低圧電気取扱業務特別教育は、電気を原因とした労働災害を防止するための特別教育です。電気工事士の資格取得者で、電気工事関係の業務を担っている場合も受講する必要があります。
低圧電気取扱業務特別教育に関する講習会は、各地域で実施していて学科と実技で構成されています。内容は電気に関する基礎知識から始まり、電気災害を防ぎ被害を受けないための安全教育といったカリキュラムです。
しかし、電気工事士の資格取得を目指している人の中には、概要や電気工事士との関係について疑問点が多いかと思います。
この記事では、低圧電気取扱業務特別教育の概要やカリキュラム、電気工事士との関係までわかりやすくお伝えします。
目次
低圧電気取扱業務特別教育とは
まずは、低圧電気取扱業務特別教育の概要や受講対象者、カリキュラムといった基本情報についてわかりやすく紹介します。
低圧電気取扱業務特別教育の概要
低圧電気取扱業務特別教育は、低圧電力(直流750V以下、交流600V以下)における電気災害・労働災害を防ぐための特別講習です。資格が取得できるわけではありませんので、間違えないようにしましょう。
また、労働安全衛生法によると、事業者は労働者の感電事故などを防ぐために、労働者へ向けて安全衛生教育を行うことを義務付けています。
対象者は、直流750V以下、交流600V以下の電圧を取り扱っている労働者です。また、電気工事士を取得している人も対象となっています。
講習会は学科と実技に分かれている
低圧電気取扱業務特別教育の受講資格はありません。そして、カリキュラムは学科と実技に分かれていて、学科7時間、実技7時間以上と定められています。
実技の受講時間が7時間以上となっている理由は、法律で最低でも7時間とされているためです。そのため、7時間程度で修了するケースもあれば、8時間といったケースも考えられます。
受講日は、低圧電気取扱業務特別教育以外の仕事・私用を入れないようにするのが大切です。
次の項目で細かいカリキュラムを紹介します。
電気工事士の資格を持っていても低圧電気取扱業務特別教育を受ける必要はある?
続いては、電気工事士の資格を持っていても、低圧電気取扱業務特別教育を受ける必要があるのか、対象となる業務、カリキュラムについて解説します。
電気工事士取得者も受講の必要アリ!
低圧電気取扱業務特別教育は、電気工事士の資格を持っていたとしても受講する必要があります。

簡単に説明すると低圧電気取扱業務特別教育は、電気系の資格や国家資格の取得状況に限らず、労働者の安全を守るために行われているためです。
また、電気工事士の資格を管理しているのは経済産業省で、低圧電気取扱業務特別教育の管轄は厚生労働省と異なるうえに、それぞれの目的も異なります。
経済産業省は、電気工事に関する事故防止といった観点も含めて電気工事士の資格を管理しています。一方、厚生労働省は電気工事士の資格取得や電気工事にとらわれず、労働者全体の安全教育に重きを置いています。

受講対象者は、所持資格は関係なく充電電路の修理業務や、充電部分が露出している開閉器の操作で、さらに感電の恐れがある業務を担当している方です。
転職によって異なる電気工事会社に勤めると改めて受講する必要もある
電気工事士として働いていると、さまざまな理由から転職するケースもあります。
例えば、Aという電気工事会社から、Bという電気工事会社へ転職した場合、低圧電気取扱業務特別教育を改めて受講する必要性があります。
各事業者は労働者に対して低圧電気取扱業務特別教育の実施(実施団体へ受講させる)をしなければいけません。
つまり、転職先では低圧電気取扱業務特別教育を受講していないので、改めて講習会へ参加するという仕組みです。
カリキュラムは複数の科目に分かれる
低圧電気取扱業務特別教育の受講対象者となった場合は、カリキュラムについても事前に確認するのが大切です。
講習会は1日もしくは2日で完了し、学科と実技に分かれています。また、学科は合計7時間で、以下の科目を用意しています。
No | 講習科目 | 時間 |
---|---|---|
1 | 低圧の電気に関する基礎知識 | 1時間 |
2 | 低圧の電気設備に関する基礎知識 | 2時間 |
3 | 低圧用の安全作業に関する基礎知識 | 1時間 |
4 | 低圧の活線作業及び活線近接作業の方法 | 2時間 |
5 | 関係法令 | 1時間 |
参考:労働安全衛生管理協会
主に低圧電気や工事に関する基礎知識と、安全衛生管理に関する基礎を一通り学ぶ内容です。実技は、7時間以上と定められていて、学科・実技受講後に簡単な確認テストを実施します。
受講予定のある人は、まず実施会場を確認しましょう。受講料金は10,000円前後で実施団体によって異なります。
電気工事士の資格も取得して就職に活かそう!
低圧電気取扱業務特別教育の受講は、電気工事士にとって必要な講習です。しかし、電気工事関係の会社へ転職・就職する場合は、電気工事士の資格取得を先に考えましょう。
電気工事関係に必須な資格
低圧電気取扱業務特別教育は、電気工事における労働災害・事故を防ぐために必要な講習です。しかし、受講したからといって、すぐに電気工事関係へ就職・転職できるわけではありません。
電気工事関係の仕事に就きたい場合は、まず電気工事士の資格取得をするのが大切です。なぜなら、電気工事を行うためには、国家資格の第一種電気工事士・第二種電気工事士も必須だからです。
ちなみに第一種電気工事士・第二種電気工事士どちらも受験資格はありません。ただし、第一種電気工事士は、第二種電気工事士取得者および業務経験者でなければ難しい試験内容です。
まずは未経験者も資格取得を目指せる第二種電気工事士の試験対策をし、合格を目指してみましょう。第二種電気工事士は、30~100時間程度の勉強時間で、合格を目指すことが出来ます。
電気工事士を活かせる仕事
電気工事士の資格を取得できると、以下のような仕事も対応可能です。
No | 仕事 |
---|---|
1 | 住宅やビルの配線工事 |
2 | 屋外配線工事 |
3 | エアコンなど電気設備の設置、取り付け工事 |
4 | 変電所や発電所での保守管理、設置、修理、配線工事 |
5 | 電気機器の配線や器具取付 |
6 | 建物内のコンセント、照明機器、設備の据え付け |
7 | 鉄道電気工事 |
第二種電気工事士の上位資格第一種電気工事士を取得すると、高圧設備の電気工事も可能となるので、後々取得を目指してみることもおすすめです。
低圧電気取扱業務特別教育は電気工事において必須の講習
低圧電気取扱業務特別教育は、特定の工事業務を行う全ての労働者に受講を義務付けています。そして、電気工事士の資格を持っていても、受講対象者であれば講習会を受講しなければいけません。
低圧電気取扱業務特別教育の目的は、労働者の安全・健康を守るためで、学科と実技に分かれています。学科7時間、実技7時間以上と長いですが、しっかり学ぶことが大切です。
これから電気工事士の資格取得、電気工事業界への転職を目指す人は低圧電気取扱業務特別教育の概要や受講義務について覚えておきましょう。