アーク溶接等特別教育

アーク溶接の仕事に資格は必要?特別教育の重要性と、関連の民間資格について解説

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アーク溶接は、金属同士を接合する溶接方法の一つです。アーク溶接は製造業をはじめとする、さまざまな職種で用いられています。アーク溶接の仕事に就く場合、資格が必要なのか、気になる方も多いでしょう。

今回は、アーク溶接の概要を踏まえ、アーク溶接に必要な特別教育、民間資格について解説します。

アーク溶接とは?

溶接とは、熱で物質を溶かして結合させる技術のことで、融接、圧接、ろう接の3種類に分類されます。アーク溶接はアーク放電による熱を利用し、母材と溶接棒を溶かして接合する「融接」に該当します。アーク溶接は、数ある溶接方法のなかで最も一般的な方法です。

なお、アーク溶接は溶接棒が溶ける消耗電極式、溶接棒が溶けない非消耗電極式に分類されます。消耗電極式には、被覆アーク溶接、マグ溶接、ミグ溶接など、さまざまな溶接方法が存在します。また、非消耗電極式にはティグ溶接、プラズマアーク溶接といった種類があり、溶接方法によって細分化されているのが特徴です。

アーク溶接は、鉄工所、自動車工場、造船所、建設現場など、さまざまな場所で広く活用されています。

アーク溶接の資格「アーク溶接等特別教育」とは?

業務でアーク溶接の作業をするには「アーク溶接等特別教育」の受講が必要です。ここからは、アーク溶接等特別教育の必要性と、受講内容について説明します。

アーク溶接に特別教育が必要な理由と事故事例

アーク溶接の業務に携わるには、アーク溶接等特別教育の受講が必要です。一般的に「アーク溶接作業者」と呼ばれている資格は、この特別教育のことを指します。

アーク溶接の業務に特別教育が必要な理由は、アーク溶接が労働安全衛生法に定められた、危険・有害な業務に該当するためです。アーク溶接による労働災害としては、感電、光による眼炎、皮膚の火傷、可燃物への引火爆発などが挙げられます。

実際のアーク溶接で起きた、労働災害の事故事例をいくつか紹介します。

アーク溶接による労働災害の事例
No.事故内容事故原因
1感電により死亡 狭い場所で水配管を溶接していたところ、溶接棒が作業員の左大腿部に触れて感電。汗で作業服が濡れており、電気抵抗が低下していたこと、突然の作業で監督者不在だったことも要因。
2火傷により死亡 作業中に火花が作業員のズボンの裾に引火、燃え広がったことで、火傷を負い死亡。作業服が燃えやすい素材だったこと、裾を地下足袋に入れていなかったことが原因。
3火傷により死亡アーク溶接の火玉が下のドラム缶に落ちて内容物が炎上。さらに作業服に引火し、作業員が全身火傷で死亡。可燃物の上で溶接作業をしていたことが原因。
4火傷溶接用コードで燃料油入りポリタンクが倒れ、燃料が流出したところに火花が引火して、作業員が火傷。ポリタンクの置き場所、フタの閉め忘れ、特別教育の未受講が原因。

このように、アーク溶接から発する火花は、さまざまな労働災害を招きます。なかには、特別教育を受講しなかったことで事故が発生した事例もあります。アーク溶接等特別教育は、アーク溶接による労働災害を防ぐ知識を身につける重要なものであることを心得ておきましょう。

アーク溶接等特別教育の受講内容

アーク溶接等特別教育では学科と実技の科目があり、以下の内容を受講します。

アーク溶接等特別教育の受講内容
区分講習科目時間
学 科アーク溶接等に関する基礎知識1時間
アーク溶接装置に関する基礎知識3時間
アーク溶接等の作業の方法に関する基礎知識6時間
関係法令1時間
実 技アーク溶接装置の取り扱い及びアーク溶接等の作業の方法についての実技教育10時間

出典:一般社団法人 東京技能講習協会

なお、アーク溶接等特別教育は、満18歳以上であれば誰でも受講できます。さらに、資格の有効期限や更新もないため、一生ものの資格となります。

アーク溶接関連の民間資格

アーク溶接等特別教育とは別に、アーク溶接の技術を証明する民間資格もあります。アーク溶接等特別教育は未経験でも受講できるため、実務経験を積んでから民間資格に挑戦してもよいでしょう。そこで、代表的なアーク溶接の民間資格について解説します。

溶接技能者

溶接技能者は、日本溶接協会による民間資格です。JIS、WESなどの国内規格に基づき、学科試験、実技試験で溶接のスキルを評価します。

JIS、WES規格によるアーク溶接の溶接技能者資格は、溶接方法・使用材料で以下のように適用規格が変わります。

溶接技能者の資格(アーク溶接)
資格の名称対象材料溶接方法適用規格
手溶接
(アーク溶接)
炭素鋼被覆アーク溶接JIS Z 3801:手溶接技術検定における試験方法及び判定基準
WES 8201:手溶接技能者の資格認証基準
ティグ溶接
ティグ溶接と被覆アーク溶接との組合せ
手溶接
(ガス溶接)
炭素鋼ガス溶接
半自動溶接炭素鋼マグ溶接JIS Z 3841:半自動溶接技術検定における試験方法及び判定基準
WES 8241:半自動溶接技能者の資格認証基準
ティグ溶接とマグ溶接との組合せ
セルフシールドアーク溶接
ステンレス鋼溶接ステンレス鋼被覆アーク溶接JIS Z 3821:ステンレス鋼溶接技術検定における試験方法及び判定基準
WES 8221:ステンレス鋼溶接技能者の資格認証基準
ティグ溶接
ティグ溶接と被覆アーク溶接との組合せ
ミグ溶接又はマグ溶接
チタン溶接チタン
チタン合金
ティグ溶接JIS Z 3805:チタン溶接技術検定における試験方法及び判定基準
WES 8205:チタン溶接技能者の資格認証基準
ミグ溶接
プラスチック溶接塩化ビニル
ポリエチレン
ポリプロピレン
ホットジェット溶接JIS Z 3831:プラスチック溶接技術検定における試験方法及び判定基準
WES 8231:プラスチック溶接技能者の資格認証基準
銀ろう付ステンレス鋼
炭素鋼
銀ろう付JIS Z 3891:銀ろう付技術検定における試験方法及び判定基準
WES 8291: 銀ろう付技能者の資格認証基準
すみ肉溶接炭素鋼被覆アーク溶接WES 8101:2017 すみ肉溶接技能者の資格認証基準
マグ溶接
石油工業溶接高張力鋼
耐熱鋼
ステンレス鋼
被覆アーク溶接WES 8102:溶接士技量検定基準(石油工業関係)
JPI-7S-31-2007:溶接士技量検定基準(石油工業関係)
ティグ溶接
ティグ溶接と被覆アーク溶接との組合せ
基礎杭溶接炭素鋼管被覆アーク溶接WES 8106:基礎杭溶接技能者の資格認証基準
マグ溶接
セルフシールドアーク溶接

出典:日本溶接協会

試験は、下向姿勢の基本級、立向・横向・上向姿勢の専門級に分類されます。さらに試験材料の厚み、溶接方法の組み合わせで、資格が細分化されています。溶接の技術で試験の難易度が変わるため、溶接のスキルアップに役立つ資格といえるでしょう。

また、溶接技能者に合格すると、「適格証明書」が交付されます。適格証明書を取得すると、溶接業務に従事したことを確認するサーベイランス(書類審査)を1年ごとに実施します。サーベイランスを3回実施することで、適格証明書が3年間有効になる仕組みです。

さらに、取得から3年後の更新時には、実技試験による再評価試験を行います。再評価試験に合格すると、適格証明書の有効期限が延長されます。

これらの手続きは、資格に見合った技量を維持できているかをチェックするためのものです。資格を取得すれば終わり、というわけではない点に注意しましょう。

溶接作業指導者

溶接作業指導者とは、溶接技能者としての技術向上を図るとともに、溶接現場の指導・管理を担うためのスキルを学ぶ資格です。

3日の講義と試験で資格が取得できるため、試験の難易度は低く、ほぼ合格するといわれています。指導できるレベルの溶接スキルの証明になるうえに、作業者から指導者へのキャリアアップに役立つでしょう。

溶接作業指導者を取得するには、溶接技能者資格を所定の年数保有しており、かつ所定の実務経験年数を満たしていることが必須です。また、資格の有効期限は3年間で、3年ごとのサーベイランス、9年目に再認証申請が必要です。

溶接管理技術者

溶接管理技術者とは、溶接施工にともなう作業、工程の統括的な計画といった施工管理の職務能力を持つ技術者のことです。日本溶接協会では、溶接管理技術者を溶接作業指導者の上位資格と位置づけています。

技術者の知識や職務能力により、特別級、1級、2級とレベル分けされています。試験内容は1級と2級で筆記試験・口述試験を1つずつ、特別級は2つの筆記試験と口述試験を実施します。2級の合格率は50%程度、1級は30%程度です。試験に必要な知識は、日本溶接協会が実施する研修会に参加することで得ることも可能です。

なお、溶接管理技術者を受験するにあたり、学歴と職務経験年数の条件を満たす必要があります。2級は、7年の職務経験があれば受験可能ですが、1級以上は理工系や工業系の学歴が必要です。

溶接管理技術者は、特に建設業界で重宝される資格です。建設業界以外では、造船、橋梁、化学プラント、ボイラー、エネルギー関連施設といった生産技術の分野でも重宝されます。

また、公共工事の発注には溶接管理技術者の常駐が必須で、公共工事を手がける会社にとって必要な人材です。資格が転職で有利に働くため、溶接技術者のキャリアアップとして取得することをおすすめします。

アーク溶接の資格は、特別教育と民間の資格が存在する

アーク溶接はアーク放電を活用した技術で、一般的な溶接方法として広く用いられています。
アーク溶接は火災や感電などの危険をともなう業務であるため、アーク溶接等特別教育を受講して、正しい作業方法や基本的な知識を習得する必要があります。

また特別教育のほかにも、アーク溶接関連の民間資格は存在します。これらは専門的な技術を証明する資格であるため、ある程度経験を積んでから受験するとよいでしょう。キャリアアップのためには、溶接作業指導者・溶接管理技術者などの資格を目指すのもおすすめです。

アーク溶接はさまざまな場面や分野で活用できる技術です。業務で得た知識やスキルを資格で証明し、自らのキャリアアップに役立ててください。

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