介護福祉士は、高齢化が進む日本において極めて高い需要を誇る国家資格です。無資格での介護業務と比較して、手当の支給や昇進の機会が格段に増える点が特徴です。本記事では、介護の現場でステップアップを目指す方に向けて、具体的な仕事内容や平均給与、4つの受験ルート、試験対策の手順を客観的なデータとともにわかりやすく解説します。
目次
介護福祉士とはどんな資格?

介護福祉士は、1987年制定の「社会福祉士及び介護福祉士法」に規定された介護分野唯一の国家資格です。日常生活に支障がある方に対して専門的なケアを行い、介護者へ実践的な助言を提供します。
出典:社会福祉士及び介護福祉士法(昭和六十二年法律第三十号)
役割
介護福祉士の役割は、日常動作の介助にとどまりません。利用者が自立した日常生活を営むための支援を行います。また、介護チームをまとめる責任者として、新人スタッフの育成や技術指導を実施します。さらに、医師や看護師などの多職種と連携を図る中核的な役割も担います。
介護士との違い
「介護士」という名称は介護に従事する人の総称ですが、「介護福祉士」は法律で保護された名称独占の国家資格です。以下の図に違いをまとめました。


介護福祉士は国家資格のため、専門性やキャリアアップの面で強みがあります。
介護福祉士の主な仕事
介護福祉士の日常業務は、身体介助から事業所のマネジメント業務まで幅広い領域に及びます。
身体介護(食事・入浴・排泄等の直接介助)
利用者の体に直接触れて行うケア業務です。食事介助、入浴介助、トイレへの誘導や排泄介助を行います。利用者の残存機能を最大限に活用しながら介助を進めます。
生活援助(掃除・洗濯・調理等の自立支援)
利用者が自力で処理できない家事全般を支援します。居室の清掃やベッドシーツの交換、衣服の洗濯、栄養管理に基づいた調理を行います。衛生的な療養環境を整える大切な業務です。
家族に対する介護指導と精神的なケア
在宅療養を継続するご家族に向けて、負担の少ない介助技術を助言します。適切な福祉用具の選定方法も提案します。介護者の孤立を防ぐため、日々の悩みを聞く相談相手にもなります。
現場スタッフへの実務指導とマネジメント
経験の浅い介護職員に対し、正しい介助技術や安全管理の手法を指導します。ケアマネジャーが策定したケアプランに従って、チーム全員が統一された手順でケアを行えるよう管理します。
介護福祉士の資格を取得するメリット

国家資格の取得は、現場での実務面だけでなく、長期的な就労条件においても大きな利点となります。
給与水準が向上し毎月の資格手当が支給される
多くの事業所では、介護福祉士に対して月額1万円から3万円程度の資格手当を支給しています。正社員はもちろん、非常勤やパート勤務であっても時給アップや各種手当が加算されるケースが多く、厚生労働省の施策である「介護職員等処遇改善加算」でも手厚い配分の対象となるため、年収や待遇が大きく改善します。
就職や転職の選考で圧倒的に有利になる
介護現場では、人員配置基準を満たすために国家資格の保有者が常に求められています。全国の有料老人ホームや特別養護老人ホームなど、希望する就労先への就職が成立しやすくなります。
サービス提供責任者や管理職への昇進が可能
訪問介護事業所で配置が義務付けられている「サービス提供責任者」に就任できます。さらに、デイサービスの生活相談員や現場のリーダー職、施設長といった管理職候補としても評価されます。
介護の専門職として高い社会的信用を獲得
公的な国家資格を持つことで、利用者やその家族から強い安心感と信頼を獲得できます。医療関係者や理学療法士などの専門スタッフと打ち合わせを行う際も、プロフェッショナルとして対等に協議できます。
介護福祉士の年収の目安
厚生労働省の「介護従事者処遇状況等調査」の結果によると、介護福祉士を保有する職員の給与は無資格者と比べて明確に高額です。
| 【勤続年数別】介護福祉士の平均年収と給与目安 | |||
|---|---|---|---|
| 勤続年数区分 | 平均基本給(月額) | 各種手当(処遇改善・資格等) | 推定年間給与額 |
| 1〜3年目 | 185,000円〜200,000円 | 45,000円〜60,000円 | 約330万円〜360万円 |
| 4〜6年目 | 205,000円〜225,000円 | 60,000円〜75,000円 | 約370万円〜400万円 |
| 7〜9年目 | 225,000円〜245,000円 | 75,000円〜90,000円 | 約405万円〜435万円 |
| 10年以上(リーダー職) | 250,000円〜280,000円 | 90,000円〜120,000円 | 約450万円〜500万円以上 |
※厚生労働省『介護従事者処遇状況等調査』の数値をベースに、一般的な賞与・夜勤手当等を加味して算出した独自試算です。
介護福祉士を目指す4つのルート
介護福祉士国家試験の受験資格を取得するには、法令で定められた4つのルートが存在します。

実務経験ルート(現場実務3年+実務者研修修了)
社会人から介護職へ転職した人が最も多く選択するルートです。雇用形態は正社員に限られず、契約社員やパート・アルバイトとして勤務した期間も実務要件に算入できます。3年(1,095日)以上かつ実働540日以上の実務経験を積み、自宅での通信学習とスクールの教室で行われるスクーリング(面接授業)を組み合わせた450時間の実務者研修を修了することで受験できます。
養成施設ルート(指定の大学・短大・専門学校)
厚生労働省が指定する養成施設に通学し、必要な学習課程を修めて卒業するルートです。高校を卒業した学生が多く選択しており、基礎から応用まで体系的な講義と実習を学びます。現在は原則として卒業後の国家試験合格が必要です。
福祉系高校ルート(専攻科および高等学校)
福祉科を設置している高等学校や専攻科で、定められた科目を修得して卒業するルートです。最短で高校卒業のタイミングに合わせて国家試験へ挑戦することが可能です。
経済連携協定(EPA)ルート
インドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国から来日した候補者が対象です。日本の受入れ施設で研修を受けながら3年間実務に従事し、国家試験の合格を目指します。
介護福祉士国家試験について

国家試験を受験するには、定められた期日までに手続きを確実に完了させる必要があります。
試験はいつ?
筆記試験は年に1回、毎年1月下旬の日曜日に実施されます。実務経験ルートの受験者は筆記試験のみ受験します。合格発表は毎年3月下旬に行われます。
令和9年は1月31日(日)に実施され、3月23日に合格発表される予定です。
試験の具体的な内容
【0点科目による一発不合格に注意!】
総得点で60%以上の合格ラインを上回っていても、13科目群の中に1科目でも「0点」があると不合格になります。得意科目だけで稼ぐのではなく、苦手科目を作らないバランスの良い対策が必須です。
筆記試験は全125問のマークシート方式(五肢択一)で出題されます。以下の4領域・13科目群で構成されます。
- 人間と社会の理解(人間の尊厳と自立、人間関係とコミュニケーション、社会の理解)
- 介護の基本(介護の基本、コミュニケーション技術、生活支援技術、介護過程)
- こころとからだのしくみ(発達と老化の理解、認知症の理解、障害の理解、こころとからだのしくみ)
- 医療的ケア(医療的ケア)
- 総合問題(事例問題)
合格基準は総得点の約60%(難易度により補正あり)の獲得に加え、全科目群で1点以上の得点が必要です。
受験するのに必要な手数料
公益財団法人 社会福祉振興・試験センターに納付する受験手数料は20,510円です。「クレジットカード決済」または「コンビニエンスストア決済」で支払います。
※受験手数料は改定される場合があるため、最新の受験の手引をご確認ください。
申し込み方法
試験センターホームページの「インターネット受験申し込み」から手続きをします。令和9年1月の試験における申込受付期間は令和8年7月22日(水)~9月2日(水)でした。
受験の会場
筆記試験会場は、全国主要都市の大学キャンパスやイベントホールなど約35カ所に設置されます。出願時に希望する受験エリアを選択して申請します。
出典:公益財団法人社会福祉振興・試験センター「介護福祉士国家試験」
勉強時間はどれくらい必要?
実務経験者が一発合格を目指す場合、200時間から250時間の学習量が必要とされます。試験半年前から対策を開始し、平日に45分、休日に2時間の過去問演習を継続することが推奨されます。
介護福祉士国家試験は難しい?
国家試験全体の合格率は70%から80%程度で推移しており、国家資格の中では高水準の合格率を誇ります。
| 介護福祉士国家試験の合格率推移 | |||
|---|---|---|---|
| 実施回(実施年月) | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
| 第38回(2026年1月) | 78,469人 | 54,987人 | 70.1% |
| 第37回(2025年1月) | 75,387人 | 58,992人 | 78.3% |
| 第36回(2024年1月) | 74,595人 | 61,747人 | 82.8% |
| 第35回(2023年1月) | 79,151人 | 66,711人 | 84.3% |
| 第34回(2022年1月) | 83,082人 | 60,099人 | 72.3% |
出典:厚生労働省「第38回介護福祉士国家試験合格発表について」
近年の合格率は70〜80%台で推移しています(第35回・36回では80%を超えました)。これは実務経験ルートの受験生に対して「実務者研修」の事前受講が義務付けられており、受験生全体の知識水準が高まったことが理由です。
ただし、全13科目群のどれか1つでも0点があると不合格になる規定があるため、弱点科目を残さない網羅的な学習計画が合否を左右します。
介護福祉士国家試験に合格した後の資格登録
筆記試験に合格しただけでは業務を行えません。公益財団法人 社会福祉振興・試験センターに申請書を提出し、名簿へ登録されて初めて法的な効力が発生します。
準備が必要な書類
| 資格登録申請に必要な提出書類一覧 | ||
|---|---|---|
| 書類名 | 取得方法・詳細 | 提出時の留意点 |
| 登録申請書 | 合格証書に同封された専用用紙 | 氏名・住所を正確に記入し押印 |
| 貼付用紙 | 各種用紙を貼り付ける専用用紙 | 必要な用紙を貼り付けて提出 |
| 登録免許税 | 郵便局で9,000円分の収入印紙を購入 | 貼付用紙に貼付(消印は不可) |
| 登録手数料の受領証 | 窓口で3,320円を納付した証明書原本 | 振替払込受付証明書を貼付用紙へ貼付 |
| 住民票の写し | 市区町村役場で取得(本籍地記載) | 個人番号の記載なし(省略)・6カ月以内発行 |
| 確定の各種証明書 | 実務経験証明書・研修修了証の原本 | 受験時に「見込み」で提出した方のみ |
※登録免許税・登録手数料は申請時点の最新案内をご確認ください。

役所で住民票を取得する際は、必ず「本籍地記載あり・個人番号(マイナンバー)の記載を省略したもの」と窓口で伝えましょう。個人番号の記載があると書類不備で再提出になってしまいます!
登録の手順
- 合格書類の確認:3月下旬に郵送される「合格証書」および登録案内一式を受け取ります。
- 証明書類の取得:住民票を取得し、勤務先から確定版の実務経験証明書を取り寄せます。
- 費用の払い込み:郵便局窓口にて登録免許税の印紙購入と登録手数料の振込を行います。
- 申請用紙の作成:登録申請書に必要事項を漏れなく記入し、印紙と払込受領証を貼付します。
- 簡易書留で郵送:準備した全書類を試験センター登録係へ簡易書留で送付します。
- センター側の審査:書類の不備確認と国家登録名簿への記入処理が行われます(約1カ月間)。
- 登録証の受け取り:簡易書留で自宅に「介護福祉士登録証」が到着し、手続きが完了します。
出典:公益財団法人社会福祉振興・試験センター「新規登録の手続き」
資格取得後のキャリア
介護福祉士を取得することは、介護現場のスペシャリストやマネジメント層へ昇格するための強固な土台となります。

実務経験を5年以上(かつ従事日数900日以上)積むことで、ケアプランを作成する「介護支援専門員(ケアマネジャー)」の受験資格を得られます。また、より高度な判断力を有する「認定介護福祉士」や、介護事業所の「所長・施設長」へ昇進する道筋が確立されます。
特定技能1号(介護)の在留継続条件
外国人材が「特定技能1号(介護)」の資格で来日した場合、日本国内で就労を継続するためには明確な規定が定められています。
- 特定技能1号の滞在上限:特定技能1号による通算の在留期間は最長5年間と法律で定められています。
- 国家試験合格による在留資格変更:5年間の在留期間中に介護福祉士国家試験へ合格し、在留資格を「介護」へ変更する必要があります。
在留資格「介護」へ移行する利点を以下にまとめました。
- 在留期限の更新制限がなくなり、将来的な永住許可の申請が可能になります。
- 本国から配偶者や子どもを日本へ呼び寄せる「家族滞在」が認められます。
- 日本国内のあらゆる介護事業所で制限なく正社員として勤務できます。
介護福祉士の資格を取得するなら
仕事を続けながら介護福祉士の国家試験に合格するためには、限られた時間の中で要点を押さえた無駄のない学習が不可欠です。
SATの介護福祉士国家試験講座は、合格に必要なポイントを効率よく学べる教材設計が特長です。フルカラーテキストとハイビジョン講義に加え、スマホ対応のEラーニングでスキマ時間にも学習可能。質問・学習相談などのサポートも充実しており、忙しい方でも一発合格を目指しやすい講座です。ぜひこの機会に資格取得への準備をスタートさせてみてください。
まとめ
介護福祉士は、介護現場における中核的存在であり、給与面や雇用の安定性において大きな恩恵をもたらす国家資格です。近年の合格率は70~80%台で推移しており、実務者研修の受講と過去問を中心とした約200時間の学習を積み重ねることで、初学者であっても確実に一発合格が狙えます。将来的なキャリアアップや収入増を実現するためにも、計画的に試験準備を進めて資格取得を達成してください。





