公害防止管理者

公害防止管理者資格の13種類の区分について解説!

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公害防止管理者には、社会問題となりうる大気汚染や水質汚染、騒音などの公害を防止する重要な役割があります。

公害防止管理者資格には13の試験区分が存在しますが、大気関係や水質関係などの試験区分の違いや、選任できる施設の内容まで把握している方は少ないでしょう。

そこで今回は、公害防止管理者資格の種類をはじめ、選任できる施設、公害防止主任管理者と公害防止統括者の違いを解説します。

公害防止管理者資格の概要と種類

まずは、公害防止管理者資格の概要と種類を見ていきましょう。

公害防止管理者とは?

公害防止管理者は、公害発生の原因となる特定工場に選任し、有害物質や騒音などを検査するための資格です。

1960年代の高度経済成長期において、工場の従業員や近隣住民に対して公害による健康被害が問題となったことを理由に、1971年に「特定工場における公害防止組織の整備に関する法律」が制定され、公害防止管理者制度が発足したのです。

公害防止管理者の選任義務がある特定工場は、以下の事業内容のいずれかの事業に属し、なおかつ、指定施設のいずれかの施設を備えている工場です。

<特定工場の事業内容>

1. 製造業(物品の加工業を含む)
2. 電気供給業
3. ガス供給業
4. 熱供給業

<指定の施設>

1. ばい煙発生施設
2. 特定粉じん発生施設
3. 一般粉じん発生施設
4. 汚水等排出施設
5. 騒音発生施設
6. 振動発生施設
7. ダイオキシン類発生施設

公害防止管理者は13もの種類がある

公害防止管理者資格の試験区分は、以下の13種類です。

No.公害防止管理者の試験区分
1大気関係第1種公害防止管理者
2大気関係第2種公害防止管理者
3大気関係第3種公害防止管理者
4大気関係第4種公害防止管理者
5水質関係第1種公害防止管理者
6水質関係第2種公害防止管理者
7水質関係第3種公害防止管理者
8水質関係第4種公害防止管理者
9騒音・振動関係公害防止管理者
10ダイオキシン類関係公害防止管理者
11特定粉じん関係公害防止管理者
12一般粉じん関係公害防止管理者
13公害防止主任管理者

出典:一般社団法人 産業環境管理協会

このように、公害防止管理者資格は公害の発生原因ごとに設定されています。

また、公害防止管理者資格を取得するには、「公害防止管理者等国家試験」に合格する方法と「公害防止管理者等資格認定講習」を受講して修了試験に合格する方法の2パターンがあります。

大気関係と水質関係の違い

公害防止管理者資格のなかでも、特に人気があるのは大気関係水質関係です。

大気関係は特定工場に該当する業務において、ばい煙が発生する施設に選任できる資格です。ばい煙とは、物の燃焼で発生する硫黄酸化物、熱源や燃焼の電気使用で発生するばいじん、燃焼などの処理で発生するカドミウムや窒素酸化物などの有害物質の総称です。

一方、水質関係は、有害物質を含む汚水が発生する施設に該当します。鉱業や畜産業、水産物や食品などの製造業があげられます。

また、大気関係と水質関係はいずれも第1種~第4種に分かれ、それぞれの資格によって選任できる施設の範囲(区分)が異なります。いずれも第1種は工場の規模や排出ガス量・排出水量などの制限がなく、どの施設でも選任が可能です。第2種以降になると選任できる施設が少なくなります。

【公害防止管理者】選任できる施設の種類と兼務の要件

次に、公害防止管理者の試験区分で選任できる施設の種類、公害防止管理者が特定工場を兼務する要件を紹介します。

【種類別】公害防止管理者が選任される施設

公害防止管理者の区分と、選任できる資格者の種類は次のとおりです。

公害発生施設の区分公害防止管理者等の種類選任ができる資格者の種類
カドミウム・その化合物、塩素・塩化水素、ふっ素・ふっ化水素・ふっ化けい素、鉛・その化合物を発生する施設(大気関係有害物質発生施設)で、排出ガス量が1時間当たり4万立方メートル以上の工場に設置される施設大気関係第1種
公害防止管理者
大気関係第1種有資格者
大気関係有害物質発生施設で、排出ガス量が1時間当たり4万立方メートル未満の工場に設置される施設大気関係第2種
公害防止管理者
大気関係第1種有資格者
大気関係第2種有資格者
大気関係有害物質発生施設以外のばい煙発生施設で、排出ガス量が1時間当たり4万立方メートル以上の工場に設置される施設大気関係第3種
公害防止管理者
大気関係第1種有資格者
大気関係第3種有資格者
大気関係有害物質発生施設以外のばい煙発生施設で、排出ガス量が1時間当たり1万立方メートル以上4万立方メートル未満の工場に設置される施設大気関係第4種
公害防止管理者
大気関係第1種有資格者
大気関係第2種有資格者
大気関係第3種有資格者
大気関係第4種有資格者
水質関係有害物質排出施設で、排出水量が1日当たり1万立方メートル以上の工場に設置される施設水質関係第1種
公害防止管理者
水質関係第1種有資格者
水質関係有害物質排出施設で、排出水量が1日当たり1万立方メートル未満の工場又は、特定地下浸透水を浸透させている工場に設置される施設水質関係第2種
公害防止管理者
水質関係第1種有資格者
水質関係第2種有資格者
水質関係有害物質排出施設以外の汚水等排出施設で、排出水量が1日当たり1万立方メートル以上の工場に設置される施設水質関係第3種
公害防止管理者
水質関係第1種有資格者
水質関係第3種有資格者
水質関係有害物質排出施設以外の汚水等排出施設で、排出水量が1日当たり1千立方メートル以上1万立方メートル未満の工場に設置される施設水質関係第4種
公害防止管理者
水質関係第1種有資格者
水質関係第2種有資格者
水質関係第3種有資格者
水質関係第4種有資格者
機械プレス(呼び加圧能力が980キロニュートン以上のものに限る。)
鍛造機(落下部分の重量が1トン以上のハンマーに限る。)
騒音・振動関係
公害防止管理者
騒音・振動関係有資格者
※騒音関係有資格者
液圧プレス(矯正プレスを除くものとし、呼び加圧能力が2941キロニュートン以上のものに限る。)
機械プレス(呼び加圧能力が980キロニュートン以上のものに限る。)
鍛造機(落下部分の重量が1トン以上のハンマーに限る。)
騒音・振動関係
公害防止管理者
騒音・振動関係有資格者
※振動関係有資格者
特定粉じん(石綿)発生施設特定粉じん関係
公害防止管理者
大気関係第1種有資格者
大気関係第2種有資格者
大気関係第3種有資格者
大気関係第4種有資格者
特定粉じん関係有資格者
一般粉じん(石綿以外のもの)発生施設一般粉じん関係
公害防止管理者
大気関係第1種有資格者
大気関係第2種有資格者
大気関係第3種有資格者
大気関係第4種有資格者
特定粉じん関係有資格者
一般粉じん関係有資格者
ダイオキシン類発生施設ダイオキシン類関係
公害防止管理者
ダイオキシン類関係有資格者
排出ガス量が1時間当たり4万立方メートル以上のばい煙発生施設を設置しており、かつ、排出水量が1日当たり1万立方メートル以上の汚水等排出施設を設置している工場公害防止
主任管理者
公害防止主任管理者の有資格者、又は、大気関係第1種若しくは第3種の有資格者であり、かつ、水質関係第1種若しくは第3種の有資格者である者

出典:一般社団法人 産業環境管理協会

先に述べたように、大気関係と水質関係は第1種~第4種で選任できる施設の区分が変わります。大気関係第1種と水質関係第1種は全ての公害発生施設に選任できるため、例年の受験者数が最も多い傾向にあります。

公害防止管理者の兼務に必要な要件

公害防止管理者は原則、特定工場につき1人選任することが義務付けられています。

しかし、公害防止管理者制度の見直しによる省令改正により、一定の要件を満たすと、1人の公害防止管理者が2つ以上の特定工場を兼務できるようになりました。

公害防止管理者の兼務基準には、以下の内容が制定されています。

  1. 同一社ではあるが同一敷地内にない複数の工場において、同一人を選任する場合
  2. 親子会社等の関係にあるものが同一敷地内に設置する複数の工場において、同一人を選任する場合
  3. 事業協同組合等の組合員が共同で公害防止業務を行う場合に、同一人を選任する場合(現行において兼務を認めています)
  4. 近隣の同業種の中小企業者が共同で公害防止業務を行う場合に、同一人を選任する場合

出典:経済産業省

なお、上記の基準を満たすことに加え、以下の要件もクリアする必要があります。

  1. 同一人を公害防止管理者として選任させようとする工場(以下「兼務工場」という。)が当該公害防止管理者(以下「兼務公害防止管理者」という。)の常時勤務する工場から2時間以内に到達できる場所にあること。
  2. 兼務工場が同種若しくは類似のものであるか、又は生産工程上密接な関連を有すること。
  3. 兼務工場に係る公害の防止に関する業務を統括管理する者が同一であるか、又は公害の防止に関する業務に関する規程(以下「業務規程」という。)で兼務工場に係る公害の防止に関する業務の実施体制及び指揮命令系統が定められていること。
  4. 業務規程で兼務公害防止管理者の業務範囲並びに責任及び権限、異常時又は緊急時の連絡体制及び応急の措置等の対応策その他公害の防止に関する業務の実施に関し必要な事項が定められていること。
  5. 兼務公害防止管理者の常時勤務する工場から他の兼務工場の公害の発生状況を監視できる通信手段が整備されていること。
  6. 兼務公害防止管理者の選任に係る兼務工場の数は、5以下であること。

出典:経済産業省

公害防止主任管理者の選任が免除されるケース

上記の省令改正にともない、公害防止主任管理者の選任要件も緩和されました。

次のいずれかに該当する場合は、公害防止主任管理者の選任は免除されます。

  1. ばい煙発生施設にかかわる公害防止管理者、ばい煙の処理工程に設置されている汚水等排出施設にかかわる公害防止管理者に同一人物を選任している場合
  2. ばい煙の処理工程と汚水等の処理工程がそれぞれ独立している場合

出典:経済産業省

公害防止主任管理者と公害防止統括者の違い

公害防止組織は公害防止統括者のほか、公害防止主任管理者、公害防止統括者を加えた3つの職種で構成されます。ここでは、公害防止主任管理者と公害防止統括者の違いを紹介します。

公害防止統括者は、公害防止主任管理者より上位の責任者

公害防止統括者は公害防止に関する業務を統括管理する役割があり、公害防止組織のトップに位置します。

一方、公害防止主任管理者は、公害防止管理者を指揮し、公害防止統括者を補佐します。公害防止主任管理者は環境管理関係の部署の部長や課長、公害防止統括者は工場長などが担います。

公害防止主任管理者と公害防止統括者の選任義務

公害防止組織は、「一定規模以上の特定工場」と「その他の特定工場」に分類されます。

「ばい煙発生量が1時間当たり4万立方メートル以上で、かつ排出水量が1日当たり1万立方メートル以上」に該当する一定規模以上の特定工場には、公害防止主任管理者の選任が義務付けられています。

公害防止主任管理者になるには、国家試験を受験して資格を取得する必要があります。公害防止主任管理者の資格取得者か、大気関係第1種もしくは第3種の資格を有し、なおかつ、水質関係第1種もしくは第3種の資格を持っていると、公害防止主任管理者に選任できます。

一方、公害防止統括者の場合、公害防止管理者などの資格は必要ありません。公害防止統括者は特定工場に選任する義務がありますが、常時使用する従業員数が20人以下の特定工場では不要です。

公害防止管理者の資格には13種類ある

公害防止管理者資格は産業発展にともない発生した公害問題を受けて制定され、公害の原因に応じて13種類の区分があります。

公害防止管理者資格の区分により、選任できる公害発生施設の範囲が異なります。大気関係第1種と水質関係第1種は、全ての公害発生施設に選任可能です。

特定工場において、大気汚染の原因になるばい煙を排出するおそれのある施設には大気関係公害防止管理者、有害物質を含む汚水を排出するおそれがある施設には水質関係公害防止管理者を選任する義務があります。

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公害防止主任管理者は国家試験が必要ですが、公害防止統括者は資格が不要です。
公害防止主任管理者は課長や部長程度の立場の方が担うため、公害防止管理者で経験を積み、キャリアアップを目指してもよいでしょう。

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