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アイデアを事業につなぐプロセス、ステージゲート法とは?

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先行きが不透明で予測が難しい「VUCA」と呼ばれる現代は、環境変化にともない顧客ニーズが変化したり、販売にこぎつけたものの売れないといったことが、起こっています。製造業においても、国内人口の減少などの環境変化から主力事業が縮小するリスクを抱えています。このような時代において、売れる商品をリスクなく事業化することが求められています。本記事では、企画~事業化プロセス押して代表的な手法であるステージゲート法の概要や必要性を紹介します。

ステージゲート法とは

ステージゲート法とは製造業の研究における第一人者であるロバート・G・クーパーにより、体系化された新規事業の開発プロセスです。

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米国の製造業の6割近く、国内においても大手企業を中心に採用されています。

ステージと呼ばれる開発フェーズ:6つ、ゲートと呼ばれる審査:5つで構成されます。アイデア創出や初期調査といった各フェーズで次フェーズへ移行するか否かをゲートで判断し、段階的に進めることが特徴です。

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様々なアイデアの中から段階的にふるいにかけ、開発を行うことで、無駄な投資や誤った事業化といったリスクを予防することができます。

モノづくりを伴うことが大半の製造業においては、試作段階でも型をおこしたり、生産ラインを整備したりと大きな投資と長い時間を必要とするため、いくつもの事業アイデアを並行して開発することは不可能です。

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リソースの無駄を極力なくしつつ、数多くのアイデアから質の高い事業テーマを選定し、開発、事業化するためには、ステージゲート法を活用することが推奨されます。

ここからは、ステージゲート法における各ステージとゲートの概要を紹介します。

アイデア創出

アイデア創出は文字通り事業や次世代製品のアイデアを数多く抽出するステージです。

アイデアは日ごろ行っている研究開発活動の技術シーズをもとに出すものもあれば、VOC(Voice Of Customer:顧客の声)といった市場ニーズをもとに出すものもあります。いずれの場合においても、多数のアイデアを出し、見込みあるアイデアを選定します。
この選定がアイデア創出におけるゲートの役割になります。

数多くのアイデアといっても単に思いつきのアイデアではいけません。詳しくは講義で解説しますが、ここで出したいアイデアには3つの基準があります。

戦略との適合性

戦略との適合性というと少し格式ばったイメージを持つかもしれませんが、要はみなさんが勤務する会社の進みたい方向と合っているかです。
会社のホームページや中期経営計画などでうたわれていることが多いので、一度は目を通したことがあるはずです。
昨今であれば、環境経営やSDGsといった文言が入っているのではないでしょうか。例えば生産プロセスにおいてCO2排出量が今よりも多くなりそうな製品は、アイデアとして適切とはいえません。

このように会社の戦略、方針とマッチするか否かで判断します。

市場の魅力度

先にも記したようにVOCをもとに市場から求められるアイデアか否かで判断します。VOC以外にも、マーケティング分析で一般的に使われるフレームワークを活用することで、未来予測や市場ニーズを予測し、ニーズとマッチしそうなアイデアを選定します。

技術の実現性

市場ニーズ、VOCに沿ったアイデアであっても、実現できなければ架空の産物になります。みなさんの会社にある技術や世の中に存在する技術を使うことで、アイデアを実現することができそうか否かで判断します。

アイデア創出ステージでは、数多くのアイデアを創出し、ノイズを減らすことが目的ですので、詳細な調査は行いません。

初期調査

ここでは、市場ニーズの調査を行い、事業・製品コンセプトをまとめていきます。アイデア創出ステップで十分に取得できなかったVOCをはじめ、マーケティング分析で一般的に使われるフレームワークを活用し、十分に深掘りします。


また机上での市場規模の算出も行います。既存の製品と形態やターゲット市場が異なる場合は、算出が難しいですが、仮説を繰り返すことで導き出します。算出方法は、講義でも解説していきます。

市場ニーズや事業規模の算出と並行して、ご自身の会社が保有する資産を棚卸します。この目的は、ご自身の会社が事業を立ち上げ継続できるか、実現性を検証するためです。なかでも技術者・開発者であるみなさんが主体的に行うものが、技術資産の棚卸しです。

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保有する技術資産として、特許や論文、ライセンス提供している技術や実際に製品に搭載されている技術があります。この中から、競合に負けない、強みとなる技術を選定する活動を行います。この活動は、ひとつの事業プロジェクトに限定されることなく活用ができますので、全社横断で実施するとよいでしょう。

また、現時点で保有していない基礎技術があれば、初期調査ステージで要素開発を行うこととなります。

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以上のように初期調査ステージでは、市場ニーズの調査と技術資産の棚卸し、および要素開発により、市場規模が期待値レベルとなりえそうか、事業化の可能性が見込めるかを判断します。

ビジネスプラン策定

このステージでは、プロトタイプを制作しPoC(Proof of Concept)による市場性の見極めや、事業を成立させる上で必要となる技術を複数テーマ開発し、事業計画の概要を策定します。

実証期間にもよりますが、数か月から一年程度かける場合があります。注意したいのが、ビジネスプラン策定のステージの目的はビジネス計画を立てることそのものに限らず、次のステージとなる大きな開発投資を判断することです。
投資規模は事業内容により変化するため一概に言えませんが、製造業の場合では数百万円~数億円が一般的と言われています。
この投資をするべきかやめるべきかを判断するため、ビジネスプラン策定ステージでは、市場性と実現性、ビジネスモデルといった3つの観点でエビデンスとなるデータを整理します。

市場性

市場性はニーズを有することが証明できればよいのですが、本格的な開発前においては卵が先か鶏が先か・・・といった不毛な議論を呼ぶケースがあります。詳細は講義の中で解説しますが、具体的な顧客リストを作成できるかが判断材料となります。

実現性

実現性は技術開発にて知的財産の確保、および実験・試作での実証、デモを行うことで証明します。

ビジネスモデル

ビジネスモデルは、ヒトモノカネ情報の流れを図表などイラストで見える化したり、詳細な事業規模を調査したり、具体的なマーケティング実行計画を作成したりといった活動を通して、事業計画書の初期版を作成します。

さらには次のステージである開発を速やかに進めるために、開発計画書の作成もこのステージのタスクとして実施するとよいでしょう。

開発・テスト

開発ステージでは、プロトタイプといった制限付きではなく市場に出せるレベルの機能と性能を有する製品を制作します。


事業化を想定した生産工程の計画や開発、サプライチェーンの開発を進めます。
このステージでは、技術開発や販売代理店、調達部門による供給メーカーの審査など外部企業との協業を円滑に進めるべく、アライアンス契約を締結させることはもちろん、法規制への対応が求められます。
またテストステージへ速やかに移行するため、製品を使った運用テストや社内やグループ企業で推進します。

次にテストステージで、製品を使った社外テスト、フィールドテストを実施します。

ビジネスモデル策定や開発ステージで実施したPoCではなく、フィールドテストを行う目的は、使用が想定される環境下において問題なく機能・性能を継続的に発揮できるかを検証するためです。また、製品を計画通り生産できるかを検証する生産工程のトライアル運用の実施、見込み客への販売オペレーションを確認するプレ販売を開始するステージでもあります。
最後はテストステージでの結果を製品に反映し、事業化に必要となる事業計画書といった書類一式を準備した上で、事業化する・しないのゲート判断を行います。

市場投入

最後は市場投入のステージです。

このステージでは文字通り、晴れて事業の実行フェーズへ移行し、量産及び販売活動が開始されます。事業計画通り売り上げやシェアが獲得できているかを定期的に確認し、未達であればマーケティング・営業活動を見直します。
開発部門においては、顧客からのフィードバックを受け、次の商品企画や技術開発を開始します。

ステージゲート法についてもっと詳しく知るためには

ここまで記した通り、ステージゲート法は製造業といった開発期間が長期で、投資規模が大きな製品をゼロベースで立ち上げるために有効なプロセスといえます。
失われた30年を経て、製造業が再び活力を取り戻すためには、新製品の事業化は避けて通れません。
SATの「研究開発テーマ設定と進め方」講座では、ステージゲート法について詳しく解説しています。
技術者・開発者のみなさんは、「ヒット製品を生み出した!」という成功体験を得るために、そのプロセスであるステージゲート法を学んでほしいと思います。

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