※本記事の条文番号は、2027年1月1日施行の改正後の規定に基づきます。
2027年1月1日から労働安全衛生法一人親方等の業務上の災害について、労働基準監督署への報告制度が始まります。
自社の従業員だけでなく、現場で働く一人親方や、一定規模以下の会社で自ら作業する社長・役員などの事故も、条件を満たすと報告対象になります。
たとえば、現場で一人親方がけがをしたら、自社が報告するのでしょうか。
この記事では、どのような事故が対象か、誰が報告するのか、施行前に何を準備するかを確認していきます。
この記事の要点
- 対象となるのは、労働者と同じ場所での業務による死亡、または4日以上の休業です。
- 報告する人は、事故に遭った人の立場と、仕事の依頼関係・現場での作業状況によって決まります。
- 施行前に、現場の連絡先と労働基準監督署への報告担当者を決めておきましょう。
目次
報告対象となる事故の条件
まずは、報告が必要になる事故の条件から確認しましょう。
一人親方等の事故は、原則として次の3つをすべて満たす場合に報告対象になります(労働安全衛生規則第98条の2第1項)。
ただし、後述する脳・心臓疾患等による死亡・休業には別の扱いがあります。
-
- 労働者と同じ場所で仕事をしていること
- 業務が原因のけがや病気であること
- 死亡、または4日以上の休業となったこと
生徒「労働者と同じ場所」とは、同じ敷地内ということですか?
先生同じ現場や敷地にいるか、だけではありません。その場所の危険や有害な要因が、労働者と一人親方等の双方に共通して及ぶおそれがあるかも確認する必要があります。
報告義務の対象にならない事故
一方、次のような場合は、今回の制度による報告義務の対象になりません。
- 休業が4日未満の事故
- 労働者と同じ場所に当たらない場所で起きた事故
- 業務の過重な負荷による脳・心臓疾患による死亡・休業
- 業務の強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺、またはその精神障害による休業
上記の脳・心臓疾患や精神障害による死亡・休業については、事故に遭った一人親方等の事業者や中小規模事業者が、労働基準監督署に任意で報告できます(労働安全衛生規則第98条の5、第98条の6第2項)。
また、休業4日未満の事故も、労働基準監督署への情報提供が可能です。
事故に遭った人の立場で変わる報告ルール
生徒では、対象となる事故が起きたとき、誰が報告するのでしょうか。
先生必ずしも、元請会社や直接仕事を依頼した会社が報告するというわけではないのがポイント。まず、事故に遭った人が次のどちらに当たるかを確認しましょう。
一人親方など、「労働者を雇っていない」事業者の場合
- 事故に遭った人への仕事の注文に関わり、その場所で仕事を自ら行っている注文者が報告します。これを「特定注文者」といいます。
注文者が複数いる場合は、請負関係をたどって事故に遭った人に最も近い段階の注文者が報告します。 - 該当する注文者がいなければ、事故が起きた場所を管理する事業者が、次の条件を満たす場合に報告します。これを「災害発生場所管理事業者等」といいます。
- 自社の労働者、または自社の事業に従事する派遣労働者が、その場所で作業している
- 事故に遭った人の作業が、その管理場所で事業者自身が行う仕事に関係している
| 直接仕事を依頼した会社や元請会社、場所を貸している会社が、必ず報告するわけではありません。注文者・場所の管理者のいずれも条件を満たさない場合は、今回の規定による報告義務者がいない場合もあります。 |
「労働者を雇う」一定規模以下の事業者の場合
現場で作業する社長や役員が事故に遭った場合は、その人が所属する会社が報告します。
労働者を雇っている個人事業主本人が事故に遭った場合は、その個人事業主が報告します。
自社が「一定規模以下」に当たるかは、常時使用する労働者の数で確認できます。次の業種別の基準と照らし合わせてみてください。
| 主な業種 | 労働者数 |
|---|---|
| 建設業・製造業など、下記以外の業種 | 300人以下 |
| 卸売業・サービス業 | 100人以下 |
| 金融業・保険業・不動産業・小売業 | 50人以下 |
具体例
たとえば、元請のA社がB社に工事を依頼し、B社が労働者を雇っていない一人親方のCさんに仕事を依頼したとします。
その場合、Cさんが労働者と同じ場所で、請け負った仕事の作業中にけがをし、4日以上休業したら、誰が報告するのでしょうか。
ポイントは、A社・B社がその場所で当該仕事を自ら行っているかどうかです。作業状況ごとの報告者を確認しましょう。
| 現場での作業状況 | 報告する事業者 |
|---|---|
| A社・B社の両方が、Cさんと同じ場所で仕事をしている | B社 |
| B社はその場所で仕事を行っておらず、A社はCさんと同じ場所で仕事をしている | A社 |
| A社・B社もCさんと同じ場所で仕事をしていないが、その場所の管理者が、Cさんと同じ場所で働いている | その場所の管理者 |
| A社・B社・場所の管理者の誰も、Cさんと同じ場所で仕事をしていない | 今回の規定による報告義務者なし |
報告のタイミング・提出先・方法
報告は「遅滞なく」行う
注文者や場所の管理者は、対象となる事故を把握したら、遅滞なく報告する必要があります。正当な理由なく手続きを先延ばしにしないようにしましょう。
また、中小規模事業者による自社の社長・役員等の事故報告も、遅滞なく行う決まりになっています。
※事故等に遭った一人親方等にも、特定注文者または災害発生場所管理事業者等へ遅滞なく報告する義務がありますが、死亡・意識不明・重篤な負傷などで伝えられない場合は免除されます(労働安全衛生規則第98条の3第1項)。
生徒本人から連絡が来るまで、報告を待ってもよいですか?
先生本人からの連絡を待っていればよい、というわけではありません。
注文者や場所の管理者が事故を目撃したり、救助・救急搬送の事実を知ったりした場合も、事故を把握したことに含まれます。本人から連絡がなくても、別の方法で事故を知っていれば、報告が必要です。
一方、その事業者の責任によらない事情で、事故の発生を業務上知り得なかった場合まで、報告義務を課す趣旨ではありません。
提出先は、報告の区分に応じて確認する
注文者や場所の管理者が一人親方等の事故を報告する場合は、事故が起きた場所を管轄する労働基準監督署に提出します。
中小規模事業者による自社の社長・役員等の報告は、労働安全衛生規則第98条の6に定める所轄労働基準監督署に行います。提出前に、自社の事業場と報告内容に応じた提出先を確認してください。
電子申請が原則
報告は電子申請が原則です。ただし、経過措置として、当分の間は書面での報告も認められています。
提出前に、厚生労働省の最新案内で、申請方法や書面報告の留意事項を確認してください。
報告する内容
報告する事業者の情報、事故に遭った人の情報、事故が起きた日時・場所・状況などを報告します。傷病名、休業見込期間、事故の原因や状況の略図なども必要です。これらの情報を誰が集めるのかも、あらかじめ決めておきましょう。
一人親方など、労働者を雇っていない事業者にも、対象となる事故について、その時点で把握している内容を報告先の事業者へ遅滞なく伝える義務があります。ただし、死亡・意識不明など、報告が困難な場合は例外です。
施行前に決めておくこと
事故の連絡が入ったとき、現場では誰に伝え、社内では誰が報告を進めるでしょうか。
現場から担当者への連絡が遅れると、労働基準監督署への報告も遅れてしまいます。自社の連絡体制を思い浮かべながら、次の5項目を確認してみてください。
- 自社が報告者になり得る現場を確認する
仕事の依頼関係、自社の作業状況、場所の管理状況を確認します。 - 社内の連絡先と報告担当者を決める
現場から安全担当者等への連絡方法と、労働基準監督署への報告担当者を決めます。 - 一人親方等にも、連絡先と手順を伝える
自社が管理する場所では、連絡先や対応手順の掲示も検討します。 - 自社が報告者でない場合の連絡方法も確認する
一人親方等から、報告先の事業者へ連絡が届くよう、必要な協力を行える体制にします。 - 作業する人と依頼関係を確認できる一覧を用意する
一人親方や社長・役員等の立場、担当業務、依頼関係、同じ場所で働く労働者の有無を整理します。
※上記は実務上の準備事項です。5項目すべてが法定義務として定められているわけではありません。
まとめ|自社の役割と連絡体制を確認する
2027年1月からは、一人親方等が死亡した場合や、4日以上休業した場合も、一定の条件を満たせば労働基準監督署への報告が必要になります。報告する事業者は、事故に遭った人の立場、仕事の依頼関係、現場での作業状況によって異なります。
まずは、自社が報告する可能性のある現場を確認してみてください。そのうえで、事故が起きたときの連絡先と報告担当者を、施行前に決めておきましょう。
また、事故後の対応に加えて、日頃の事故防止に向けた備えも確認しましょう。現場で行う作業に応じて、必要な安全衛生教育・特別教育を受講できているか、受講状況を整理しておくことも準備の一つです。
未受講の教育や、新しい作業に向けて必要になる教育があれば、受講の予定も立てておきましょう。現場の予定に合わせて学習を進めたい方には、オンライン講座も選択肢になります。

