アーク溶接の仕事に就く場合、資格が必要なのか、無資格でも仕事ができるのかが気になる方も多いでしょう。
結論から言うと、業務としてアーク溶接を行う場合は、労働安全衛生法により「特別教育」の修了が義務付けられています。なお、2024年の制度改正により、一定の高リスク作業に対応するための「技能講習」が新設されました。
一方で、趣味やDIYで行う場合には資格は不要ですが、火傷や感電のリスクを伴うため知識は不可欠です。本記事では、アーク溶接の基本から、2024年にスタートした最新の資格体系、費用、オンライン受講のメリットまで、初心者にもわかりやすく解説します。
目次
アーク溶接とは?

溶接とは、熱で物質を溶かして結合させる技術のことで、融接、圧接、ろう接の3種類に分類されます。アーク溶接はアーク放電による熱を利用し、母材と溶接棒を溶かして接合する「融接」に該当します。
アーク溶接は、数ある溶接方法のなかで最も一般的な方法です。
アーク溶接は、鉄工所、自動車工場、造船所、建設現場など、さまざまな場所で広く活用されています。
アーク溶接の資格「アーク溶接等特別教育」とは?
冒頭で述べた通り、業務でアーク溶接の作業をするには「アーク溶接等特別教育」の受講が必要です。
ここからは、アーク溶接等特別教育の必要性と、受講内容について説明します。
アーク溶接に特別教育が必要な理由と事故事例
アーク溶接の業務に従事するためには、アーク溶接等特別教育の受講が必要です。一般的に「アーク溶接作業者」と呼ばれている資格は、この特別教育のことを指します。
アーク溶接の業務に特別教育が必要な理由は、アーク溶接が労働安全衛生法に定められた、危険・有害な業務に該当するためです。アーク溶接による労働災害としては、感電、光による眼炎、皮膚の火傷、可燃物への引火爆発などが挙げられます。
実際のアーク溶接で起きた、労働災害の事故事例をいくつか紹介します。
| No. | 事故内容 | 事故原因 |
| 1 | 感電により死亡 | 狭い場所で水配管を溶接していたところ、溶接棒が作業員の左大腿部に触れて感電。汗で作業服が濡れており、電気抵抗が低下していたこと、突然の作業で監督者不在だったことも要因。 |
| 2 | 火傷により死亡 | 作業中に火花が作業員のズボンの裾に引火、燃え広がったことで、火傷を負い死亡。作業服が燃えやすい素材だったこと、裾を地下足袋に入れていなかったことが原因。 |
| 3 | 火傷により死亡 | アーク溶接の火玉が下のドラム缶に落ちて内容物が炎上。さらに作業服に引火し、作業員が全身火傷で死亡。可燃物の上で溶接作業をしていたことが原因。 |
| 4 | 火傷 | 溶接用コードで燃料油入りポリタンクが倒れ、燃料が流出したところに火花が引火して、作業員が火傷。ポリタンクの置き場所、フタの閉め忘れ、特別教育の未受講が原因。 |
このように、アーク溶接から発する火花は、さまざまな労働災害を招きます。
中には、特別教育を受講しなかったことで事故が発生した事例もあります。アーク溶接等特別教育は、アーク溶接による労働災害を防ぐ知識を身につける重要なものであることを心得ておきましょう。
アーク溶接等特別教育の受講内容
アーク溶接等特別教育では学科と実技の科目があり、以下の内容を受講します。
| 区分 | 講習科目 | 時間 |
| 学 科 | アーク溶接等に関する基礎知識 | 1時間 |
| アーク溶接装置に関する基礎知識 | 3時間 | |
| アーク溶接等の作業の方法に関する基礎知識 | 6時間 | |
| 関係法令 | 1時間 | |
| 実 技 | アーク溶接装置の取り扱い及びアーク溶接等の作業の方法についての実技教育 | 10時間 |

なお、アーク溶接等特別教育は、満18歳以上であれば誰でも受講できます。資格の有効期限や更新もないため、一生ものの資格となります。
アーク溶接等特別教育の受講費用
アーク溶接等特別教育の受講費用は、受講場所や方法によって異なりますが、一般的には15,000円〜20,000円程度が目安です。
内訳には受講料のほか、テキスト代が含まれます。企業単位で申し込む場合や、オンライン受講を選択することで、交通費や宿泊費を抑え、コストパフォーマンス良く取得できます。
アーク溶接等特別教育の受講方法

アーク溶接等特別教育を受講するために最も一般的な方法は、全国で開催されている講習を受講することです。
ただし、講習会は毎日開催されているわけではありません。多いところでも月に1回〜2回程度です。講習期間によっては年に1回〜2回の場合もあります。
そこでおすすめなのが、Webを使った受講方法です。
Webで受講する場合、インターネットに接続できる場所があればどこからでも受講が可能です。受講の際にはPCやスマートフォン、タブレット端末を使用します。
ただし、実技科目に関しては対面で行う必要があります。とはいえ、11時間以上も受講する学科科目だけでもオンラインで受講できるメリットは大きいでしょう。
アーク溶接の資格「アーク溶接等特別教育」と「技能講習」の違い
2024年の法改正に伴い、アーク溶接の資格体系には大きな変化がありました。これまでの「特別教育」に加えて、より専門性の高い「技能講習」が新設されたため、その違いを理解しておく必要があります。
違い①:取得難易度
特別教育は、各事業主や講習機関が実施する教育であり、試験の難易度は高くありません。一方、新設された「技能講習」は、都道府県労働局長登録教習機関が実施するもので、修了試験への合格が必須となります。講習時間も特別教育より長く設定されており、より高度な安全知識が求められます。
違い②:取得後にできること
最大の違いは、従事できる作業の範囲と責任の重さです。
- 特別教育:一般的なアーク溶接作業に従事できます。
- 技能講習:2024年の法改正(特化則)により、屋内の作業場でアーク溶接を行う際に、現場を管理する「金属アーク溶接等作業主任者」を選任するために必要となります。
これまでは特別教育のみでカバーされていた領域の一部が、より上位の「技能講習」として再編された形です。
2024年新設のアーク溶接作業に係る技能講習の概要
2024年4月より、溶接ヒュームによる健康障害防止措置の強化等を背景に、「金属アーク溶接等作業主任者限定技能講習(アーク溶接技能講習)」が新たにスタートしました。これは溶接作業者の安全レベルを底上げするための制度です。
アーク溶接技能講習の受験科目や難易度
技能講習では、アーク溶接の基本操作に加え、最新の化学物質(溶接ヒューム)への対策や、より専門的な設備管理についての学科・実技が行われます。
学科試験では関係法令や構造に関する知識が問われますが、講習をしっかりと聴講していれば合格できる難易度です。ただし、これまでの特別教育と比較して、「溶接ヒュームの有害性」や「換気設備の点検」といった健康リスク管理に関する項目が重視されているのが特徴です。
アーク溶接技能講習の受講方法について
受講は、都道府県労働局に登録された教習機関で行う必要があります。2024年の制度開始以降、各地域の技能講習センターなどで順次開催されています。
受講を検討する際は、その講習が「特別教育」なのか「新設された技能講習」なのか、自分の業務に必要なのはどちらかを事前に会社や発注元に確認することが重要です。
アーク溶接関連の民間資格

アーク溶接等特別教育とは別に、アーク溶接の技術を証明する民間資格もあります。
アーク溶接等特別教育は未経験でも受講できるため、実務経験を積んでから民間資格に挑戦してもよいでしょう。そこで、代表的なアーク溶接の民間資格について解説します。
溶接技能者
溶接技能者は、日本溶接協会による民間資格です。JIS、WESなどの国内規格に基づき、学科試験、実技試験で溶接のスキルを評価します。
JIS、WES規格によるアーク溶接の溶接技能者資格は、溶接方法・使用材料で以下のように適用規格が変わります。
| 資格の名称 | 対象材料 | 溶接方法 | 適用規格 |
| 手溶接 (アーク溶接) |
炭素鋼 | 被覆アーク溶接 | JIS Z 3801:手溶接技術検定における試験方法及び判定基準 WES 8201:手溶接技能者の資格認証基準 |
| ティグ溶接 | |||
| ティグ溶接と被覆アーク溶接との組合せ | |||
| 手溶接 (ガス溶接) |
炭素鋼 | ガス溶接 | |
| 半自動溶接 | 炭素鋼 | マグ溶接 | JIS Z 3841:半自動溶接技術検定における試験方法及び判定基準 WES 8241:半自動溶接技能者の資格認証基準 |
| ティグ溶接とマグ溶接との組合せ | |||
| セルフシールドアーク溶接 | |||
| ステンレス鋼溶接 | ステンレス鋼 | 被覆アーク溶接 | JIS Z 3821:ステンレス鋼溶接技術検定における試験方法及び判定基準 WES 8221:ステンレス鋼溶接技能者の資格認証基準 |
| ティグ溶接 | |||
| ティグ溶接と被覆アーク溶接との組合せ | |||
| ミグ溶接又はマグ溶接 | |||
| チタン溶接 | チタン チタン合金 |
ティグ溶接 | JIS Z 3805:チタン溶接技術検定における試験方法及び判定基準 WES 8205:チタン溶接技能者の資格認証基準 |
| ミグ溶接 | |||
| プラスチック溶接 | 塩化ビニル ポリエチレン ポリプロピレン |
ホットジェット溶接 | JIS Z 3831:プラスチック溶接技術検定における試験方法及び判定基準 WES 8231:プラスチック溶接技能者の資格認証基準 |
| 銀ろう付 | ステンレス鋼 炭素鋼 |
銀ろう付 | JIS Z 3891:銀ろう付技術検定における試験方法及び判定基準 WES 8291: 銀ろう付技能者の資格認証基準 |
| すみ肉溶接 | 炭素鋼 | 被覆アーク溶接 | WES 8101:2017 すみ肉溶接技能者の資格認証基準 |
| マグ溶接 | |||
| 石油工業溶接 | 高張力鋼 耐熱鋼 ステンレス鋼 |
被覆アーク溶接 | WES 8102:溶接士技量検定基準(石油工業関係) JPI-7S-31-2007:溶接士技量検定基準(石油工業関係) |
| ティグ溶接 | |||
| ティグ溶接と被覆アーク溶接との組合せ | |||
| 基礎杭溶接 | 炭素鋼管 | 被覆アーク溶接 | WES 8106:基礎杭溶接技能者の資格認証基準 |
| マグ溶接 | |||
| セルフシールドアーク溶接 | |||
出典:日本溶接協会
試験は、下向姿勢の基本級、立向・横向・上向姿勢の専門級に分類されます。さらに試験材料の厚み、溶接方法の組み合わせで、資格が細分化されています。溶接の技術で試験の難易度が変わるため、溶接のスキルアップに役立つ資格といえるでしょう。
また、溶接技能者に合格すると、「適格証明書」が交付されます。適格証明書を取得すると、溶接業務に従事したことを確認するサーベイランス(書類審査)を1年ごとに実施します。サーベイランスを3回実施することで、適格証明書が3年間有効になる仕組みです。
さらに、取得から3年後の更新時には、実技試験による再評価試験を行います。再評価試験に合格すると、適格証明書の有効期限が延長されます。

これらの手続きは、資格に見合った技量を維持できているかをチェックするためのものです。
「資格を取得すれば終わり」というわけではない点に注意しましょう。
溶接作業指導者
溶接作業指導者とは、溶接技能者としての技術向上を図るとともに、溶接現場の指導・管理を担うためのスキルを学ぶ資格です。
3日の講義と試験で資格が取得できるため、試験の難易度は低く、ほぼ合格するといわれています。指導できるレベルの溶接スキルの証明になるうえに、作業者から指導者へのキャリアアップに役立つでしょう。
溶接作業指導者を取得するには、溶接技能者資格を所定の年数保有しており、かつ所定の実務経験年数を満たしていることが必須です。また、資格の有効期限は3年間で、3年ごとのサーベイランス、9年目に再認証申請が必要です。
溶接管理技術者
溶接管理技術者とは、溶接施工にともなう作業、工程の統括的な計画といった施工管理の職務能力を持つ技術者のことです。
日本溶接協会では、溶接管理技術者を溶接作業指導者の上位資格と位置づけています。
技術者の知識や職務能力により、特別級、1級、2級とレベル分けされています。試験内容は1級と2級で筆記試験・口述試験を1つずつ、特別級は2つの筆記試験と口述試験を実施します。2級の合格率は50%程度、1級は30%程度です。試験に必要な知識は、日本溶接協会が実施する研修会に参加することで得ることも可能です。
なお、溶接管理技術者を受験するにあたり、学歴と職務経験年数の条件を満たす必要があります。2級は、7年の職務経験があれば受験可能ですが、1級以上は理工系や工業系の学歴が必要です。
溶接管理技術者は、特に建設業界で重宝される資格です。建設業界以外では、造船、橋梁、化学プラント、ボイラー、エネルギー関連施設といった生産技術の分野でも重宝されます。
また、公共工事の発注には溶接管理技術者の常駐が必須で、公共工事を手がける会社にとって必要な人材です。

資格が転職で有利に働くため、溶接技術者のキャリアアップとして取得することをおすすめします。
アーク溶接の資格「特別教育」を受講するならオンライン受講がおすすめ
これからアーク溶接の仕事を始める方、あるいは従業員に受講させたい企業様には、SATの「アーク溶接等特別教育」オンライン講座が最適です。
SATのオンライン講座が選ばれる3つのポイント
- 24時間365日いつでも受講可能
仕事の合間や移動時間にスマホ・PCで学科を完了できます。会場へ行く手間や時間を大幅に節約可能です。 - 顔認証による厳格な受講管理
端末のカメラで受講状況を顔認証するため、労働局の基準をクリアした高い信頼性があります。企業様も安心して導入いただけます。 - 修了証はアプリで即日発行
学科修了後、アプリで即座に修了証が発行されます。修了後すぐに資格を証明できるため、急ぎの現場にも対応可能です。
SATのアーク溶接等特別教育は
24時間365日、オンラインでの受講が可能!
-
- スマホまたはPCがあればどこでもかんたんに受講ができる!
- 労働局確認済み!端末のカメラで受講状況をしっかり担保!
- 修了証はスマホアプリで即日自動発行!修了後すぐに受け取れます。
※プラスチックカードの修了証をお求めの方は、申請完了後1営業日内に発送いたします。
\ 詳しくはこちらをチェック /
まとめ:アーク溶接の資格は、特別教育と民間の資格が存在する
アーク溶接はアーク放電を活用した技術で、一般的な溶接方法として広く用いられています。
アーク溶接は火災や感電などの危険をともなう業務であるため、アーク溶接等特別教育を受講したうえで、必要に応じて2024年に新設された技能講習を受講します。
また、さらに専門的な技術を証明する民間資格や、キャリアアップのための溶接作業指導者・溶接管理技術者を目指すのもおすすめです。

アーク溶接は多くの現場で求められる技術です。まずは効率的に受講できるオンライン講座などを活用し、自らのキャリアアップに役立ててください。





