振動工具取扱作業者安全衛生教育は、チェーンソー以外の振動工具を扱う際に必要な教育です。愛知県で振動工具取扱作業者安全衛生教育を受講する方法は、講習会への参加、通信講座の2通りです。振動工具に関する教育はチェーンソー以外の振動工具のほかに、チェーンソー、刈払機で別途の教育が存在します。
今回は、振動工具取扱作業者安全衛生教育の概要、振動工具に関する教育、愛知県の受講会場一覧について解説します。
目次
振動工具取扱作業者安全衛生教育の概要
まずは、振動工具における教育の必要性のほか、特別教育・安全衛生教育の内容について解説します。
振動工具に特別教育・安全衛生教育が必要な理由
振動工具はピストンやエンジンなどを内蔵した工具で、著しい振動が発生するのが特徴です。木を伐採する、コンクリートを砕く、穴を開けるといった作業が簡単にできるため、建築や土木、採石、林業、造園などの分野で広く用いられています。
振動工具は手で支えて操作するため、著しい振動が手から体に伝わり、血管や神経、骨や関節に悪影響を及ぼします。さらに、作業時間、工具の重量、作業環境、病気などの要因が重なり、作業員が「振動障害」を発症する場合もあります。振動障害のおもな症状は、手指や腕の痺れや痛み、指が白くなるレイノー現象などが挙げられます。
振動工具を扱う業務で振動障害を発症すると、労働災害に認定される可能性があります。振動障害の労災認定人数は毎年200人~300人にのぼり、振動災害であることに気付いていない「潜在患者」も多くいるとされています。
労働災害を防ぐため、振動工具を扱う作業者は特別教育・安全衛生教育を受講しなければなりません。各教育では、振動工具の正しい使い方、振動障害の防止方法などを学びます。
振動工具取扱作業者安全衛生教育
次に、振動工具に関する特別教育・安全衛生教育を紹介します。
チェーンソー以外の振動工具を使用する作業者に対し、事業者は安全衛生教育を実施することが求められています。振動工具取扱作業者安全衛生教育では、以下の内容を受講します。
科目 | 範囲 | 時間 |
振動工具に関する知識 | ・振動工具の種類及び構造 ・振動工具の選定方法 ・振動工具の改善 | 1時間 |
振動障害及びその予防に関する知識 | ・振動障害の原因及び症状 ・振動障害の予防措置 (※日振動ばく露量A(8)等に基づく振動障害予防対策を含む) | 2.5時間 |
関係法令等 | ・労働安全衛生法 ・労働安全衛生法施行令等中の関係条項及び関係通達中の関係条項等 | 0.5時間 |
※演 習 | ・演習(振動ばく露時間、日振動ばく露量A(8))の算出 | 0.5時間 |
出典:建設業労働災害防止協会
振動工具取扱作業者安全衛生教育は、以下の振動工具を取り扱う作業者が受講対象者となります。
(1) ピストンによる打撃機構を有する工具 | [1]さく岩機、[2]チッピングハンマー、[3]リベッティングハンマー、[4]コーキングハンマー、[5]ハンドハンマー、[6]ベビーハンマー、[7]コンクリートブレーカー、[8]スケーリングハンマー、[9]サンドランマー、[10]ピックハンマー、[11]多針タガネ、[12]オートケレン、[13]電動ハンマー |
(2) 内燃機関を内蔵する工具(可搬式のもの) | [1]エンジンカッター、[2]ブッシュクリーナー |
(3) 携帯用皮はぎ機等の回転工具((5)を除く。) | [1]携帯用皮はぎ機、[2]サンダー、[3]バイブレーションドリル |
(4) 携帯用タイタンパー等の振動体内蔵工具 | [1]携帯用タイタンパー、[2]コンクリートバイブレーター |
(5) 携帯用研削盤、スイング研削盤その他手で保持し、又は支えて操作する型式の研削盤(使用する研削といしの直径が150㎜を超えるものに限る。) | |
(6) 卓上用研削盤又は床上用研削盤(使用するといしの直径が150㎜を超えるものに限る。) | |
(7) 締付工具 | [1]インパクトレンチ |
(8) 往復動工具 | [1]バイブレーションシャー、[2]ジグソー |
出典:建設業労働災害防止協会
刈払機取扱作業者安全衛生教育
刈払機はいわゆる芝刈り機のことで、林業のほかに、建設現場でも使用されています。刈払機も著しい振動が発生するため、以下の安全衛生教育の受講が必要です。
No. | 科 目 | 範 囲 | 時 間 |
1 | 刈払機に関する知識 | (1)刈払機の構造及び機能の概要 (2)刈払機の選定 | 1時間 |
2 | 刈払機を使用する作業に関する知識 | (1)作業計画の作成等 (2)刈払機の取扱い (3)作業の方法 | 1時間 |
3 | 刈払機の点検及び整備に関する知識 | (1)刈払機の点検・整備 (2)刈刃の目立て | 30分 |
4 | 振動障害及びその予防に関する知識 | (1)振動障害の原因及び症状 (2)振動障害の予防措置 | 2時間 |
5 | 関係法令 | 労働安全衛生関係法令中の関係条項及び関係通達中の関係事項等 | 30分 |
6 | 実技 刈払機の作業等 | (1)刈払機の取扱い (2)作業の方法 (3)刈払機の点検・整備の方法 | 1時間 |
出典: 建設業労働災害防止協会岩手県支部
チェーンソーによる伐木等業務に関する特別教育
チェーンソーは、木の伐採で用いられる振動工具の一種です。土木工事業、林業など業種を問わず、チェーンソーによる伐木作業には、以下の特別教育の受講が必要です。
学科科目 | 範囲 | 時間 |
I 伐木等作業に関する知識 | 伐倒の合図 退避の方法 | 4時間 |
伐倒の方法 かかり木の種類及びその処理 | ||
造材の方法 下肢の切創防止用保護衣等の着用 | ||
II チェーンソーに関する知識 | チェーンソーの種類 構造及び取扱い方法 チェーンソーの点検及び整備の方法 ソーチェーンの目立ての方法 | 2時間 |
III 振動障害及びその予防に関する知識 | 振動障害の原因及び症状 振動障害の予防措置 | 2時間 |
IV 関係法令 | 安衛法、安衛令及び安衛則中の関係条項 | 1時間 |
実技科目 | 範囲 | 時間 |
V 伐木等の方法 | 造材の方法 | 5時間 |
伐木の方法 かかり木の処理の方法 | ||
下肢の切創防止用保護衣等の着用 | ||
VI チェーンソーの操作 | 基本操作 応用操作 | 2時間 |
VII チェーンソーの点検及び整備 | チェーンソーの点検及び整備の方法 ソーチェーンの目立ての方法 | 2時間 |
出典:厚生労働省
労働安全衛生規則の一部改正により、大径木・小径木の特別教育が統合され、新たな教育科目が追加されました。改正前に受講済みの場合、一部の受講を省略したうえで、新しい教育科目の追加講習が必要です。
受講を省略できる条件は次のとおりです。
NO. | 伐木等の業務に係る特別教育の科目について、十分な知識及び経験を有していると認められる以下の労働者 |
1 | 改正前の安衛則第36条第8号に定める特別教育(*1)(ただし、チェーンソーに関する知識の科目、振動障害及びその予防に関する知識の科目を含む。)を修了した労働者 |
2 | 改正前の安衛則第36条第8号に定める特別教育(*1)(ただし、チェーンソーに関する知識の科目、振動障害及びその予防に関する知識の科目の双方を除く。)を修了した労働者 |
3 | 改正前の安衛則第36条第8号の2に定めるチェーンソーを用いて行う立木の伐木等の業務に関する特別教育(*2)を修了した労働者 |
なお、改正による新たな特別教育の適用日(令和2年8月1日)より前に、改正後の特別教育の科目の全部又は一 部について受講した方は、当該受講した科目を適用日以降に再度受講する必要はありません。
(*1) 胸高直径が70cm以上の立木の伐木、胸高直径が20cm以上で、かつ、重心が著しく偏している立木の伐木、つりきりその他特殊な方法による伐木又はかかり木でかかっている木の胸高直径が20cm以上であるものの処理の業務(伐木等機械の運転の業務を除く。)
(*2) チェーンソーを用いて行う立木の伐木、かかり木の処理又は造材の業務(※1の業務を除く。)
出典:厚生労働省
上記1~3の条件に該当する方は、以下の教育科目を補習します。
条件 | 科目 | 範囲 | 時間 |
1 | I 伐木等作業に関する知識 | 造材の方法 下肢の切創防止用保護衣等の着用 | 1時間 |
IV 関係法令 | 安衛法、安衛令及び安衛則中の関係条項 | 1時間 | |
V 伐木等の方法 | 下肢の切創防止用保護衣等の着用 | 30分間 | |
2 | I 伐木等作業に関する知識 | 造材の方法 下肢の切創防止用保護衣等の着用 | 1時間 |
II チェーンソーに関する知識 | チェーンソーの種類 構造及び取扱い方法 チェーンソーの点検及び整備の方法 ソーチェーンの目立ての方法 | 2時間 | |
III 振動障害及びその予防に関する知識 | 振動障害の原因及び症状 振動障害の予防措置 | 2時間 | |
IV 関係法令 | 安衛法、安衛令及び安衛則中の関係条項 | 1時間 | |
V 伐木等の方法 | 下肢の切創防止用保護衣等の着用 | 30分間 | |
VI チェーンソーの操作 | 基本操作 応用操作 | 2時間 | |
VII チェーンソーの点検及び整備 | チェーンソーの点検及び整備の方法 ソーチェーンの目立ての方法 | 2時間 | 3 | I 伐木等作業に関する知識 | 伐倒の方法 かかり木の種類及びその処理 造材の方法 下肢の切創防止用保護衣等の着用 | 2時間 |
IV 関係法令 | 安衛法、安衛令及び安衛則中の関係条項 | 1時間 | |
V 伐木等の方法 | 伐木の方法 かかり木の処理の方法 下肢の切創防止用保護衣等の着用 | 2時間 |
出典:厚生労働省
【愛知県】振動工具特別教育安全衛生教育の受講会場
愛知県で、各種特別教育・安全衛生教育を実施する会場をそれぞれ紹介します。
【愛知県】振動工具取扱作業者安全衛生教育の実施会場
愛知県で、振動工具取扱作業者安全衛生教育を実施する会場は次のとおりです。
No. | |
---|---|
1 | 一般社団法人名古屋南労働基準協会 |
2 | PEO建機教習センタ 愛知教習所 |
3 | 住友建機教習所 愛知教習センター |
4 | 東海教習センター名古屋教習所 |
5 | 東海教習センター豊橋教習所 |
【愛知県】刈払機取扱作業者安全衛生教育の実施会場
愛知県で、刈払機取扱作業者安全衛生教育を実施する会場は次のとおりです。
No. | |
---|---|
1 | PEO建機教習センタ 愛知教習所 |
2 | 住友建機教習所 愛知教習センター |
3 | 東海教習センター名古屋教習所 |
4 | 東海教習センター豊橋教習所 |
5 | 瀧冨工業株式会社 本社 |
【愛知県】チェーンソーによる伐木等業務特別教育の実施会場
愛知県で、チェーンソーによる伐木等業務特別教育を実施する会場は次のとおりです。
No. | |
---|---|
1 | 林業・木材製造業労働災害防止協会 愛知県支部 |
2 | 東海安全教習センター株式会社 |
3 | PEO建機教習センタ 愛知教習所 |
4 | 東海教習センター名古屋教習所 |
講習会の会場により補習を実施しない会場や、補習の対象が限定されている場合があるので確認しましょう。
振動工具取扱作業者安全衛生教育は、通信講座でも受講できる
振動工具取扱作業者安全衛生教育は、講習会のほかに通信講座でも受講可能です。通信講座のメリットは、場所と時間を問わず受講できること、何度もくり返し勉強ができることでしょう。
通信講座では、プロの講師が解説する動画と専用のテキストで勉強します。動画は通勤中などでも視聴できるうえに、内容をしっかり理解するまで何度も視聴可能です。通信講座は質問できるサポートも用意しているため、講習会よりも理解度が高くなるでしょう。隙間時間も有効活用できる通信講座で、振動工具と振動障害をしっかり学ぶことをおすすめします。
【振動工具取扱作業者安全衛生教育】多忙な方には通信講座がおすすめ
振動工具は木の伐採やコンクリートの破壊など、力が必要な作業が簡単にできます。その反面、振動工具が発する振動を原因とする振動障害を発症することもあります。振動工具の振動障害による労働災害認定は毎年横ばい状態にあり、特別教育・安全衛生教育で労働災害を減らす取り組みが必要です。愛知県では振動工具の特別教育・安全衛生教育を実施していますが、チェーンソーの特別教育では補習の有無を確認しましょう。
また、振動工具取扱作業者安全衛生教育は通信講座でも受講が可能です。仕事が忙しく講習会の参加が難しい方はもちろん、振動工具と振動障害をしっかり理解したい方は、通信講座を上手に活用しましょう。