を取得しやすくなる

電験二種を取得すると、第一種電気工事士を比較的簡単に取得できるようになります。

第一種電気工事士とは、500kW未満の自家用電気工作物および一般電気工作物を対象とした電気工事の実施に必要な資格です。
本来であれば取得には筆記試験及び技能試験が課せられますが、電気主任技術者を持っていると以下のように試験が免除されます。

  1. 実務経験(※)が5年以上ある場合:筆記試験および技能試験の免除
  2. 実務経験(※)が5年未満の場合:筆記試験の免除

電験二種を所持している場合、上記のように5年以上の実務経験のみ、もしくは技能試験だけ合格すれば取得可能です。第一種電気工事士の受験を検討している人は、電験二種を先に取得することで効率よく試験合格を目指せます。

また、電験二種を持っていると、3年以上の実務経験があれば認定電気工事従事者の認定を受けられます。6時間におよぶ認定講習を受講せずに認定証がもらえるため、試験に合格した場合は忘れずに申請しておきましょう。

年収について 電験二種が対象の求人情報の例

電験二種以上の所持が必須である求人としては、下記の例が挙げられます。

【A社】

給与 500~900万円
業務内容 自社保有物件の管理業務
応募資格 第一種もしくは第二種電気主任技術者、大型オフィスビルを対象とした所長としての管理業務や保守業務の従事経験

【B社】

給与 490~800万円
業務内容 バイオマス発電所の保全技術スタッフ
応募資格 第二種電気主任技術者、機械系や電気・計装系の知識、プラント設計や施工管理業務の経験
※歓迎条件:ボイラータービン主任技術者、エネルギー管理士、公害防止管理技術者、第一種電気主任技術者

電験二種以上だけでなく、電験三種の所持者も対象に含まれる求人例は以下の通りです。

【C社】

給与 300~500万円
業務内容 高圧受変電設備の保守点検業務
応募資格 第三種電気主任技術者、普通自動車免許、電気設備の保守点検業務の経験(5年以上)

【D社】

給与 400~700万円
業務内容 工場敷地内にある電気設備の管理業務
応募資格 第三種以上の電気主任技術者
※歓迎条件:第二種以上の電気主任技術者

募集内容で提示されている年収の最低額・最高額は、いずれも電験二種が必須条件である求人のほうが高い傾向にあります。少しでも年収を上げたいのであれば電験二種を取得して損はありません。

年収アップを実現するためのポイント

電験二種を活用して年収アップをするためには、以下の3つのポイントを意識するのがよいでしょう。

  1. 電験二種以上が必須の保安監督業務をこなすこと
  2. 転職すること
  3. 第一種電気工事士を取得すること

電験三種では電圧5万ボルト未満まででしたが、電験二種では17万ボルト未満の事業用電気工作物まで取り扱うことが可能です。5万ボルト以上の設備を対象とした業務の経験を積むことで電験三種しか持っていない人と差別化を図り、社内外で重宝される人材を目指しましょう。

技事業用電気工作物に対する主任技術者の選任は法令で定められた義務ですので、本記事で紹介したように電験二種保持者が対象の求人は数多くあります。

企業や組織からの需要が高いため、これらの求人は年収500万円以上、最高額では800万円を超えるものも珍しくありません。現在よりも良い雇用条件の求人先が見つかれば、転職によって年収アップが期待できます。

また、上記の対策に加えて第一種電気工事士を取得するのも効果的です。第一種電気工事士は電気主任技術者を持っていると試験が一部または全部免除されます。

第一種電気工事士を取得しておけば事業用電気工作物だけでなく一般電気工作物の工事にも関われますので、業務の幅を広げたり転職時にアピールをしたりするときに有効です。

将来性について 電験二種は保安監督業務に必須で将来性のある国家資格

電圧5万ボルト以上の事業用電気工作物では、電験二種以上を持っている人しか保安監督業務につけません。保安監督役の主任技術者は必ず選ばなければならないので、高電圧の設備まで対応できる電験二種は将来性のある国家資格といえます。

電験二種が対象とする事業用電気工作物には、発電所や工場、ビルなど社会にとって欠かせない設備が多く含まれます。これらの設備が将来まったく使われなくなるとは考えにくいため、よほど大きな技術革新や生活文化の変化がない限り安定した需要が見込めるでしょう。

仕事内容について 代表的な仕事は5つあります。

仕事
01

事業用電気工作物の維持・管理

発電所や変電所、工場などの事業用電気工作物について、維持・管理を行う業務です。
年次点検をはじめとする定期的な保守作業だけではなく、設備更新や改修の計画作りも担うことがあります。また、これらの作業を行うときには見積りの作成も業務に含まれます。

仕事
02

事業用電気工作物の運転管理

定期点検などの保守作業のほかには、運転管理も電験二種所持者の主な業務として挙げられます。
運転管理についての計画を立てたりその計画を実行・評価したりして、滞りなく対象設備を運用する業務です。

仕事
03

課題に対する技術検討やトラブル対応

事業用電気工作物に対する知識や保守作業の業務経験を活かし、技術検討やトラブル対応を行います。
トラブルが発生したときに緊急対応を行ったり、技術的な課題に対する検討を実施してその結果を報告資料にまとめたりする業務です。

仕事
04

協力会社や社内の関連部門との調整

発電所や工場などの運転や保守を行うには、工事やメンテナンスを業者等に依頼する必要があるため、協力会社や社内の関連部門との連携が重要です。
こうした関係各所への連絡や日程調整、工事内容のすり合わせなどを行うのも電験二種所持者の業務に含まれます。
設備所有者と話し合いの場を設け、契約内容についての調整を行うこともあります。

仕事
05

作業員の教育・管理

事業用電気工作物の運用には、自社・協力会社問わず多くの作業員がかかわってきます。
スムーズかつ安全上問題ないように作業を進めるため、設備の保安監督としての立場から工事や点検内容の管理、作業員の教育を含む指導を行います。

2つのケースを紹介 電験二種取得者の1日の仕事の流れ

CASE1電気設備の点検、施工管理業務

7:50 出勤
8:00 朝礼
8:30 事務作業
※必要に応じて電気設備の点検を実施
12:00 休憩、昼食
13:00 事務作業
※必要に応じて電気設備の点検を実施
17:30 退勤

CASE2太陽光発電設備の導入・設置工事、施工管理業務

7:30 出勤
8:30 現場到着
8:50 太陽光発電設備の設置および施工管理
12:30 休憩、昼食
13:30 太陽光発電設備の設置および施工管理
※適宜休憩
17:50 作業終了、現場からの引き上げ
18:20 帰宅

電験二種の取得者の業務内容は、電気設備の点検や設置工事など作業員として実際に手を動かす業務、施工管理のようにこれらを監督する業務に大別されます。

保安監督業務についてはオフィスワークが中心で現場に行く頻度が低い場合もあり、企業によっては緊急時対応を除いてリモートワークの導入を進めています。