振動工具を扱う業務に携わるには、特別教育・安全衛生教育の受講が必要です。振動工具の使用に教育が必要な理由は、手指や腕などに振動障害が発症する可能性があるためです。大阪府で振動工具の教育を受けたい場合、使用する振動工具に合わせた教育を受講しなければなりません。
そこで今回は、振動工具の種類と振動障害、大阪府で振動工具の特別教育・安全衛生教育を実施する会場について解説します。
目次
振動工具に関する基本情報
まずは振動工具の種類と用途、振動障害の原因と症状について見ていきましょう。
振動工具のおもな種類と用途
振動工具とはピストンやエンジンなどを内蔵した、振動を発生する工具のことです。振動工具の機構別に、工具の名称、おもな用途は次のとおりです。
機構等 | 名称 | 用途 |
ピストンによる打撃機構を有する工具 | さく岩機 | 岩石の発破用穴の穿孔 |
チッピングハンマー | 岩石の小割り、はつり、鋳物砂落とし、さび落とし、塗料落とし | |
リベッティングハンマー | 造船、橋梁等の鋲打ち | |
コーキングハンマー | 鋳物の表面仕上げ、はつり、かしめ | |
ハンドハンマー、ベビーハンマー | 岩石、金属等のはつり、かしめ、さび落とし | |
コンクリートブレーカー | コンクリート道路、建造物、基礎等の破砕 | |
スケーリングハンマー | さび落とし、塗料落とし | |
サンドランマー | 鋳物砂鋳型のつき固め | |
ピックハンマー | 岩石、コンクリート等のはつり、破砕 | |
多針タガネ | さび落とし、鋳物の砂落とし | |
オートケレン | はつり、さび落とし | |
電動ハンマー | コンクリート道路、建造物、基礎等の破砕 | |
内燃機関内蔵可搬式 (チェーンソーを除く) | エンジンカッター | 金属、石材等の切断 |
ブッシュクリーナー | 灌木(かんぼく)、雑草の刈り払い | |
振動体内蔵工具 | 携帯用タイタンパー | 軌道の砂利つき固め |
コンクリートバイブレーター | コンクリートの均等打ち込み(充填促進) | |
回転工具 | 携帯用研削盤、スイング研削盤、その他手で保持し又は支えて操作する型式の研削盤 (製造時直径150mmを超える研削といしを用いて行う金属・石材等の研削・切断業務に限る) | (携帯用砥石盤) 溶接部等の仕上げ、さびばり取り、さび落とし (スイング研削盤) 金属、石材等の研削、切断 |
携帯用皮はぎ機 | 木の皮はぎ | |
サンダー | 溶接部の仕上げ、さび落とし | |
バイブレーションドリル | 金属、石材、コンクリート等の穿孔 | |
締付工具 | インパクトレンチ | ボルト、ナットの締め付け、取り外し |
往復動工具 | バイブレーションシャー | 金属薄板の切断 |
ジグソー | 木材、軟鋼板等の直線、曲線切り |
出典:厚生労働省
振動工具は、建設業、林業、採石業、鉱業など、さまざまな業種で使用されています。
振動工具によって引き起こされる振動障害とは?
振動工具の操作で発生する振動により、振動障害という健康被害を招くおそれがあります。振動工具が発する振動が体に伝わることで、血管や神経に異常をきたすことがおもな原因です。振動の影響に加え、長時間の操作、寒冷な環境、疾病なども振動障害の発症に関係しています。
振動障害の症状は、手指の痺れ、痛み、冷え、白ろう病などが挙げられます。白ろう病とは、血管の収縮による血管性運動神経障害です。白ろう病では、指先が白くなる、手指の感覚が鈍る、痺れ、こわばりといったレイノー現象を発症します。
振動障害は悪化すると回復が困難になるため、特別教育や安全衛生教育で予防知識などを学ぶ必要があります。
関連記事:振動障害を予防する6つの対策とは?振動障害のおもな症状や原因についても解説
振動工具取扱作業者安全衛生教育の内容
特別教育・安全衛生教育の概要と両者の違い、各教育のカリキュラムについて解説します。
特別教育と安全衛生教育の違い
特別教育・安全衛生教育のいずれも、労働災害の防止がおもな目的です。
特別教育とは、危険有害な業務に労働者を従事させる場合に必要な教育です。振動工具で特別教育の受講が必要な工具は、チェーンソーに限られます。
一方、安全衛生教育は業種や職種に関わらず、新規雇入れ時、作業変更時に実施する教育です。振動工具の安全衛生教育は、チェーンソー以外の振動工具、刈払機に該当します。
振動工具取扱作業者安全衛生教育のカリキュラム
チェーンソー以外の振動工具が対象となる、振動工具取扱作業者安全衛生教育は、以下のカリキュラムを受講します。
科目 | 範囲 | 時間 |
振動工具に関する知識 | ・振動工具の種類及び構造 ・振動工具の選定方法 ・振動工具の改善 | 1時間 |
振動障害及びその予防に関する知識 | ・振動障害の原因及び症状 ・振動障害の予防措置 (※日振動ばく露量A(8)等に基づく振動障害予防対策を含む) | 2.5時間 |
関係法令等 | ・労働安全衛生法 ・労働安全衛生法施行令等中の関係条項及び関係通達中の関係条項等 | 0.5時間 |
※演 習 | ・演習(振動ばく露時間、日振動ばく露量A(8))の算出 | 0.5時間 |
出典:建設業労働災害防止協会
関連記事:振動工具取扱作業者とは?安全衛生教育が必要な理由、受講内容などを紹介
刈払機取扱作業者安全衛生教育のカリキュラム
刈払機はいわゆる芝刈り機のことで、林業や造園業、建設業などで幅広く使用されています。芝刈り機から発する振動も振動障害を招くため、安全衛生教育の受講が必要です。
刈払機取扱作業者安全衛生教育のカリキュラムは次のとおりです。
No. | 科 目 | 範 囲 | 時 間 |
1 | 刈払機に関する知識 | (1)刈払機の構造及び機能の概要 (2)刈払機の選定 | 1時間 |
2 | 刈払機を使用する作業に関する知識 | (1)作業計画の作成等 (2)刈払機の取扱い (3)作業の方法 | 1時間 |
3 | 刈払機の点検及び整備に関する知識 | (1)刈払機の点検・整備 (2)刈刃の目立て | 30分 |
4 | 振動障害及びその予防に関する知識 | (1)振動障害の原因及び症状 (2)振動障害の予防措置 | 2時間 |
5 | 関係法令 | (1)労働安全衛生関係法令中の関係条項及び関係通達中の関係事項等 | 30分 |
6 | 実技 刈払機の作業等 | (1)刈払機の取扱い (2)作業の方法 (3)刈払機の点検・整備の方法 | 1時間 |
出典: 建設業労働災害防止協会岩手県支部
伐木等業務特別教育のカリキュラム
伐木等業務特別教育とは、チェーンソーを使用した伐木作業に必要な教育です。林業や造園工事業、土木工事業など、チェーンソーを扱うすべての業種で受講が必要です。
チェーンソーの伐木作業時による労働災害があとを絶たないことから、厚生労働省は令和2年に安全衛生規則を改正し、安全対策を強化しました。以前は伐木の直径等で特別教育が区分されていましたが、これを統合し、教育の時間数を増やしています。改正前に特別教育を受講した場合、一部の科目を除き補習を受ける必要があります。
改正前に特別教育を受講し、受講を省略できる条件は次のとおりです。
NO. | 伐木等の業務に係る特別教育の科目について、十分な知識及び経験を有していると認められる以下の労働者 |
1 | 改正前の安衛則第36条第8号に定める特別教育(*1)(ただし、チェーンソーに関する知識の科目、振動障害及びその予防に関する知識の科目を含む。)を修了した労働者 |
2 | 改正前の安衛則第36条第8号に定める特別教育(*1)(ただし、チェーンソーに関する知識の科目、振動障害及びその予防に関する知識の科目の双方を除く。)を修了した労働者 |
3 | 改正前の安衛則第36条第8号の2に定めるチェーンソーを用いて行う立木の伐木等の業務に関する特別教育(*2)を修了した労働者 |
なお、改正による新たな特別教育の適用日(令和2年8月1日)より前に、改正後の特別教育の科目の全部又は一 部について受講した方は、当該受講した科目を適用日以降に再度受講する必要はありません。
(*1) 胸高直径が70cm以上の立木の伐木、胸高直径が20cm以上で、かつ、重心が著しく偏している立木の伐木、つりきりその他特殊な方法による伐木又はかかり木でかかっている木の胸高直径が20cm以上であるものの処理の業務(伐木等機械の運転の業務を除く。)
(*2) チェーンソーを用いて行う立木の伐木、かかり木の処理又は造材の業務(※1の業務を除く。)
出典:厚生労働省
新しい伐木等業務特別教育のカリキュラム、および受講を省略できる条件は次のとおりです。
学科科目 | 範囲 | 時間 | 上記【受講を省略できる条件】に該当する方が受講するべき時間 | ||
I 伐木等作業に関する知識 | 伐倒の合図 退避の方法 | 4時間 | |||
伐倒の方法 かかり木の種類及びその処理 | 2時間 | ||||
造材の方法 下肢の切創防止用保護衣等の着用 | 1時間 | 1時間 | |||
II チェーンソーに関する知識 | チェーンソーの種類 構造及び取扱い方法 チェーンソーの点検及び整備の方法 ソーチェーンの目立ての方法 | 2時間 | 2時間 | ||
III 振動障害及びその予防に関する知識 | 振動障害の原因及び症状 振動障害の予防措置 | 2時間 | 2時間 | ||
IV 関係法令 | 安衛法、安衛令及び安衛則中の関係条項 | 1時間 | 1時間 | 1時間 | 1時間 |
実技科目 | 範囲 | 時間 | 上記【受講を省略できる条件】に該当する方が受講するべき時間 | ||
V 伐木等の方法 | 造材の方法 | 5時間 | |||
伐木の方法 かかり木の処理の方法 | 2時間 | ||||
下肢の切創防止用保護衣等の着用 | 30分間 | 30分間 | |||
VI チェーンソーの操作 | 基本操作 応用操作 | 2時間 | 2時間 | ||
Ⅶ チェーンソーの点検及び整備 | チェーンソーの点検及び整備の方法 ソーチェーンの目立ての方法 | 2時間 | 2時間 |
出典:厚生労働省
大阪府で振動工具の特別教育・安全衛生教育を受講できる会場
大阪府で振動工具の安全衛生教育、特別教育を実施する会場をそれぞれ紹介します。
【大阪府】振動工具取扱作業者安全衛生教育の実施会場
大阪府で、振動工具取扱者安全衛生教育を実施する会場は次のとおりです。
No. | |
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1 | 新大阪労働安全教習所 |
2 | 西成労働福祉センター |
3 | コマツ教習所 近畿センタ |
4 | 近畿教習センター茨木教習所 |
5 | 近畿教習センター大阪南教習所 |
6 | 住友建機教習所 大阪教習センター |
7 | SK技能教習センター |
【大阪府】刈払機取扱作業者安全衛生教育の実施会場
刈払機取扱作業者安全衛生教育を、大阪府で実施する会場は次のとおりです。
No. | |
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1 | 万博記念ビル 2階 万博NPOセンター大会議室 |
2 | コマツ教習所 近畿センタ |
3 | 近畿教習センター大阪南教習所 |
4 | 住友建機教習所 大阪教習センター |
5 | SK技能教習センター |
【大阪府】伐木等業務特別教育の実施会場
大阪府で伐木等業務特別教育を実施する会場は次のとおりです。
No. | |
---|---|
1 | 西成労働福祉センター |
2 | 万博記念ビル 2階 万博NPOセンター大会議室 |
3 | 大阪産業保健総合支援センター |
4 | 近畿教習センター茨木教習所 |
5 | SK技能教習センター |
振動工具取扱作業者安全衛生教育は、通信講座でも受講可能
振動工具取扱作業者安全衛生教育は、講習会のほかに通信講座でも受講できます。通信講座は自宅や通勤中など、時間と場所を問わず勉強できるメリットがあります。講習会に参加するには1日拘束されるため、仕事が忙しい方には通信講座が最適です。
また、解説動画とテキストを使用する通信講座なら、内容を理解するまで何度でも勉強できます。振動工具の知識や選び方、振動障害の防止対策をしっかり学び、振動障害のリスクを減らしましょう。
振動工具の特別教育・安全衛生教育は必ず受講しましょう
振動工具はピストンや回転などの機構を用いた工具で、使用時の振動で振動障害を発生する可能性があります。
振動障害により手指の痺れや痛み、白ろう病などを発症するため、チェーンソーは特別教育を、チェーンソー以外の振動工具、刈払機は安全衛生教育を受講しなければなりません。大阪府では、全3種類の特別教育・安全衛生教育を実施しています。
振動工具取扱作業者安全衛生教育は、講習会だけでなく通信講座でも受講可能です。通信講座は時間と場所を選ばず、何度でも勉強できます。振動工具と振動障害予防対策をしっかり学び、自分自身の身を守りましょう。