建築施工管理技士とは簡単にいうと、建築現場での監督を行えるようになる国家資格です。工事の工程表を作成したり、品質を管理したりと重要な役割を果たします。
この記事では建築施工管理技士を取得するメリットや実際の仕事内容、受験概要について説明します。
目次
建築施工管理技士とは?
そもそも建築施工管理技士とは、建設業法で定められた「施工管理技術検定」の1級または2級に合格した者のことを指します。
具体的にいうと、建築施工管理技士とは、建築現場での監督を行う人の一人です。
一般的に現場監督か設計事務所で仕事をしている方が取得するケースが多い傾向です。
建築現場では各専門工事業者の方がたくさん出入りしていますが、専門業者の方はここの仕事に特化しており、他の専門工事に関しては、十分な知識を有しているわけではありません。
でもそれではスムーズに工事を進行することが難しいので、各専門工事業者に指示を出し、建築現場全体の工程を管理する「建築施工管理技士」が 、建築現場のまとめ役で必要とされています。
中には、知識向上のために職人さんが建築施工管理技士を取得することもあります。
建築のエキスパートになるために必要な資格ということです。
建築施工管理技士を取得するメリット
「建築施工管理技士」がないと建設業の仕事に就けないということはありませんが、資格取得するとさまざまなメリットがあります。
知識を体系的に得られる
無資格でも建設業に就くことは可能ですが、部分的な知識では現場の管理はできません。
基本的に無資格の方は部分的・特化した知識しかないものとみなされ、現場全体の知識のある有資格の方の部下として現場作業をします。
体系的な知識を学ぶことで一つ一つの作業のつながりが理解でき、「なぜこんな鉄筋が必要なのか」などの「なぜ」を解決できます。
現場所長になれる
建築施工管理技士を保有していると現場監督として活躍できます。2級は一般的な住宅が対象ですが、1級であればあらゆる建築現場で指揮を取れます。
建築に携わるのであれば、街のシンボルとなるような建物を建てたくなりますし、所長として活躍したいと意思のある方は必ず取得するべきです。
信頼感が得られる
社外の建築関係の方と打ち合わせをする際に、無資格の方と有資格の方とどちらに建物を依頼したいかと問われると、当然有資格の方でしょう。
資格の有無は、仕事を発注してもらう際にも非常に大切な要素なのです。
建築施工管理技士の仕事内容はQCDSEが重要!
建築成功管理技士の仕事は、以下の5つが重要視されます。
- Quality(品質)
- Cost(原価)
- Delivery(工程、工期)
- Safety(安全)
- Environment(環境)
これら5つの項目についてひとつずつ詳しく説明していきます。建築施工管理技士は工事現場の監督業務が主な仕事ですが、なぜ5つが重要視されるのでしょうか?
1.Quality(品質)の管理
建築施工管理技士の仕事は、「品質管理」が重要視されます。
品質管理とは、建設物の品質や安全面を規定に満たすために、「設計図通りに仕事が行われているか」を確認する業務です。
たとえば、見えないところで手を抜いてしまえば、建物自体の安全性はもちろんのこと、建設会社の信用もがた落ちです。
そのため、見えないところまで手を抜かないように監督するのが、建設施工管理技士の責任なのです。
具体的には、基礎工事などの写真を撮り、報告書を作成することなどがあります。
2. Cost(原価)の管理
建築物を建てて利益を出すためには、「施工計画」が大切です。
建築物を造るにはたくさんの職人の力が必要ですが、工期が延びるほど職人達の人件費が嵩んでいきます。ですから、建築施工管理技士は、工期通りに工事が進むように、施工管理もしなければなりません。
建築材料も同様です。余らないように足りなくならないように、ベストな量を発注することが求められます。これらは、計算もしますが、長年の経験も大切になってきます。
3. Delivery(工程、工期)の管理
「工程管理」とは、建設物が工事期間内に工程通りの作業で完成するように現場を監督することです。
建築現場では、予想外のことが起こることは珍しくありません。そのようなことを見越して施工管理をすることが求められます。
また、工事をゆっくりしすぎない、逆に早くしすぎないことも大切です。工期が間に合わないと職人達が焦ると事故の危険性も高まるでしょう。
そうならないように、建築施工管理技士の力量が問われます。
4. Safety(安全)の管理
建築現場は危険と隣り合わせです。少し気を抜けば、大事故が発生する危険もあります。また、事故の規模が大きくなると現場だけでなく、周囲の建物や人にも迷惑をかけます。
そのため、「安全管理」も大切な仕事です。工期に余裕を持たせる、安全管理を徹底するなど、複数の方法で現場の安全を保守することが求められます。
また、現場ごとに安全管理の方法も変えなければなりません。そのため、安全管理者との連携も重要です。
5. Environment(環境)への対策
環境とは、自然環境・周辺環境・職場環境の3つです。例えば、一日トラックが排ガスをまき散らして工事現場に出入りすれば、周辺環境は悪化します。
環境を守る為に、トラックの搬入時間をまとめてするなどの対処が必要です。また、地盤や土壌、空気汚染をしないように工事内容を考えることも仕事の一環です。
職場環境とは従業員が気持ちよく働ける環境を維持することで、建築施工管理技士は職場のすみずみまで目を配る必要があります。
1級建築施工管理技士と2級建築施工管理技士の違いは?
2級建築施工管理技士と1級建築施工管理技士では、仕事内容に大きな違いはありませんが、扱うことのできる建物規模に制限があります。
1級建築施工管理技士は大規模な建設現場にも携われる
1級建築施工管理技士は監理技術者になれるので、大規模な建設現場にも携われるチャンスがアップします。
そして、大規模な建設現場の監理技術者になれば、それだけ大きな実績として自分の実力をアピールできます。これは、さらに条件の良い会社に転職したり独立開業したりするときに武器になることでしょう。
しかし、大規模な建設現場はそれだけ管理も大変です。ほかの施工管理技士とも協力して、QCDSEを実行していくことが求められます。
したがって、1級建築施工技士はある程度実務経験や監督経験がある方しか受験資格を得られません。
2級建築施工管理技士は主任技術者のみ
2級施工管理技士は、1級とは異なり主任技術者しか専任を受けることはできません。しかし、その分短い実務経験で受験資格を得られます。
最短で、大学の指定学科を卒業して1年の実務経験があれば大丈夫です。つまり、20代前半で資格を取得することも十分にあり得ます。
1級施工管理技士として経験を積みたい場合は、できるだけ早く2級の資格を得ておくに越したことはありません。
2級を取得し、監督業務の実務経験を積めば20代のうちに1級を取得することもできます。
1級よりも難易度がやや低いので、ぜひ積極的に挑戦してみましょう。
1級建築施工管理技士と2級建築施工管理技士の受験概要は?
ここまで1級と2級の違いを説明してきましたが、それぞれの受験概要を詳しく見てみましょう。
1級建築施工管理技士の受験資格
1級建築施工管理技士の受験には、指定学科を受講した大学を卒業した後、3年の実務経験を積むことが必須条件です。
最終学歴が高等学校の方は、10年の実務経験で受験資格を得られます。
試験は第一次検定と第二次検定に分かれていて、第一次検定はマークシート形式の問題で、第一次検定の合格者のみ、第二次検定を受験することが可能です。
また、2021年度の4月より施工管理技士全般の受験資格が緩和されました。2級の第二次検定合格者が1級の第一次検定を受験する場合に限って受験資格が不要です。
第二次検定を受験する際には2級の第二次検定合格後5年以上の実務経験が必要ですが、2級の第二次検定の翌年から1級の第一次検定は受験できます。
また、第一次検定の合格者には新規資格である「技士補」が付与されます。技士補が付与されると第一次検定が免除されて第二次検定を何度でも受験できるとのことです。
技士補になると監理技術者の配置義務が緩和されるといったメリットもあるため、建築施工管理技士を目指す方にとっては、大きなチャンスといえるでしょう。
試験は年に一回
1級建築施工管理技士の試験は年に一回行われます。
第一次検定は6月に行われ、7月に合格発表があります。第二次検定は10月に行われ、翌年1月に合格発表があります。
受験方法と費用
新規受験者は願書を手に入れることから始まります。ネット申し込みができるのは再受験者のみとなっています。
願書は公式サイトや指定の窓口から購入することができるので、早めに入手しましょう。
また、大学の卒業証明書が必要になるのでこちらもお早めに取り寄せてください。
受験費用に関しては、第一次検定も第二次検定もそれぞれ10,800円必要です。
1級建築施工管理技士の試験内容
第一次検定は、建築学(環境工学、各種構造、構造力学、施工共通、躯体工事、建築材料、仕上げ工事)、施工管理法、法規があります。
午前の部2時間30分、午後の部2時間の試験です。第一次検定は全て四肢択一形式の出題です。第二次検定は実務経験における建築全般の応用力が求められる記述式の試験です。
1級建築施工管理技士の難易度
1級建築施工管理技士の2022度の合格率は、第一次検定は46.8%、第二次検定は45.2%です。
1級は受験資格である実務経験も長く試験範囲も広いので、2級から挑戦する方法もあります。
2級建築施工管理技士の資格試験の詳細
1級建築施工管理技士と同じく、2級建築施工管理技士は誰でも受けられる試験ではありません。2級建築施工管理技士の受験には、指定学科を受講した大学を卒業した後、1年の実務経験を積むことが必須条件です。
最終学歴が高等学校の方は、3年の実務経験で受験資格を得ることができます。ちなみに、第一次検定のみの受験であれば、満17歳以上であることが受験資格です。
第二次検定を受験する場合に限って受験資格が必要なので、一度、公式サイトの情報を確認しておきましょう。
試験は前期と後期の年に2回
2級の場合は、年に2回行われます。前期試験日は6月に行われ、7月に合格発表があります。後期試験日は11月に行われ、翌年1月に合格発表があります。
受験方法と費用
1級建築施工管理技士と同様に、新規受験者は願書を取り寄せましょう。ネット申し込みができるのは再受験者のみです。
受験費用は第一次検定のみ、また第二次検定のみだとそれぞれ5,400円です。両方の場合は10,800円必要になります。
2級建築施工管理技士の試験内容
2級建築施工管理技士の資格試験は「建築」「躯体」「仕上げ」の3つに分かれており、いずれか1つの第一次検定・第二次検定を受けます。
合格すれば2級建築施工管理技士として合格種別に該当する工事ができます。
建築
建築の資格を有していれば大工工事、内装工事、電気工事を含む専門工事を一式に請け負うことが可能です。
躯体
躯体とは建物の基礎に当たる部分のことで構造部分の工事を請け負うことができる資格です。鉄筋・型枠・コンクリート・鳶工事などが施工可能です。
仕上げ
構造部以外の内装工事や外装工事などが主です。
内装工事を専門とするリフォーム会社に勤めている方は必須の資格です。
2級建築施工管理技士の難易度
2級建築施工管理技士の2022年度の合格率は、第一次検定が42.3%、第二次検定が53.1%となっています。
まとめ
建築施工管理技士を取得するどんなメリットがある?
建築施工管理技士の資格を取得すれば、監理技術者や主任技術者に専任を受けることができます。
どちらも一定以上の工事現場には専任が必要な役目です。取得すれば出世や給与アップのチャンスが上がります。また、転職の際の武器にもなります。
建築施工管理技士の仕事内容は?
施工管理技士の仕事内容は、施工管理です。
より細かく分けると、Quality(品質)、Cost(原価)、Delivery(工程、工期)、Safety(安全)、Environment(環境)の5つが重要視されます。
工事が予定通り、かつ予算内に収まるかどうかは施工管理技士の采配にかかっているといえます。
1級建築施工管理技士と2級建築施工管理技士の違いとは?
1級施工管理技士と2級施工管理技士の違いは、監理技術者になれるかどうかです。
主任技術者は1級、2級どちらでもなることができますが、監理技術者は1級しか専任が受けられません。
つまり。1級の方がより大きな現場を任されることが可能です。そのため、1級の方が給与が高めです。
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