職長教育の能力向上(職長再教育)

効果的な労働災害防止対策とは?具体的な方法や職長再教育についても解説

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労働災害とは、業務上や通勤中に起こった負傷、死亡事故などのことを指します。労働災害は企業イメージにも悪影響をおよぼすため、労働災害防止対策が欠かせません。しかし、労働災害を防止するには、労働災害の原因を踏まえたうえで適切な対策を講じる必要があります。今回は、労働災害の認定基準、労働災害の原因、具体的な労働災害防止対策について解説します。

労働災害とは?認定基準と原因を解説

まずは、労働災害の概要と認定基準、労働災害の原因を見ていきましょう。

労働災害の種類と認定基準

労働災害とは、業務上や通勤が原因で起こる、負傷・疾病・障害・死亡などの災害のことです。労働災害の原因により、業務災害、通勤災害に分類され、それぞれの認定基準を満たすことで労働災害と認定されます。

業務災害の認定基準は、労働契約に基づく事業主の支配下で、業務が原因で発生した災害かどうかです。残業時間も含めた勤務時間中の災害が対象であり、休憩時間や私的な行為による災害は業務災害と認められません。

一方、通勤災害の認定基準は、業務に必要な移動が原因で発生した災害、とされています。業務に必要な移動とは、「住居と就業場所の往復」「就業場所から別の就業場所への移動」「住居と就業場所の往復で、先行又は後続する住居間の移動」の3パターンがあります。

通勤は「合理的な経路・方法で行う」必要があり、経路の逸脱や中断があった場合は通勤災害と認められません。ただし、日用品の購入、外食、通院、投票といった、日常生活に必要な最低限の行動であれば通勤災害と判断されます。

労働災害のおもな原因

労働災害の原因は、「人的要因(Man)、設備的要因(Machine)、作業的要因(Media)、管理的要因(Management)」の「4M」とされています。労働災害を招く、4Mの具体的な内容は次のとおりです。

No.4Mの基本原因
1人的要因
(Man)
  1. 心理的要因:場面行動(他の事柄に気付かず、前後に見境もないまま行動する)、忘却(ど忘れ)、考え事(家族問題、借金等)、無意識行動、危険感覚のずれ、省略行為、憶測判断、ヒューマンエラー
  2. 生理的要因:疲労、睡眠不足、アルコール、疾病、加齢
  3. 職場的要因:人間関係、リーダーシップ、チームワーク、コミュニケーション など
2設備的要因
(Machine)
  1. 機械設備の設計上の欠陥
  2. 危険防護不良
  3. 人間工学的配慮不足
  4. 標準化不足
  5. 点検整備不良 など
3作業的要因
(Media)
  1. 作業情報の不適切
  2. 作業姿勢、作業動作の欠陥
  3. 作業方法の不適切
  4. 作業空間の不良
  5. 作業環境条件の不良 など
4管理的要因
(Management)
  1. 管理組織の欠陥
  2. 規程・マニュアル不備
  3. 教育訓練不足
  4. 部下に対する監督・指導不足
  5. 適正配置不十分
  6. 健康管理不足 など

出典:厚生労働省 三重労働局

4Mの要因が絡み合うことで、労働者の不安全行動や機械などの不安全状態が発生し、労働災害を引き起こします。なお、不安全行動とは、安全を阻害する行動を意図的にする行為のことで、不安全状態は事故が発生しかねない状態を指します。

不安全行動、不安全状態の具体的な類型は次のとおりです。

No.労働者の不安全行動
1防護・安全装置を無効にする
2安全措置の不履行
3不安全な状態を放置
4危険な状態を作る
5機械・装置等の指定外の使用
6運転中の機械・装置等の掃除、注油、修理、点検等
7保護具、服装の欠陥
8危険場所への接近
9その他の不安全な行為
10運転の失敗(乗物)
11誤った動作
12その他
No.機械や物の不安全状態
1物自体の欠陥
2防護措置・安全装置の欠陥
3物の置き方、作業場所の欠陥
4保護具・服装等の欠陥
5作業環境の欠陥
6部外的・自然的不安全な状態
7作業方法の欠陥
8その他

出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト

労働災害防止対策を講じるにあたり、4Mの要素を減らし、不安全行動・不安全状態を回避する取り組みが必要です。

労働災害の防止対策3選

ここでは、従業員・会社で実施すべき、労働災害防止対策を3つ紹介します。

KY活動など自主的な労災防止活動を行う

KY活動(危険予知訓練)とは、職場の危険要因を探し、想定される労働災害を先回りして防止する行動のことです。少人数でグループを組み、互いに意見を出し合いながら安全対策の目標を設定する「4ラウンド法」がKY活動の代表的な手法です。

1ラウンド目では、イラストシートや実際の現場に潜む危険な要因と、その要因が招く現象について、グループ内で意見を出し合います。

2ラウンド目では発見した危険のうち、重要度の高い危険を探して○印をつけます。印をつけたものからさらに絞り込み、◎印とアンダーラインをつけ「危険のポイント」とし、指差し唱和で確認します。

3ラウンド目では、◎印をつけた危険のポイントを解決する、具体的な対策案を出し合います。対策案は具体的、かつ実行可能な案を出しましょう。

最後の4ラウンド目では、対策案のなかから重点実施項目を絞り込みます。重点実施項目を実践するための「チーム行動目標」を設定し、指差し唱和で確認します。最後に指差し呼称する項目を設定し、指差し唱和で確認するまでが4ラウンド法の進め方です。

KY活動の実施で危険への感受性が高まるうえに、指差し呼称による意識の切り替えによるヒューマンエラーの防止効果も期待できます。また、ヒヤリ・ハットを報告・共有するヒヤリ・ハット活動、当番制による職場の安全パトロールも安全意識の向上に効果的です。

リスクアセスメントを実施する

リスクアセスメントは、業務上の危険・有害要素によって起こり得るリスクを洗い出し、リスク低減対策を講じることで労働災害を最小限に抑えるためのものです。

現場の危険性や有害性を特定し、ケガや被害の程度、発生頻度でリスクレベルを評価します。労働災害が発生する可能性が高いと判断される、許容できない問題から優先的にリスク低減対策を行うのがリスクアセスメントの流れです。

リスクアセスメントを行うことで職場のリスクが明確になる、リスク認識の共有、合理的な安全対策、危険の感受性が高まるといったメリットがあります。また、KY活動と手法が似ていますが、KY活動は労働者が実施するもの、リスクアセスメントは企業全体で実施するものという違いがあります。

メンタルヘルス対策を行う

近年はセクハラやパワハラ、いじめ、過重労働などによるストレスを原因とする労働災害が増加傾向にあります。このような状況を受け、メンタルヘルスの不調による精神疾患なども労働災害と認められるようになりました。

具体的なメンタルヘルス対策として、メンタルヘルス不調の防止、早期発見、休職した従業員に対する再発・再燃防止の復帰支援策が必要です。不調の防止と早期発見には、労働安全衛生法改正により義務化された「ストレスチェック」が効果的です。ストレスチェックの結果により、悪化を防ぐセルフケア、産業医や保健師への相談など、個人の状態に合った具体的な対策が可能になるためです。

ストレスチェックのほかに、ストレスや疲労の原因となる長時間労働の是正、再発防止対策となる休職からの職場復帰後のフォローアップも必要です。特に復帰後は職場に慣れることが重要であるため、上司や産業医との面談を実施するとよりよいでしょう。

職長再教育を受けることも、労災防止対策として有効

職長再教育とは、職長・安全衛生責任者である受講者に対する能力向上教育のことです。安全衛生教育等推進要綱により、職長、安全衛生責任者は初任から5年ごと、または機械設備等に大幅な変更があった場合に職長再教育の受講が求められます。

職長や安全衛生責任者は、労働者の安全と健康を守る役割があり、労働災害防止も重要な職務の1つです。職長再教育を受講することで、労働災害防止対策の全てを学ぶことができます。建設業、製造業の職長再教育のカリキュラムは次のとおりです。

【建設業】職長再教育のカリキュラム
科目範囲時間
職長等及び安全衛生責任者として行うべき労働災害防止に関すること建設業における労働災害発生状況
労働災害の仕組みと発生した場合の対応
作業方法の決定及び労働者の配置
作業に係る設備及び作業場所の保守管理の方法
異常時等における措置
安全施工サイクルによる安全衛生活動
職長等及び安全衛生責任者の役割
120 分
労働者に対する指導又は監督の方法に関すること労働者に対する指導、監督等の方法
効果的な指導方法
伝達力の向上
60 分
危険性又は有害性等の調査等に関すること危険性又は有害性等の調査の方法
設備、作業等の具体的な改善の方法
30 分
グループ演習以下の項目のうち1以上について実施すること
• 災害事例研究
• 危険予知活動
• 危険性又は有害性等の調査及び結果に基づき講ずる措置
130 分

出典:厚生労働省

【製造業】職長再教育のカリキュラム
科目範囲時間
職長等として行うべき労働災害防止及び労働者に対する指導又は監督の方法に関すること1:基本項目(必須)
(1)職長等の役割と職務
(2)製造業における労働災害の動向
(3)「リスク」の基本的考え方を踏まえた職長等として行うべき労働災害防止活動
(4)危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置
(5)異常時等における措置
(6)部下に対する指導力の向上(リーダーシップなど)
(7)関係法令に係る改正の動向
120分以上
2:専門項目(選択)
(1)事業場における安全衛生活動
(2)労働安全衛生マネジメントシステムの仕組み
(3)部下に対する指導力の向上(コーチング、確認会話など)
必要な時間
グループ演習以下の項目のうち1以上について実施すること。
・ 職長等の職務を行うに当たっての課題
・ 事業場における安全衛生活動(危険予知訓練など)
・ 危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置
・ 部下に対する指導力の向上(リーダーシップ、確認 会話など)
120 分以上
 合 計360分以上

出典:厚生労働省

職長再教育は労働基準協会などの講習会のほかに、オンラインの通信講座でも受講が可能です。通信講座では製造業向け、建設業向けとカリキュラムが分かれており、職種に合った職長再教育が学べます。特に製造業の職長再教育の対面講習会は数が多くないため、製造業に勤める方には通信講座が最適です。

また、受講者同士で行うグループ討議も、通信講座ではZOOMを利用します。ZOOMはスマホで受講できるうえに、スマホのカメラで顔認証も可能です。講習会に行く時間がない方、近隣で講習会を実施していない方は、通信講座を上手に活用しましょう。

労働災害は適切な対策を行うことで防止できる

労働災害は業務上で起きた「業務災害」と、通勤や業務に必要な移動による「通勤災害」に分類されます。近年はストレスなどの精神的不調による労働災害が増えたことで、メンタルヘルスに関する災害も労働災害と認められます。

4Mによる不安全行動・不安全状態が、労働災害の根本的な原因です。効果的な労働災害防止対策は、KY活動やヒヤリ・ハット活動などの労働者の対策、会社全体で実施するリスクアセスメントが効果的です。先に述べたようにメンタルヘルスを健康に保つことも、労働災害防止対策に必要です。義務化されたストレスチェックを正しく実施し、メンタルヘルスの不調の予防、早期発見、再発・再燃の防止に努めましょう。

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