木材を直線に切断できる丸のこは、建設業やDIYなどに幅広く利用されている工具です。
しかし、丸のこはキックバック現象による事故のリスクがあります。
過去に労働災害が何件も起きているため、丸のこを使用する作業に従事する方は「丸のこ等取扱い作業従事者教育」の受講が必要です。
ここでは、丸のこの概要、キックバック現象の原因や労働災害の事例、丸のこ等取扱い作業従事者教育について解説します。
目次
そもそも「丸のこ」とは?
「丸のこ」とは、円形の「のこ歯」を高速回転させ、木材の切断や加工を行う工具のことです。
丸のこを使用して木材を切断すると、切り口がきれいな平面になるのが特長です。スピーディーに木材を加工できるため、DIYに加え、建設業などの幅広い業種でも活用されています。
なお、歯の種類を使い分けることで、コンクリートや金属、レンガの切断も可能です。
丸のこの危険性と事故事例
丸のこは木材を簡単に切断できる反面、取扱いを誤ると怪我をする危険性があります。ここでは、丸のこの誤操作によるキックバック現象や、丸のこが原因の事故事例を解説します。
丸のこの誤操作で発生する「キックバック現象」とは?
丸のこは切断能力に優れていますが、正しく扱わないと「キックバック現象」が起こります。
キックバック現象とは、のこ歯が木材に挟まることで摩擦抵抗による反発力が生じ、のこ歯が進行方向と逆方向に飛ぶ現象です。
キックバック現象が発生する原因として、以下が挙げられます。
No. | キックバック現象が起きる原因 |
---|---|
1 | 反りのある木材を切断する |
2 | 乾燥していない木材を切断する |
3 | 堅い木材や厚い木材を切断する |
4 | 切断が進んで木材がたわみ、木材がのこ歯を圧迫する |
5 | 丸のこを保持する力が不十分、または強く押しすぎてのこ歯が傾く |
6 | 丸のこと木材の間に異物があり、丸のこと木材が密着していない |
キックバック現象の反発力は大きく、丸のこが飛ぶ力を手で押さえきれないことも少なくありません。丸のこの本体を保持できない場合、のこ歯が飛んで怪我をする危険性があります。
また、丸のこの本体だけでなく、切断中の木材が吹き飛んで体に当たるケースもあるのです。
丸のこが原因で起こった労働災害の例
丸のこが原因で起こった過去の労働災害の発生状況と、原因を紹介します。
丸のこが原因の労働災害 | ||
---|---|---|
No. | 労働災害の発生状況 | 原因 |
1 | 手に持った角材を携帯用丸のこで加工中、反発したのこ歯に当たって死亡 |
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2 | 角材を切断中に丸のこが突然反発、太ももを切断し出血多量で死亡 |
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3 | 木工用のこ歯でアルミ板を2枚切断する際、のこ歯に接触し死亡 |
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4 | 急遽切り株を削る作業が必要になり、携帯用丸のこで作業したところ切創を負い死亡 |
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丸のこによる労働災害の多くは、キックバック現象、安全カバーをつけずに作業する、作業指示が不明確、不安定な作業姿勢、安全衛生教育の未実施などが原因となっています。
丸のこを取扱う作業者が知識不足の場合、労働災害が発生するリスクが高まります。
丸のこ等取扱い作業従事者教育の基本情報
丸のこ等取扱い作業従事者教育の概要や、対象になる丸のこの種類、カリキュラムの内容を解説します。
丸のこ等取扱い作業従事者教育とは?
労働災害の例で紹介したように、誤った方法で丸のこを使用すると、重大な事故を招きます。丸のこで安全に作業するには、丸のこに関する知識や正しい使用方法を習得しなければなりません。
そのため、丸のこを使用する作業従事者は、業種を問わず、丸のこ等取扱い作業従事者教育の受講が求められます。
丸のこ等取扱い作業従事者教育のカリキュラム
丸のこ等取扱い作業従事者教育は労働災害防止を目的に、丸のこの使用方法や点検方法、整備など幅広い知識を学びます。
カリキュラムは学科と実技があり、具体的には以下の内容を受講します。
丸のこ等取扱い作業従事者教育のカリキュラム | |||
---|---|---|---|
学科 | 科目 | 内容 | 時間 |
丸のこ等に関する知識 |
| 30分 | |
丸のこ等を使用する作業に関する知識 |
| 1.5時間 | |
丸のこ等の点検・修理及び整備に関する知識 |
| 30分 | |
安全な作業方法に関する知識 |
| 30分 | |
関係法令等 |
| 30分 | |
実技 | 丸のこ等の正しい取扱い方法 |
| 30分 |
合計 | 4時間 |
出典:建設業労働災害防止協会
丸のこ等取扱い作業従事者教育の受講方法
丸のこ等取扱い作業従事者教育を受講する方法は、講習会と通信講座の2種類です。ここではそれぞれの概要を解説します。
講習会に参加する
丸のこ等取扱い作業従事者教育の講習会は、安全衛生教育などを実施する教育機関や、建設機械の教習所などで開催されています。
講習会に参加するメリットは、学科と実技を1日で受講できることです。講習時間は4時間で、半日ほどでカリキュラムを修了できます。また、講習会によっては、その場で修了証が交付される場合もあります。
なお、丸のこ等取扱い作業従事者教育の講習会の受講費用は、8,000円程度が相場です。
Web講座で受講する
丸のこ等取扱い作業従事者教育は、Web講座でも受講できます。
Web講座では、学科をオンラインで受講し、実技を事業場で受講する方法が一般的です。実技では、経験者を実技実施責任者として選任したうえで、対面で丸のこを操作します。
丸のこ等取扱い作業従事者教育のWeb講座は、動画を視聴して学習するシステムが多く、一般的な資格のWeb講座とほぼ同じ環境で受講が可能です。
ただし、スマートフォンだけで受講できる場合や、パソコンやタブレットが必須の場合など、協会によって対応デバイスが異なるため注意しましょう。
講習会のスケジュールが合わない方や、まとまった時間がとれない方は、Web講座を上手に活用しましょう。
丸のこ等取扱い作業従事者教育を受けなかった場合、罰則はある?
丸のこ等取扱い作業従事者教育を受講しないまま、業務上で丸のこを操作した場合、作業者に対する罰則はあるのでしょうか?
結論からいうと、丸のこ等取扱い作業従事者教育は、厚生労働省の通達による「特別教育に準じた教育」であり、特別教育のような罰則規定はありません。
特別教育とは、厚生労働省令で定める危険、有害な業務の労働者に対し、事業者が受講させる義務がある教育のことです。
特別教育を受講していない労働者を従事させた場合、事業者に対し6ヶ月以下の懲役、または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
ただし、特別教育の罰則はあくまでも事業者が対象であり、労働者には適用されません。
労働者に罰則がないとはいえ、丸のこによる死亡事故は数多く起きています。
丸のこを取扱う作業に従事する場合は、丸のこ等取扱い作業従事者教育を必ず受講しましょう。
SATの丸のこ等取扱い作業従事者教育
先ほど、Web講座を受講すると場所や時間を問わずに学習できることをお話ししました。
ここでは、Web講座の1つである「SAT」のWeb講座を例に解説します。
テキストと動画講義
SATのWeb講座で使用されているテキストは、図や表を用いて丁寧に解説されているため、非常にわかりやすいのが特徴です。
動画講義においては、学科合計4時間30分の内容が項目ごとにわけて実施されるため、効率的に知識を身につけられるでしょう。労働安全コンサルタントが講師を務めており、現場出身者だからこその実践的な知識を学べるのが特長です。
収録済みの動画のため、インターネットの環境があれば時間帯に関係なくいつでもどこでも受講できます。
そしてSATの講座の場合は、端末のカメラを使い受講者の受講状況を確認しているため、カメラ付きの端末であれば、スマートフォン・タブレット・PCどの端末でも受講可能です。PCにカメラがない場合は、外付けのWebカメラでもご利用いただけます。
また、スマホやパソコンで視聴可能なのもメリットの1つです。昼夜場所を問わず好きな場面で学習を進められます。
申込後すぐに受講可能で、時間に関係なく視聴できる動画講義を活用して、丸のこに関する必要な知識を身につけましょう。
実技に参考資料がある
先ほど解説した通り、丸のこ等取扱い作業従事者教育には実技科目があり、実技に関してはオンラインではなく実技実施指導責任者のもとで対面で行う必要があります。
実技を事業場で実施する際も、SATの参考資料をもとにすればスムーズに進められます。参考資料には、事前に準備するものや点検方法、整備方法などがまとめられているため便利です。
修了証明書の作成ついて
SATのWeb講座を受講し、作成依頼用の情報を送付すると、事業所で保管する用の「受講証明書」と受講者自身が携帯する用の「教育修了証」が代行で作成されます。
これらの証明書の代行作成手数料は、全て講座料金に含まれるため、追加での支払いはありません。
修了証や証明書は、後日送付されます。特別教育のカリキュラムの全課程を修了した証となるため、紛失しないように管理しましょう。
またスマートフォン版のアプリの修了証明書も発行しています。こちらは特別教育が修了した際にすぐに発行されて、実際の現場使用することができます。もちろんアプリ版修了証も労働局から確認を得ています。
丸のこの事故を防ぐためには、丸のこ等取扱い作業従事者教育の受講が必須!
木材を直線に切断できる丸のこは、切断能力が高い反面、キックバック現象など危険性が高い工具です。安全衛生教育を受けていないと、死亡事故につながることもあるため、丸のこ等取扱い作業従事者教育の重要性は高いといえるでしょう。
丸のこ等取扱い作業従事者教育は、講習会に参加するほかに、通信講座でも受講が可能です。SATのWeb講座はスマートフォンで受講でき、プロの講師によるわかりやすい解説動画で学習できます。実技もスムーズに実施できるため、講習会に参加する以外の方法として活用しましょう。